■ モトクロッサー
07年を最後に生産中止になってしまったCR85ですが、ここに保存されようとしている1台があります。
05モデルを私も所有していましたので、チャンバーとサイレンサー、アルミサブフレームなど作っていました。MFJ公認レースではサブフレームの純正以外の使用を禁じていますので、趣味的使い方が目的です。中古で入手したサブフレームが歪んでいたらしくシートが取り付かなくなっていたのを修正に持ってこられた車両です。
サブフレームの歴史は83年モデルCRシリーズ125、250が最初です。それまではシートレールがメインフレームに溶接されていましたから、クリーナーBOXの脱着性が悪かったり、シートレールが大きく曲がったときは直し辛かったでしょう。
アルミサブフレームを初めて作って一般向けに販売したのはトライアラーRTL用で、川越街道沿いのホンダショップ和光で扱っていました。
製造はドリーム・トキで、CR用も作っていて神戸のワールド零パワー(杉尾良文さんの店)でも扱っていました。
それ以外ではアルミサブフレームは成りを潜めていた感じでしたが、MFJレギュレーションで使用禁止では現役レーサーはレースで使えませんから仕方ないでしょう。
なんと、この車両は我社のチャンバーとサイレンサーもチョイスしていただいてます。
サスペンションもブリッツ・シュネルでモディファイされているようで、大人のミニモトという感じに仕上がっています。
2ストCRは段々部品が無くなっていき、現在レースで乗っている人もいずれは、別の車両に乗り換えていくことになりますので、いつか誰も持っていない時期が来るでしょう。
そのときに本当に貴重な1台となっていることでしょう。
苦労して作ったサブフレームもカバーをつけてしまうと、殆ど見えなくなってしまうのが残念なとこです。
これは、ラインナップではありませんが、お客さんの要望で作ってみました。
アルミの筒とチタンカップの組み合わせですが菱形断面にしました。オーバルより曲率の小さいR曲げにより剛性があがります。
その反面、チタン板の曲げが固くで難義です。プレス機なしで手加工ですから力技で成型しています。
250サイレンサーと同じ形状ですが、450の排気量にあわせて全長で50mm長くしてあります。完成してから2mMAX法で音量計測します。
2012年型CRF450です。オーナーはフラワーオートの嶋野さん。
80年代、ATV協会創世記のころの3輪バギーチャンピオンで、あの"ダミアン号"の運転手でした。60歳過ぎても新型の450でMXでトレーニングする理由は、同年代の仲間が薬飲んでないと健康でいられないのに、MXで体を動かし汗をかくことで体力を維持するためだといいます。
友人が「嶋野くんは本当に薬を飲んでないのか?」と驚いて聞かれたので「MXが薬の代わりだ、バイ〇グラは時々飲むけどな」と笑いとばしたそうです。
サイドカバー付けた状態ですが、サイレンサーエンドの位置がノーマルと同じです。
エンジンかけて吹かしてみましたが、アクセルのレスポンスもよく乗りやすそうです。騒音も思った以上に静粛で、2mMAX法で計測してみましたら110.6dBでしたので250と同等の消音性能を発揮しています。
今年、MCFAJも登録されたそうなのでレースの方も頑張って続けていただきたいと思います。
05年の全日本MX会場の和寒でヤマハのパドック前に展示されたアルミ合金製ハイブリッドフレーム。ハイブリッドとはダイキャストや鍛造という異質な製法で作られたパーツの複合体であるという意味。
そして06年モデルとして発売されたアルミフレームのYZ125が最終仕様という認識でした。
これはお客さんがエンデューロ用に購入したマシンです。
実はYZ125チャンバーは高張力鋼管フレームの時代にラインナップしていましたので、エンジンの基本は大差ないだろうという考えで当時もののスペックで製作しました。
最終型のパイプ形状が若干変更になっており、治具に取り付かないので車体合わせのワンオフ製作です。
我社のチャンバーとヤマハエンジンとの相性は良かったと思います。YZ125に乗った忘れられないライダーがいます。
彼を初めて見たのは守谷のコースでした。
KXに乗っていたA級の若手で、千葉の八街市在住ということで名門習志野レーシングかと思っていました。すると翌年YZに乗り換えて、チーム登録は土浦レーシングになっていたライダーの名は斉藤慎也です。全日本A級でチャンバーサポートして最も好成績を挙げてくれたライダーと評価しています。
01年にA級125クラスで4位入賞でしたが、常にトップを狙う意気込みでした。翌年250クラスにステップアップして、YZ250のチャンバーも作りましたが、トップカテゴリーで15位以内ポイント獲得していましたので若手最有力ライダーでした。
当時チームYZでは、ノーマルで勝てるマシンを証明するということで、社外のパーツ装着を一切禁じていましたが、斉藤選手は「チャンバーだけはこれを使わせて下さい」ということをYZのスタッフに願い出て認めていただいたという経緯がありました。
なんと律儀なことか、作ってもらった物に対する思いというか、なんとしても結果を残したいという意欲が他のライダーと違っていたように思います。残念ながら菅生でヤマハの合同練習中に不慮の事故に遭い選手活動に支障を来たして辞める結果になってしまいました。
そのころから、菅生の赤土の路面は予期できない滑りで頭から落下して死亡したり重症にいたる事故が続いたので路面の改善に力を入れ始めたということで、斉藤選手をはじめ、幾人かのライダーが身をもって危険箇所を教えてくれて、路面の改善を実現してくれたものと感じています。
スズキRMの前のモデルはTMという名称でした。昭和38年生まれの私でさえ乗ったことがありません。
エンジンや車体はほぼハスラー250ではないかと思います。ハスラー90は持ってましたけど、何処へやってしまったかさえ覚えていない遠い昔のことになってしまいました。
さて今回の製作依頼はTM250のチャンバーです。下に置かれた純正品が老朽化のため新作することになりました。
当時のレーサーはサイレンサーもありませんが、テールパイプにスプリングフックは付いているので
オプションでサイレンサーを装着できたのでしょう。
潰れたノーマルチャンバーを元に採寸して製作したニューチャンバー。
口元フランジも絶版ということで、新作し、ニューチャンバーとセットになります。
採寸した諸元はこのようにガバリを作成して鉄板に罫書いて製作します。
レストア中のこのマシン、クランクケースもOH中なので内部が確認できますが
これはプライマリーキックではないことが分ります。
最近のオートバイは全てプライマリーが当たり前になっていて、ギヤが入っていてもクラッチを切ってエンジン始動ができる構造になっています。
それはキックギヤとクラッチアウターのギヤの間にプライマリーギヤが存在してメインシャフトの連結をクラッチで解除しながらクランクギヤを回せることで、ギヤが入っていても始動できるわけです。
しかしTMにはプライマリーギヤの軸穴が存在しないことが右ケースを見れば分ります。
キックギヤとカウンターシャフトのギヤが直結の構造です。
即ち、ギヤをニュートラルにしてからキック始動できたということです。
ギヤが入っていれば押しがけはできますから、ロードレースでも押しがけスタートが主流でした。
モトクロスでは、今のようなスターティングマシンは無く、エンジンを止めた状態でオフィシャルの日章旗を振る合図でキックスタートでレースしていました。
当然、右足でキックして、左足でギヤを入れてスタートするわけですから、予めギヤをいれてキックできるプライマリー車の方がスタートが優位だったわけです。
古いマシンを乗っている人を見て、「新型のマシンの方がいいよね」という人がいますが
これは古い名作映画を観たり、懐かしい歌謡曲を聴いたりするのと似ていると思うのです。
新型が性能がいいのは当たり前、いつまでも自分の青春時代のマシンを楽しんでいたいという欲求があることを非常に理解できます。
このダウンチャンバーのリバイバルは口元フランジとサイレンサーも新作で3台分同時に、しかも前金で依頼されていますので、他の仕掛かり業務も含めて8月中に急な依頼がありましてもお引き受けできませんのでご了承ください。
2010モデルYZ250F用のエキパイをラインナップに加えました。 チタニウム製のエキパイとサイレンサーを50mmショートにしてオリジナルリヤパイプに換装しました
エキパイはノーマルと等長ですがレゾネーター付、実用回転域のコントロール性向上と音量の低減が目的です。
サイレンサーはノーマルで音量に余裕があるのでショート化して排気抵抗を減らす目的です。
チタニウム製のオリジナルリヤパイプは騒音と排圧の調整をしたもので
音量は5000rpmで92dB/AでありますのでMFJのレースでも使用可能です。
気になる価格は、
エキパイ ¥21000(税込み)
リヤパイプ (ノーマルサイレンサー組み換え工賃込み)¥15750(税込み)
85ccモトクロッサー国産4メーカーとKTMに対応したチャンバーとサイレンサーを製作し、供給して参りましたが、現在のラインナップは以下のとおりです。
ホンダCR85 チャンバー サイレンサー 04以前、05~モデル
ヤマハYZ85 チャンバー サイレンサー 02~モデル
カワサキKX85 チャンバー サイレンサー 05~モデル
KTM85SX チャンバー サイレンサー 06~モデル
主なレース戦歴
CR85 04,05キッズスーパークロスチャンピオン
CR85、YZ85、KTM85SX 全日本レディースで優勝あり
価格4メーカー共通
チャンバー ¥18000
サイレンサー(MFJ対応) ¥12000税込み 送料別途
全機種受注生産です。納期はお問い合わせください。
【サイドビュー】
コンセプトは、買ってきたものは(メーカー純正品以外は)極力使わない。自分で手間をかけた部分だけがオリジナルなのだ。
新品のホイールをばらして、リムはアルマイトにハブは塗装で足回りを引き締めて魅せる。
エンジンも下ろしてフレームやリヤサスも塗装する。
やはり、うちのレーサーは黒が純正のカラーだろう。
しかし、プラスチックパーツは本職のデザイナーが作った純正のままがいい。
実は黒と赤の色のコーディネートが最強の色相なのだ。
余計な飾りも不要、ノンスポンサーを強調することが、オリジナルの意気込みを表現する。
要するに、人にやってもらったことに対してあまり価値観を見出していなくて 自分で手間をかけた部分にマシンいじりのロマンを感じているわけだ。
【サイドカバーはずし】
チタンニウムのエキパイは去年から使用している物でエンジン特性が気に入っているので再使用した。
焼け色が変わっていくのも楽しみの一つ。
全体が焼けたら、サンドペーパーで磨いて何度でも新しい焼け色を楽しめる。
一見ノーマル風のサイレンサーは中身とエンドパイプがオリジナルのものに取り換えてある。
シングルのエキゾーストをデュアルに作り変える試みだが、排気音とパワーの出方を変更する目的だ。
アルミのブレーキとチェンジペダルは他機種の純正部品で流用しただけ。
フロントエンジンハンガーはノーマルの高張力鋼板から超ジュラルミンの削り出しに取り換えてある。
【リアフォーク・スプロケット】
150R最大の欠点であるリヤフォークの強度不足を対策した補強リヤフォーク。
7Nー01材で曲げ応力が最大になる箇所の断面積を30%増して対応している。
町工場はメーカー任せにする必要はないのだ。
一見スペシャルのスプロケットはノーマルベースで112個の穴空けをして軽量化した。
ノーマルはなんと、820gも重量があるのだが、570gまで落とした。
しかし、タロンのアルミは270gしかないので2倍の重量だ。(残念)
但し、耐久性は3倍くらい期待できるので、コストパフォーマンスで断然勝っているはずだ。
テスト中の新型構造はマフラー内部で二股に分岐させ、2本のパンチングパイプを通って排気され
る。
ノーマルの開口面積と同等の2つ穴にした場合、約1dB排気音が上がることが分かった。
排気を2列にすることで排気ガスの流速があがるためと思われる。
これがパワー的に有利だということを示しているのだが、あとは、パイプ径の調整をすれば音量のコントロールも可能だ。
とにかく、いつも同じマシンに乗っていたのでは、ライディングそのものの情熱が冷めていってしまうので 常に新しい試みと、ベストコンディションを保つメンテナンスを怠らないことがモトクロスを長く楽しむ秘訣ではないかと思う。
2スト車の車体に4ストエンジンのスワッピング(換装)は何度もやってきた。 しかし今回のスワッピングは今までのとはわけが違う。
これまでのエンジンは旧式の空冷2バルブであったのに対し、これは新型の水冷4バルブだ。 おそらく日本で初めての組み合わせだろう。前後サスペンションはホワイトパワー。リヤはリンクレス。 ブレーキはフォーミュラの対向ピストン。国産には採用されないヨーロッパ製品が目を引く。 画像はエンジンのレイアウトを検討している様子でエンジン位置は決定したがフレームのパイプは繋がっていない。高くなったキャブレターにあわせたエアクリーナーの変更、シリンダーヘッドをかわしたガソリンタンク製作、フレーム中通しの専用エキゾーストパイプetc.難題山積みである。 おそらく実走できるのは夏頃だろう。
この製作計画を聞いて殆どの人は無意味だとか、改造しないでそのまま乗るのが一番いいとか思われるだろう。 実は製作を担当している自分自身も同様に思っていたのだが、製作を諦めさせる説得をしながら、自分の気持ちが完成させて走らせてみたい方向に変化していった。
これを無意味なことと思う人は、マシン選びにどれ程の理由があるだろう。 メーカーのイメージであったりレースで上位を走る機種であったり、バイク店との付き合いであったり。いずれにしても明確な根拠は存在しないはずである。しかも、高額な支払いをして手に入れたマシーンも翌年にはあっさりモデルチェンジされて旧式になってしまう。本当に乗りたいものを決める手段が完全にメーカー任せになっていて、お客さんは踊らされている状態だ。そんな宛がわれたような選択肢では、ただ流行にながされて、他人の真似しかしない日本人の一員になってしまう。
他人と違う方式を試みる精神がこの車両の製作に現れているではないか。 これが完成して走っている姿をみて、どんな乗り味なのか興味を持つ人は多いだろう。しかしその答えは作った者、乗った者にしかわからない領域だ。
無意味だと思う人には一生わからない答えだろう。 そしてこの製作を実現する手段に弊社を選んだ依頼者に満足していただくために腕を振るわなければならない。