■ リペア・難易度A級の修理

CR125の最終モデルのアルミフレームですが、このような亀裂は珍しいので公開します。
19年前の機種なので純正部品も廃番かもしれません。中古フレーム探すのも煩わしいですね。
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ヘッドパイプの前側、上から中央付近まで亀裂が入っています。
大変大きな不具合だと思いますが原因は何だったのでしょうか。

この素材はジュラルミンを鍛造で成形した物ですが型の合わせ面に見られるパーティングラインに沿って割れているので
製造工程で欠陥が生じてステムパイプからの荷重を受けて口が開いたと推察されます。

ここでは不具合の原因解析をする立場ではないので使用可能な状態に修復する作業をしたいと思います。

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亀裂に沿って溝を掘っています。
肉厚の厚いアルミパイプなので溶け込みを深くするため溝の底から溶かすようにして
溶接強度を増すためです。










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先ずパイプ部分の縦割れを溶接しておきます。
ベアリングの圧入部分は片側に大きな熱が入る溶接なので
真円が歪んで使えなくなる恐れがあります。
そのため圧入部分は切断して
新たに加工した部材を結合させる方法にします。







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切断した上部に新たに加工したベアリングの受けを載せてあります。

パイプの全長は切断前に測っておいて
接合後に同じ長さになるように調整します。

ベアリングの圧入代は現品を計測して同じ寸法に加工してあります。








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恐らく溶接過程で傾いてくると思われるので
パイプの内径φ45に軸を圧入して同軸度を保証しています。
軸は溶接後油圧プレスで抜き取ります。











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パイプを全周溶接して修理完了です。

純正部品と見比べなければ、最初からこのような作りだったように思うでしょう。

同梱されていたボトムブラケットとアッパーブラケットを装着して操舵確認しましたが
違和感なく操舵できましたので
これで出荷させていただきます。



最強ミニモトKX112のサポート分でサイレンサーのアルミパイプに亀裂が発生することが判り
対策のため補強パッチを追加しました。

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IA2ゼッケン#9鴨田選手に実走テスト兼ねてサポートさせていただいたチャンバーとサイレンサーでしたが
サイレンサーのパイプ部分のステー前側を起点に亀裂が発生し破損に至る不具合を
確認しました。

KX85シリーズ共通のチャンバーマウント方式で上側1か所のラバーマウントしか止めてなくて、サイレンサー側に2点のマウントステーが付いています。
そのためパイプ側ステーの端に応力が集中しているのが明らかで応力分散の目的で
補強パッチを追加しました。

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モトクロスで大きいジャンプの着地など
上下方向のGによって車体やテールパイプなどがしなり、厚板のステーを溶接してある
前側1点に高い応力が発生することは
計測しなくても想像がつきました。

しかし実際どれくらいの寿命で破損するかは実走してみないと分からないところなので
今回結果が出ましたから改修を実施しました。

以降の生産分はパッチ取り付け仕様としております。
過去のデリバリー分も希望者がありましたら
無償で追加させていただきますので、ご連
絡ください。


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いろいろマフラーなどの修理が入ってきます。
全部国際A級ライダー様の練習用だということです。
直接頼まれる場合だけでなく
近隣のショップさんから来ることもあります。

溶接や板金の技術を持っている業者さんは大勢おられると思いますが
モトクロス用の修理となると、ここへ持ってくるのが話が早いのだと思います。

損傷の状態が様々で修理方法もその都度
考えなくてならないのです。
唯、ポリシーとしては外観は勿論良好に
元の強度よりアップさせる方法を採る、ということです。割れたところ付けただけだと同じように割れることは確実で、しかも最初の亀裂より短時間で再発することになるでしょう。だから元より強くしておく必要があります。

IMG_2087.JPG全部ではないですが
少し状態を見てみましょう。

転倒してマフラーが捻られたのでしょう
根本の潰れが酷いですね。

これの直し方は後で説明します。









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もう1本はサイレンサーのフロントエンドとミドルパイプが完全に離れています。
パンチングも中で折れていました。

転倒などの外力でなく振動による亀裂が発生したものと思われます。

これも後で修理方法説明します。







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取り付けポルトの下側に亀裂が発生しています。
破断する前に発見できる眼力はさすがです。
脱落すると大きな損傷になるので
これなら少ない作業で済みます。

唯亀裂を溶接するだけでは元の強度より
劣るわけですから
こういう場合の補強の一例も示したいと思います。
レース用のマフラーはグラスウール交換などメンテナンスが必要ですが、リベット外す度にサイレンサーボディを傷つけないようにステンバンドが装着されていますが
ステンバンド単品はメーカーから供給されませんので、オリジナル製作して交換します。

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マフラー機種毎にバンドの周長とリベット穴位置が専用になります。

マフラーボディ外周を計測してバンドの板厚を考慮したバンド長さを計算します。

リベット穴位置は実測で計測した数値を記入した図面を描きます。

後はレーザー加工を精密板金屋さんへ外注するだけですが、加工する数値は自己責任で穴明けのピッチがコンマ2mmも違うと
リベットの差し込みが困難になります。

加工できたステンバンドをリベットを差し込んで検品中ですが、一発OKですね。
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メンテナンスした社外マフラーを組み立てて早速新品のステンバンドを付けさせていただきました。
非買品なので形状見ただけでうちで施工したことがわかるようになっています。

ステンリベットは一個50円×16か所
ステンバンド1本1000円×2本
実費で掛かります。

このマフラーは亀裂などで数か所溶接と補強で強度アップしたので
吊るしのマフラーより信頼性がアップしているはずです。


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RZV500のリヤバンク2気筒がセンターアップのチャンバーになっているのですが
リヤサスが沈む過程でリヤフェンダーと衝突する問題です。
これを作った職人さんはこれ以降の作業をお断りされたということで
何故かウチに改修を頼まれたのですが
ちょっと事情を聴いただけでも乗り気にはなれないですね。

面倒ですが人助けと思って貧乏くじひかせてもらいました。














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もうとにかく図面のない注文が多すぎます。

私が外注する場合は必ず自分で設計した図面を添えて注文します。

加工屋さんは図面に忠実に作ることが仕事なので、出来上がった製品の性能や取り付け仕様に責任はありません。
もちろん図面通りに作られた作業と材料代に対して、代金を支払います。

ところが、設計も取り付け仕様も全てこちら持ちであり失敗した分も全額負担という
厳しい条件ですが
殆どの場合はそういう細かい取り決めをやらないで頼まれています。
初めて作るものも出来るのが当たり前と思われるみたいですが、実は出来ないことの方が多くて諦めることが殆どなんですけどね。何回も骨折して手が不自由だし、視力も衰えて溶接なんか全然見えてないのに勘でやっている感じです。

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0.8tステンレス板を設計した展開図に沿って罫書き、テーパーリングを作成します。

これでリヤサスをボトムさせた車体に当てがってレイアウト検討します。

問題なければ接合位置をに目印を付けて溶接していきます。






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リヤフェンダーを避ける形のセンターアップになりました。

チャンバーは外に出して
マフラーはセンター寄りに
シートレールの内側にバッテリーBOXの
スペースを空けるなど
言葉だけの注文は聞いてますが
寸法は一切こちら任せです。

相当な時間とアルゴンガスを消費したので
不良品にならないことを祈るばかりです。

過去に何回不良品作ってやり直してきたことか、その度に時間とお金が失われていく仕事です。
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実は一回で上手くいってません。
何回かやり直していて、こんなところで
妥協しないと延々と続いてしまうので
これで終了です。

あとは依頼主さんに続きをやってもらいます。
オーナーさんは別におられると思うのですが
誰だか知りませんので、意見も聞くことはなく、完成した車体を見ることもないでしょう。

世の中の製造業も注文された加工物が何に使われるか説明されないまま、図面と金額と数量、納期が決まっていくものだと理解しており、経済活動はそれで成り立っていくと思っています。










4・5年に一度くらいしかアルミタンク作らないので毎回難しいです。
最初にクレイモデル作って形状が決まっていれば型紙を作成しやすいと思うのですが
予算的にモデル制作費用がいただけません。仕方なく大雑把に型紙描いて、アルミ板に罫書いて
切った貼ったの板金溶接で作ることになります。

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タンクキャップはオリジナルデザイン。

スプリングでゴムパッキンを押し付けるタイプですが

開け閉めの強さやパッキンのシール性などのデータが一切なく
憶測で寸法決めて加工し
実際に手で締めたり開けたりで操作フィーリングを確認しました。

タンクに溶接してからではやり直しができないからです。



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過去に一回だけ作ったXR650Rのアルミタンクですが
当然、モデルも型紙もありませんんで
ゼロから切った貼ったの溶接組み立てなので形状が悪いのはお許しいただきたいです。

何故これを作ることになったかは
樹脂タンクが劣化して亀裂が入ってきたのに純正廃番で社外タンクも高額でいつかは劣化することを考えると、アルミの方が寿命が長いと思ったわけです。
(恐らくタンクよりエンジンの方が先に逝くと思います。)

容積はノーマルが10Lに対して15L入りました。シート前方とシュラウドに規制されたタンク形状としてはまずまずの増量です。
前出のタンクキャップ取り付けて、ガソリン入れて逆さまにしてガソリン漏れ確認しましたが
全く漏れませんでしたので要件満足できました。
着手してから完成まで2週間くらい掛かってしまい途方に暮れる日々でしたがようやく解放されます。

しかし休む暇もなく、次も難題の加工業務が待っています。

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某バイクショップさんからの依頼なんですが
別の業者さんで製作されたチャンバーの改修です。
「何で作ったところへ頼まないのですか」
すると、これ以上やらないと言われたとのこと。

V4エンジンをフレーム換装してここまででも相当な工数が予想されますが
リヤバンクの2気筒はセンターアップのチャンバーになっていて、リヤフレームも改修されていますが、シーレールと同じ高さなので
その下側にチャンバーを持ってくるとリヤタイヤ(フェンダー)とのクリアランスが少なく
サスが沈むと確実に当たります。

そんなことレイアウト検討する段階で分かるはずなんですが、何故このようにしてしまったかは謎なんですが
私にとっても無関係な話なんですね。






IMG_2064.JPGリヤショックのスプリングを外して
フルボトムさせてみると
リヤフェンダーとリヤフレームとの隙間がわかります。
ここをチャンバーが通るのは不可能なので
両横に逃がした形状に作り変えるというのが依頼の内容。
しかも2本のサイレンサーはリヤカウルの中央付近に集めるという難解さ。

私にも出来ること出来ないことがありますのに、ここへ置いていけば問題なく出来上がってくると思われているようなので
対応するしかなさそうです。


自社製品バックオーダー多数なのに社外マフラー修理している余裕はないはずですが、
レース界の大御所から頼まれてお断りするわけにいかず、
ならば最低料金、最短時間で、しかも壊れたところ強度アップしておけば同じ物が来ることはないであろう。ということで社外マフラー修理しました。

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サレンサーフロントエンドとミドルパイプの接合部が3本共、同様に破損または変形していることから
ここが強度不足であることは明らかのようです。

破損の原因は私には関係ないことで、
求められていることは直して使えるようにすることです。






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ミドルパイプが外れて中のパンチングメタルを叩いて変形しています。

これを直すためにサイレンサーを分解しなければなりません。

こういうこと販売しているメーカーに頼んでも直してもらえないそうです。
レース用部品なのでレース毎に新品に交換すれば問題ないという考えかもしれませんが、アマチュアなので予算には限りがあります。



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変形したフロントパイプは形状を整えて
接合部分に厚板(SPCC2.5mm)を当てて補強します。

パンチングメタルも潰れたところ修正して
ミドルパイプに差し込み可能にしてあります。
これで組み立ての下拵え完了です。






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溶接組み立ては車体に取り付けて
エキパイ装着と2か所のマウントボルト締め付けた状態で仮止めします。












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フロントエンドとミドルパイプ溶接完了です。

接合部はt2.5厚板追加してあるので
以前のように壊れることはないでしょう。


これからサイレンサー組み立てですが
パンチングを差し込みながらリベット穴位置合わせるのが困難です。
なので無駄に時間が過ぎていきます。(工賃に反映されないからね)




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ステンリベット加締め48か所完了です。

グラスウールは外したものが損傷してなかったので再使用しました。

社外メーカーの設計の問題なので
これを直すメリットは当方にないですが実施した理由は冒頭に書いたとおり。

工業製品は実用に耐えるように設計されてないといけませんね。
本田技研工業の純正部品だとこういうことは起こらないから一流企業なんです。

4月は四国モトクロス選手権第2戦に出走のため事前練習とレース当日の2回遠征しました。
関東に住んでいればレースは沢山開催されているのに、わざわざ四国まで遠征に行く理由は
学生時代に親の猛反対で家からレースに行ったことがなく、学生寮から先輩のクルマに便乗させてもらってしか行けませんでした。
大人になって自分でレースに行けるようになったものの、実家でマシン整備してレースに行くなどという
経験が出来なっかった少年時代のやり残しを、還暦過ぎた今 実行しておこうと強く思ったのでした。

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いつでも出来ると思っていても、実行するにはかなりエネルギーの必要なことなので
ためらわず行くことにした四国選手権。

前回走ったのが1982年なので
実に41年ぶりに香川スポーツランドを走るのです。
60歳になった肉体は10代のころほど体力がありませんがノービスクラスであればどうにかレース出来るだろうと思いエントリーしました。



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カリフォルニアのグレンヘレンがコンパクトになったようなアップダウンとサンド質の路面

快晴だったレース当日は正にカリフォルニアの景色でした。

コース整備の行き届いた路面で各クラス、ハイペースのレース展開で
ローカルレースとは思えない盛り上がりでした。

中国地方や近畿からも遠征組がおられて
トップグループを形成する内容でした。
自分も含めて何人かがアクシデントに見舞われたのが残念ではありましたが・・・

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NBクラスヒート1で3位
60歳でMFJの公式戦で表彰台に上がることができて大体目的が達成できたように思っていたら
ヒート2ではスタートもよくてもう一回入賞を狙うつもりでしたが2コーナーの立ち上がり加速中に後続車の追突があって両者転倒。

体にダメージは無かったので再スタートを切ろうとしたが、ラジエターに穴が空いて
冷却水が噴き出るのが見え、さらにブラケットごとステップが外れて地面に落ちているのを確認して、路肩にマシンを移動してリタイヤしました。
ステップは衝突の衝撃か、路面に倒れた荷重によるかは分かりませんが、取り付けボルト2本が破断していました。

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埼玉の工場へ戻ってから修理です。

フレームに立て込んだボルトを抜き取る方法は幾つかありますが
最も簡単な手段は
ボルト破断面に溶接で肉盛りして、プライヤーなどで摘まめるようにT字を形成します。

破断してテンションの掛かってないボルトは
ネジを回してアッサリと外れます。





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ネジ穴はm8とm10ですが損傷はありませんので修正は不要です。

ステップのピンとブラケットに歪みが確認できたので純正部品新品交換で修理は完了になります。
スポーツ走行中にエンジンが壊れてほしくないですね。
そのため定期的に分解、点検整備を行う必要があります。整備を怠っていると、
走っている限り金属部品はダメージが蓄積して確実に破壊します。

その破壊するタイミングがコース上の安全な場所で起こるとは限りません。
むしろ最悪の場所でエンジンが止まってしまうこともあり得るのでした。

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この車体は4速全開でダブルジャンプを飛ぶ場所で、なんと上り斜面の踏切りでエンジンが壊れて後輪ロックしたまま
フロントからジャンプの谷間に墜落して前転したそうです。

モトクロス走行中に最も経験したくないアクシデントです。
幸い後続車を巻き込んだり、ライダーの身体能力が高かったおかげか、怪我なく済んだようですが、運が悪ければ重大な事故になったかもしれない危機でした。




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さーて、外観からは異常が認められないですが、ドライブシャフトはロックしたまま動きません。

これからエンジン下ろして分解して原因を確かめたいと思います。









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腰上から順番に外していき
クラッチアウターを外したときに
回らなかったクランクが正常に回りました。
これで、メインシャフトとドライブシャフトの間で問題が起きていることがわかります。

クランクケースを開く段階でドライブシャフトの軸が傾いているのか、負荷がかかって
簡単に開くことができませんでした。

苦労して分解したクランクケースからでてきたドライブシャフトの3速と4速の間で捩じ切れていました。

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ドライブシャフトのL側ベアリングのリテーナーが壊れてボールが欠落しています。

推定ですが最初に壊れたのはこのベアリングで、シャフトが傾いて回転曲げのような負荷が掛かってシャフトの溝から切り欠きの効果で亀裂が発生して破壊に至った。









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R側ベアリングの突き当たり部分が割れています。
シャフトが折れた際に軸が右側に押されて
ケースの段付き部分を突き壊したと思われます。

このままではベアリングの位置が動く可能性があるので、ケース交換する必要がありますが

他の部分にダメージが無いようなので直して使いたいと思います。



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ベアリングで位置決めをした状態で段付き部を溶接で補修しました。

このベアリングを含めて3軸の左右ベアリングは新品に交換するので
クランクケースは再使用したいと思います。

2年乗った車体なので調度いいオーバーホールの時期だったでしょう。

早急に部品注文して年末までに完成させなくてはなりません。



スバル360のコンペティション用チャンバーを解体して内部構造を測り、復刻したのが20年前。
オーナーさんからリヤエンドのパイプが破損したので、修理してほしいということで
現品が送られてきました。

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この象の鼻のようなエキパイを作ることが難しいということで
我社に依頼されて作ったチャンバーでした。

タイコの部分は3部屋に分かれていて、
腐食して使用不能だったオリジナルのタイコを切開して内部寸法まで再現してあるので
性能も同等になっていると思います。

破損したパイプエンド以外は劣化も少ないようなので、早速エンド部分の修復に取り掛かります。



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デュアルエンドのはずが、1本はベースの板が割れてパイプが無くなっています。


パイプはリヤバンパーの下側に付き出す形ですが、タイコの変形はないので
圧力波による振動が原因で鉄板に金属疲労を起こして割れたと思われます。







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図面は残っていないですが
残った現品は2重パイプになっているので
同様に2重パイプを作っておきます。

バンパーを避けるために若干曲がったパイプになっています。









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ベースの板を重ねて溶接します。

タイコ内部に3cmほど突き出した仕様なのでベース板に差し込んであります。











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本溶接して修復完了です。














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スバルのオーナーさんは
ずっと乗り続けていきたいとおっしゃるので
時々亀裂チェックしながらでしたら
使い続けられるでしょうと申しておきました。

このタイプ2台くらい作ったと思いますが
20年経ってこれくらいの外観なら
問題無さそうです。







21CRF450モデルからサイドカバーが小型になり、サイレンサーが露出するデザインのためか
右側面が無傷の450や250CRFを見かけません。

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サポートライダーの250用です。

もっと大きい凹みと亀裂があったので
大雑把に叩き出して、亀裂は溶接した状態です。








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欠損したフロントエンド部分を再生しましたが、
同じ板厚では、同じことが起こると思い
A5052の板厚1.5tにしておきました。

リベットはステンリベット使用します。








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この後も使っていく限り
凹み続けるはずなので
A5052 板厚1.0tを重ねて
ツインウォール化しました。
ノーマルのアルミより固いです。

これでも大破するようでしたら
全部交換するべきでしょう。



ML3(CR500R)フレームの改修が完了したつもりでしたが、ロアーパイプの凹み隠しに
ツインウォール加工した部分のやり直しすることにしました。
その理由はオリジナルの外観と違うと思われると失敗したような気がするためです。

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実は、CNC加工のクランクケースとリヤフォークも預かっていたので
治具代わりに使うことで、ロアーパイプ切除して取り換える方法で、オリジナルに近い外観で修復できると考えました。










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ロアーパイプ交換用のパイプを曲げて
接合部にパイプを差し込んで
パイプのズレを防止することと
接合部の強度アップを計ります。










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元のパイプは切断しました。

そのため残留応力が解除されたロアーパイプが自由になり
エンジンマウント位置が変わってしまいました。

フロントマウントとピボットの軸距離が5mm近くなって、マウントボルトが通りません。
ダウンチューブ下の2本のパイプを矯正して軸距離を元通りに修正して、フレーム治具を取り付けることができました。
新造のロアーパイプを溶接するときに治具で拘束したまま行います。


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ロアーパイプ仮止めしてTIGの電極が届く範囲で接合部肉盛りしてから
フレーム治具を外して残りの溶接を行います。



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ミドルマウント・プレートはオリジナルのパイプから切り離して使うことにします。

それで外観を元通りに近くなるでしょう。













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ダミーケースを取り付けてミドルマウント溶接しました。

センターガスケット厚み分のクリアランスが必要なので、ブラケット内側に0.8mmスペーサーを挟んで溶接します。


溶接熱が冷えてからマウントボルトを抜いてみましたが、スコスコ通りましたので
マウント穴位置は正常に出来ました。




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これで下回り凹みのないパイプに修復完了です。

塗装すれば修復したことが分からないようになっていると思います。











国内では珍しいML3(CR500R)のフレームを改修します。
レストアラーのDFさんからの依頼ですがヤフオクで中古フレーム落札したら想像以上に酷かったので
このまま塗装して組み上げるわけにはいかなかったでしょう。

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サイドビューからフレームの状態を図り知ることは無理でしょう。

最も醜い状態のテンションブラケットを削除して新造して取り付けることにするので
取り付けレイアウトを同一にするためフレーム治具製作しました。

これでテンションブラケットのボルトを外しても3点のエンジンマウントで取り付け位置は決定できます。



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テンションブラケット取り付け部分
何故このような溶接になったか疑問ですが
DFさんは、とにかくここを綺麗に直してくれと言うので、
これはもう取り外してやり直した方が簡単だろうと決心しました。










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直す部分はもう一つ
ロアーパイプ下面のデフォーム多数
平滑なパイプにしたいとのことです。

すごく荒っぽく乗られた車体だったようです。

これに長期間費やしていられないので
ごく簡単に直してみたいと思います。







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直すというか、ボロ隠し
曲げたパイプを半割りにして貼り付け
ツインウォールにしました。

板厚1.6mmなので丈夫だと思います。
溶接ビードは研磨しません。(板厚が薄くなるので)







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テンションブラケット削除しました。
溶断で切り落としてディスクサンダーで均すことで平滑になります。

2本のテンションパイプとクロスパイプの接合部、クロスパイプ両端の溶接ビード、謎の団子付けを改善すべく
TIGで舐めておきました。






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切り取ったテンションブラケットの代わりに
新造しました。

S45Cの板厚4mmを選択しました。
中強度の炭素鋼で軽く焼きが入ります。

?12ボルトがスムーズに入ることを確認して
フレームに溶接します。






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フレーム治具を組んだ状態で溶接しますのでボルト穴位置は元通りに復元されます。

ブラケット内幅のカラーに0.8mmシムを挟んで締め付けしているのは
溶接歪みで内幅が締まってしまうので
テンションロッドのディスタンスカラーが
入らなくなるのを防ぐためです。


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テンションブラケットはCRのフレームで最も引っ張り荷重が掛かる部分で
大ジャンプの着地などで最大10トン近くの力で引っ張られます。

そのため材質や溶接方法など、強度重視で配慮して加工しました。


これでML3フレーム改修完了です。



エアブラシの上手な先輩から助言をいただき、メインフレームのサンドブラストを施しました。

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実は以前から機会があれば頼もうと思ってきた表面処理屋さんが近所にあって
その会社へ持っていきました。
うちからクルマで5分の場所なので気軽に行けます。

その会社は大手企業も多数依頼されているそうで、なんと宮内庁の仕事もやられたといいます。
皇室の護衛に使っているゴールドウイングが経年劣化しており、天皇のご意見は買い替えでなく修理して使うということなので
フレームは再塗装になったそうで
そのときのサンドブラストを請け負ったということです。
この上ない信頼度です。
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ヘッドパイプやボルトの穴は全てマスキングしてあります。
そのまま塗装へまわすので、塗装範囲とブラスト範囲が同じというわけです。

特に強力ボルト(8T以上)の締め付け座面に何トンもの圧力が掛かるので
塗膜を介して締め付けるのはNGです。
エンジンマウントやリンクの取り付け面はマスキングで塗膜が乗らないようにするのが
設計上の組み立てだと思いますので厳守しております。


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前後ハブとリヤリンク

ベアリングの圧入面のマスキング方法は
アルミカラーを製作し、軽圧入して
隙間ができないようにボルト・ナットで締め付けです。

ドリブンスプロケットとブレーキ・ディスク取り付け面も当然マスキングしてあります。


これで塗装の準備が整いました。


狭山品管強度グループのメンバーにとって忌み嫌う「鉄ミニウム」、高張力鋼管のフレームやリヤフォークなどアルミ風にシルバー色に塗装した部品のことをそう呼んで揶揄していました。
重いくせに軽合金であるかのような外観に見せる意味が分かりません。
市販モトクロッサーは本田の戦闘機、宗一郎さんが生きていたころは車体色は赤と決まっていましたが
ご逝去された後から赤フレームを止めてしまいました。
市販ミニモトクロッサー初の4スト4バルブエンジンのCRF150Rはアルミフレームの試作車もあったそうでライバルメーカーの出方次第で発売に踏み切る用意はあったみたいですが、結局鋼管フレームで落ち着いたことで「鉄ミニウム」としてシルバー色塗装になりました。
元テストグループとしては戦闘機の色ではないなと思い、違う色で塗装して乗っていました。
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2010年に新車だったCRFですが、今年で12年も乗り続けています。

途中でエンジンや足回りのオーバーホールはしているので、機能的には問題ないですが
フレームの塗装は色褪せや剥がれで劣化が著しいので、再塗装のため全剥離しました。






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12年乗ったと思えない程度良好です。

錆びや凹みが全く見当たりません。
高張力鋼管フレームは強靭です。

アルミフレームではこのような外観は保てないでしょう。







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前後ハブとリヤリンクも同色で塗装しようと思っています。

剥離に当たって高圧洗浄など掛けるため
ベアリングは全て抜き取ってあります。

剥離の方法はスケルトンで塗装を侵して浮き上がったところを高圧洗浄で飛ばしますので、凹んだところも隅々まで剥離できます。






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剥離したサブフレームは新品同様です。

溶接課から出荷されたばかりのようです。

泥水入って腐食しないように穴埋めしてあったのが功を奏しました。








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複雑なパイプワークやガセットなどプレス部品。
溶接課ではMIG溶接の職人が組み立てしているので、アルミフレームより製造コストが掛かっているのではないでしょうか。

クロモリ鋼が最高の材料ですが、材料コストが軽合金より高いので、機械的性質が高く比較的コストが低いことがハイテン材(高張力鋼管や板)選定の理由です。


さて、塗装はプロにお任せするのでマスキングまでが私の作業。
仕上がりは続編で公開します。











フルモデルチェンジされた22モデルCRF250のマフラーを早くも潰して修理になりました。

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幸いマフラー本体に損傷はありません。

この潰れたエンドパイプ部分の修理になります。
本来なら純正部品を取り寄せ交換するだけなのですが

今週末のレースで土曜日から使います。
さらに移動日は木曜ということですから
あまり猶予がありません。

そのためパイプエンド製作にします。



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先ずはセパレーターの外周をアルミ板で巻いて作ります。

圧入するくらいピッチリ嵌めないと組み立てできなくなる重要な部分です。

次にパイプエンドの蓋
フライス加工でツバ出し形状にして装着してあります。

二つのパーツの間を繋ぐ板の展開図を作成して溶接組み立てします。



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傾いた2面を上底と下底に持つ多角形台

ちょっと難解な展開図を作成し
t1.5のA5052を曲げ加工して作りました。

ここまで来れば出来たも同然。








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溶接して研磨仕上げで外形は完了です。

M5ボルト用の穴加工をすれば組み立てできますが

本体に嵌め合いが上手くできるかが
寸法の合否を決めることになりますが
計算上は組み立つことになっています。






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問題なく組み立てできました。

アルミ板は材質的に純正より硬いはずなので若干の強度アップも果たします。

祭日なのにどこにも行けませんでしたが
一日作業で完了したので
部品調達が間に合わない以上、最短で直す方法の一例として記しました。

時期的に他の手段がなかったですね。
サブフレームのサイレンサーマウントの不具合ですが、アルミプレートがサイレンサーの重量に耐えられず、後ろ側に亀裂が入ります。亀裂が発生したら破断するまで1レース持たずにサイレンサー脱落という事態になります。

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これは走行の少ない車体なので亀裂が入る前に補強しておこうと思います。

ノーマルサイレンサーのステー厚さが12mmあるのに、サブフレーム側のプレートは6mm厚の一枚板で
断面積が少ないことが原因でしょう。

プレートの後ろ側の応力測定したら高い数値が出ることでしょう。





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ノーマルのプレートに被せるブラケットをフライス加工で作りました。

オリジナル設計なので、誰かの真似はしておりません。


実走で不具合を出さないための対策を考えたものです。





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ノーマルのシートレールとマウントプレートに被せて仮止めします。

ノーマルの取り付け位置を変えないで
強度アップすることが目的です。











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見た目で頑丈な感じです。

これで亀裂は発生しないと思います。












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裏側も全周溶接です。絶対外れないでしょう。

シートレール内側の盛り上がった部分はリヤフェンダーをカットする必要があります。

ボルト穴の座グリ加工はフランジナットで裏から締められるようになっています。

たまにボルトが締まってなくてマフラーが脱落させることがあるので
締め忘れ防止ですね。


もうすぐ長い休みだった全日本が再開します。後2戦ですから最後まで壊れないで走ってもらいたいです。



なにやら見覚えのあるマフラーですが、去年も修理にきたのと同じものです。
イギリス製だと思いますが、現地メーカーからサービスを受けることができないのでしょう。

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2種類あります。
詳細は知りませんが
上が旧型、下が去年の物です。

リベットを外して分解しました。
どちらも1シーズン使ったらしく
少し損傷しています。

今回の依頼は音が大きくなってきたので
グラスウールを入れ替えることですが
損傷部分の修理もやっておきます。




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2者の比較ですが
サイレンサーの長さが全然違います。
インナーパイプの径も違います。

旧型の方が長くてインナーが細い。
後期は短くてインナーが太い。

目的は前者は消音タイプ
後者はパワーアップだと推察します。
どちらも現行KX250Fに装着できます。





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後期型の出口付近にスパークアレスターが入っています。
これによって、アフターバーンが抑えられますが、パワーフィーリングも直管よりマイルドになるでしょう。

マフラーが短く出口が広いため、効果的な消音方法を採っているようです。








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旧型はスパークアレスターではなく
フィンが2枚付けられています。

これは排気ガスに乱流を起こし、排出スピードを遅らせる効果があります。

騒音はガスが急激に膨張するときに起こる
空気の振動なので
膨張する勢いを落とすことで騒音を軽減することができます。
多くの市販レーサーのマフラーに採用されている手法です。


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損傷部分はこれです。

フロントマウントのネジが壊れてボルトの締め付けが出来なくなっています。

ブラケットはネジを取り出すためにカットした状態です。


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ステンレス棒からナットを削り出して
ブラケットに装着しました。

ネジ穴の位置を微調整するために
長穴をスライドするナットになっています。

そのためナットの軸が摩耗してネジが壊れてしまったようです。






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ブラケットの削除した部分をステンレス板で修復しました。

ナットは前後にスライドする構造で回復しています。
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フレームに当たる面にワッシャーを取り付けて完成です。

M10用ワッシャーの穴にナットの軸が圧入できる加工寸法になっています。









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グラスウール・リパック完了しましたが
国産メーカーの純正部品を流用します。

銘柄は秘密にしておかないと、社外マフラーに使うことが知られると販売拒否されることがあります。

例えばY社のマフラー用グラスウールは
特約店か同社マフラーの販売証明がなければ注文できないということです。

部品代が結構掛かります。
グラスウール代1万円/一台当たり
ステンリベット1か所50円で2本で31か所加締めましたので1550円

分解と組み立て、マウント修理など工賃も含めて2本分総額3万円になりました。



お客さんから電話が入って、部品が壊れたが廃番になっていて取り換える方法がないから修理できますか?ということで、現品を持ってきてもらいました。

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KDX125SRのクラッチカバーです。
割れたときの状況を聞いたのですが
車体を倒したり、何かに衝突したことはない
異音も聞こえなかったので
いつ割れたのも不明だが、ツーリングの休憩中にオイルが漏れていることに気が付いて発見したそうです。

何とも原因がわからないですが
クラッチ側の内部に異常はなく走行はできたということなので欠損部分だけ修理することにしました。

破損原因の推察は後半に書きます。

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内側に拡がった破断面から
外側に破片が外れることはできない形状であることが分かります。

そのため入力はカバーの外側から入ったことになります。

破断面に波状の模様が確認できます。
これは一発の衝撃ではなく
繰り返し荷重がかかって亀裂が進展していることを表します。

オーナーさんの連絡で当初の予想とは違う原因だったことが判りました。



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外側のコーナーに亀裂が認められます。

外側からの入力で引っ張られた証拠です。
亀裂までが修理の範囲になります。





ケースカバーはダイキャスト製品なので材質上の欠陥がなかったか考察したいと思います。



鋳造品や鍛造品において材料内部が均質であるという前提で設計されていますが
実際はそうではありません。鋼材メーカーで金属を溶解し成分を調整してから連続鋳造で
押し出しの丸棒や圧延の板で製品になります。
これは鉄鋼でもアルミでも材料メーカーから出荷される形は決まっています。
材料ロットはいずれも溶解ロットと同じことですが成分分析は溶湯の状態でサンプルを採って測るので
溶湯の全体は分かっていないはずです。
それから、圧延でも押し出しでも鋳造時に材料内に存在する湯境やブローホールのような欠陥があったとしても高圧で成形されて出てきますので圧縮されて検出不可能になって製品化されています。
ですから外観上はなんの問題もない鋳鍛造品のなかに、偶然ですが薄肉部分に欠陥が紛れていて
丁度その部分に過大な負荷が掛かったとしたら亀裂が発生する可能性はあるでしょう。

唯、足回り部品のように破損したら重大事故につながる重要保安部品はX線や超音波などの非破壊検査で全検されるべきものですが、ケースカバー類は重要保安部品でなく欠陥の発見頻度も少ないため
検査しないことが大多数だと思います。

学生時代、非鉄金属材料は専攻していましたが会社員になってその知識を使う機会もなく、殆どを無駄にしてしまった気がしますが、勤め先の本田技研ではアルミ製品は不可欠で埼玉製作所から2輪組み立てが無くなって4輪工場に移動になってから材料品質係へ配属され、素材メーカーには大変お世話になりました。
本田が取引していた主要な非鉄金属メーカーは、昭和電工、住友軽金属、神戸製鋼、日軽金、光生アルミですが、アルミの精錬を自社で行っているのは日軽金だけでした。
アルミの精錬はホール・エルー法に代表される電気分解なので、地殻内から採掘されるボーキサイトという鉱石からアルミナを抽出し、酸素とアルミに分解する際に何万kw/hもの電力を必要とするので
発電コストの高い日本からはアルミ精錬事業が撤退したという経緯があります。
唯一のメーカー日軽金も設備の老朽化を機会に2014年に精錬事業を撤退したことで、日本は100%アルミを輸入に頼ることになりました。
強度保証の必要ない製品はスクラップなどのリサイクルで再生産すればいいですが、強度保証が不可欠な製品は純度の高いインゴットの状態で輸入して使うので、製造コストも高騰しているという現状でしょう。


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エンジンケースなどのダイキャスト製品は
ADC12という材質が大部分で、これも同じ材質だと思います。

ADC12は金型に高圧の溶湯を注入して成形されますから、空気や不純物も混ざって固まります。
製品外観からは見えませんが
溶接の熱で塞がっていた気泡が膨張して
表面に沸いてきます。

なので溶接ビード付近は気泡が多数確認できます。
気泡の混ざらないダイキャスト法は真空中で溶湯を注入するので設備費が高額になりますので2輪、汎用エンジンでは用いない
です。
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それに対して、アルミフレームやホイールなどのダイキャストに使うAC4Cという材料はT6熱処理するので、溶湯に気泡が入らない鋳造方法を採っています。

溶接ビード削りましたが
やはり気泡が表面に残ります。
しかも、亀裂があった部分ですから
亀裂断面に汚れたオイルが残留しているでしょう。
それらが溶接の熱で噴き出している状態です。
上から肉盛りして気泡を隠すことはできますが、外観がさらに悪くなると思いますので、このままにしておきます。





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ケース合わせ面も欠落していたので
大体平面になるように修正しておきました。
ガスケット挟んで締めるカバーなので
オイル漏れは止まると思います。


クラッチカバーが割れた原因ですが
予想していたのは
キックペダルを踏むときに、何らかの固い物体が挟まって荷重を受けたのだろうと思っていました。
しかし、キックボスが衝突したことが原因でした。
キックペダルが真下まで下がっても、キックボスがカバーに当たることはありません。
オフ車のキックペダルはステップがストッパーになるためカバーに当たることはないですが、この車体に限ってステップ位置が変更されていて
キックペダルのストッパーが無かったという特殊ケースでした。(種明かしされるまでわかりませんでした)

先月のレースでエンジン壊れて、修理のため預かっているCRF150Rについてです。
新品交換のためリストアップした部品が入荷して検品中にわかったことです。
別に鬼の首を取ったように言うつもりはないですが、一人のユーザーとしての憤りを誰でもいいから
伝えたい。
パーツリスト作成する人も部品を包装する人、倉庫から出庫する人、IT化が進む現代であっても最終的には人間の手作業によるところでミスが出てしまうことは避けられないことなのでしょう。
だから、メーカーに恨み言をいう目的ではなく、エンジン修理のてんやわんや人情劇場をお知らせしたい。

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この部品を頼んだ覚えがない。
しかし、見覚えのある部品です。

早速注文書を確認すると、品番は確かに注文しています。
もしや、包装ラベルと中身が間違っているのか。
年配の社員をリストラするため長年経験を積んだ職場から、やりがいの少ない倉庫へ配置換えを命じられる話を聞いたことがあります。
技術職からアルバイトでもできる単純作業を任されたベテラン社員は自分の立場を惨めに感じて退職を願うように仕向けるためです。

だから責任の軽い業務だと思って注意不足になって包装を間違っているのでは?と勘ぐってしまいました。
結論は私の勘違いで、品番と部品は一致しており、大変失礼な考えでありました。

では、この見覚えのあるベアリングが描かれているパーツリスト上の品番を追ってみました。

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注文した部品はトランスミッションの
カウンターシャフト、左ケースに圧入されるベアリングです。

#30の品番は包装ラベルと一致していますので
誤配達の可能性はゼロです。








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ところが問題点が発覚しました。

注文時は最新のパーツリスト(ウェブ上)
ですが、左は2016年のパーツリストです。

#30の品番が上とは違っていますね。

どうやら16年までが正しくて17年以降が
全部誤りになっています。






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この間違っている部品は16年までは
シフトドラム、シフター側のベアリングと
同じ品番であることがわかります。

要するにシフトドラムのベアリングとカウンターシャフトのベアリングが入れ替わって記載されたことになります。

17年モデルでどのような改定があったかは不明ですが、
おそらくパーツリストの作成は、それほど大規模な部署ではやってないと思います。
一人の担当者は複数の機種を掛け持ちで
改定業務に携わり、校正や承認も限られた人員で行われているでしょう。
そういう手作業の中での誤りであったと推測されます。

ここでメーカーに対して保障を求めるとか、説明を聞くとかそういうことではないのです。
現状の把握、部品代総額133000円に及ぶ修理を間違いなく迅速に行うのが私の役目、
注文した部品が全数納品されたこととともに、1個だけベアリングが足らないために、追加発注した部品が入荷するまで組み立て作業が中断していること。
些細なことではありますが、当事者としてはどうしようもないジレンマに陥ります。

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新品クランクケースは、このとおりベアリング無しの状態で入荷します。

全て取り寄せた新品部品で組み立てたいので追加発注した部品を待ちます。










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急ぎの場合は破損したクランクケースから
ベアリングを抜いて再使用すればいいだけなんですが

ドライブスプロケット側のベアリングは
トランスミッションの2軸で一番荷重のかかる部分なので
ここは新品にしておきたいから待機している状況です。

前回の修理方法が不適切だったため、広島まで練習に行って、直ぐ溶接が割れたらしいです。
応急処置で、なんとか走行は可能だったようですが、埼玉へ戻ってきたので再修理します。

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同じ過ちはしない。

破損したマウント部分を金ノコで切り取り
平坦にしました。

ここに削り出しのマウントブラケットを置いて
溶接する方法にします。









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サブフレームを取り付け、作ったマウントブラケットを仮止めして、締め付け面とボルト穴位置を決めます。

メインフレームのダイキャスト、AC4Cに対して、削り出したマウントの材質はA6061
ジュラ鍛に使う材料で強度も高く溶接性はいいです。






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本溶接完了しました。
マウントの肉厚をノーマルより増やしたので
同じような壊れ方はしないでしょう。

丁度、緊急事態宣言のため広島の全日本は延期になりましたので
エイジ・ハードニングに十分な期間が与えられます。


本来ならメーカーに打ち上げて破損の原因を究明していただくところですが
破面解析の証拠が消えてしまったので
調べる手段はありません。
多発性がなければ物不良だったということで
かたずくでしょう。


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九州から戻ってきた車体ですかね。

この画像では何が起こったかは解りません。


リヤ回りの外装は外して、サブフレームは新品を取り付け、
マウント位置の確認をしております。






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これで解りますね。
右上のサブフレーム取り付けのマウントが
ネジ穴の真ん中で割れて欠損しています。

転倒の衝撃でサブフレームは捻じれて
マフラーも曲がっていました。

正しい取り付け位置に修復するために
新品のサブフレームとマフラーを持ってきてもらって合わせながら修理します。

激しい転倒だったと推察されるので、ライダーも相当ダメージを負っていることでしょう。

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7N01の丸棒からネジ穴を作りました。

メインフレームのマウントブラケットは
アルミダイキャスト製法ですから
材質はAC4C相当だと思いますが
AC4Cの素材は売ってないので
溶接性がよい高強度の超々ジュラルミン
7N01を欠損した部分に使用します。








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ブラケットの破断面を平に削ってから
作ったネジを欠損寸法で切り出し
ボルトを入れて取り付け位置を決めます。

ネジ山を溶かさないようにギリギリまでアークで溶かして付けます。









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ダイキャストと7N01の相性はいいですね。
容易く溶け合いました。

AL・Zn・Mg系の7N01はもう一つメリットがあります。
常温時硬性がありますので、溶接直後は材料が軟化しますが、常温で2週間程度経過して元の硬さに戻ります。







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新品のサブフレーム、マフラーは問題なく付きます。

この後、捻じれたサブフレームと曲がったマフラーも正常な位置に直して修理完了です。

必ずしも最良の修理方法かわかりませんが
時間と費用の関係で
最も早く、安価な方法の一例として
もちろん強度的にも不安がないように施工しました。
*修理後の強度確認は転倒時と同じ入力しなければ誰もわかりません。
前回と同じ転倒が起こった場合は同じように破損するはずです。
一番の難関は中が錆びた鉄タンクでした。
事前に内容が分かっていれば着手しない方が無難でした。
どんな状態でも直せるわけではないです。やってみないとわからない部分ですが
運が悪ければ修復不能になってお返しすることになります。

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XT500のタンク

グラフィックから初期型76年式でしょう。

上側は特に問題なさそうに見えますから
再生して使いたい気持ちはわからないでもないですが

45年経過した鉄タンクの中はガソリンタンクの貞を成していなかったです。





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タンク下側の外観は、右側のタンク底に金属パテのようなものを塗りたくってあります。
おそらく腐食で穴が空いて
ガソリン漏れを起こしていたのでしょう。

左側のタンク底は処置されてないですが
複数の穴が認められます。







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ピンホールが数点見えます。
ガソリンが漏れるには十分ですが
右側マウントブラケットの下あたりは
完全に朽ち果て、大きな欠損が見られます。

このまま廃却か、切り取って新しい鉄板で塞ぐか、決断が迫られます。







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怪しい部分は切り取り
新しい鉄板を移植することにします。

しかし、これだけ腐食した鉄板の
ただでさえ薄板なのに
上手く溶接できるか
やってみないとわからないところです。








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このような錆は溶接不可能です。

表面に残った僅かな板厚での接合になりますから
溶接時一瞬で溶けて穴が空くと思うので

慎重に溶接棒で穴あきを止めていくように肉盛りしていく必要があります。







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鉄板の成型と溶接速度が遅いため
二日掛かりで鉄板の移植が終わりました。

欠損したマウントブラケットも取り外し
後で元の位置に溶接します。

水没検査でエア漏れが確認できたので
数回、穴埋めしてエア漏れないようにしました。

これでガソリン漏れは止まるはずです。
溶接ビードは削ってはいけません。
板厚が薄いのでたちまちGAS漏れになります。

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幸い、反対側のマウントブラケットに欠損が無かったため治具で位置決めして
右側マウントブラケットの取り付けを行いました。

フューエルコックの穴も空けて完了です。

これでお引き渡しですが
なるべく早く、タンクコーティングを施工していただきます。

タンクコーティングはガソリンで侵されない塗料のようなもので
ピンホールくらいなら塞がるくらいの塗膜強度があります。

そのあと外側の再塗装を施せば、程度悪いですが実用上問題ないタンクに再生されると思います。















3個中2番目の修理は一番簡単なやつ・・・ではなく厄介な案件でした。
430の弟分444のアルミタンク

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軽い凹みもあるのですが、それは目を瞑って、この部分を綺麗にしてほしいということです。

ウーン、なんでこのようにしてしまったかな。

修理前のダメージがどうであったか想像もつきませんが、中古品としても商品価値が低いですね。

おそらくマウント部分が振動を受けて亀裂が入りGAS漏れをおこしたと考えられます。
そして溶接修理しようとしたがGAS漏れ
が収まらず広範囲に肉盛りしたのでしょう。


切開してアルミ板ごと取り換えたいところですが、修理コスト削減のため余分な肉をサンダーで削り落とすことにしました。

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表面を平滑に研磨しました。
ビード内にピンホールが多数残っていますが、水没検査の結果
表面の気泡なのでタンク内部には貫通してないためGAS漏れはないでしょう。

ではピンホールを溶接で埋めたらいいだろうと思うかもしれませんが
研磨したアルミの内部はゴミだらけで溶けた場所から煤が噴き出す状態なので
これ以上手をつけないことにしました。

元の溶接が失敗だった原因はアルミ表面の汚れを落とさないで上から溶接棒で盛ってしまったことによると考えられます。

ゴミが巻き込んだ状態では溶接棒が溶け合わず欠陥を埋めるために上から被せたという状態です。
溶接にゴミが巻き込んだ場合は中断して欠陥部分を削ってからやり直せば、このようなことにはならないはずです。

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そういうわけで、このタンクはここまでです。

軽度の凹みも我慢すると言われましたので
ガソリンが漏れなければ、修理した跡が分かる程度でいいかと思います。




そして3つ目のタンクが最大の難関なのです。





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444アルミタンク
車体は見ておりませんが70年代後半のCR125Rです。
全体的には良好なので、まだまだ使えそうです。


ニーグリップ部の塗装剥離は溶接時のアースが目的だと思います。

去年お預かりしていたフレデリックさんのアルミタンク、ようやく修理する番がきました。
タンクの凹み修理は直っているのが当たり前の姿なので、出来栄え評価しにくい作業なので
気が乗らなかったのですね。

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大きな凹みではないですが複数のデフォームが認められます。

ビンテージモデルの430用アルミタンクですが、これでは商品価値が低いですね。










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反対側も深くはないですが大きな凹み

溶接ビードを削りアッパー、ロアーを分離しました。

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アッパーハーフの内側からアクセスできるので木槌やドリーで叩き易いくなります。

板金テクニックはほぼ必要ないくらい簡単に叩き均すことができます。

問題は板金修理後に溶接で戻さなければならないので、修復可能な形でアッパー、ロアーの解体を行うことです。






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目視できる凹みは完全に無くなりました。














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溶接全周完了しました。

文章では一行ですがここまで丸一日掛っています。

そのうち板金修理は10分程度ですから
分解組み立ての時間が99%というわけですから、いかに板金部分の評価割合が少ないか理解できるでしょう。






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もちろんガソリン容器ですから、溶接後の水没検査でピンホールがないか確認します。

当たり前ですが空気漏れはありません。
板金修理より溶接品質が重要な部分です。










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外したゴムバンド用のフックも、元の位置に溶接して完了です。

他にも2個のタンク修理頼まれていますので
来週半ばまで板金修理続きます。
3つまとめて幾ら、という契約なので
約束を果たさねばなりません。

今年最初の仕事は去年からの長期滞留車、KX250のチャンバー凹み(潰れ)修理です。

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困りますねー、このようなものが直るわけないじゃないですか。
これをどうにかしようなんて考えはお辞めいただきたい。

では何故、引き受けたかというと、
全日本観戦に行ったとき、知り合いの元国際A級ライダーと遭遇しました。
彼は80年代は名門秀明道場所属で、引退後はスーパーモタードでも活躍した、僕らの現役時代の神様だったのですが
その友人が持っているKX250のチャンバーを直してほしいと頼まれたので
現物見ないで承諾したという経緯でした。

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普通なら無理な修理だからと、お断りするのですが、軽トラに積んで車体ごと持ってこられたので、直せる確信がないまま置いて帰ってもらいました。

そのあと駐車場の明け渡しなどが発生し
車両の置き場に困っていたので
これを優先的にかたずけることにしました。







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途中まで膨らましで形状を戻し、
当然、パイプの向きが変わってしまい
取り付け不可能になっているので

使えないエキパイ部分を切除し
新たなパイプを作って移植する手段にしました。








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見本が原型を留めていないので
推定でパイプのカーブを決めて製作、

そのため車体合わせが絶対必要な修理になります。

大体こんな形状だったであろう、そんなアバウトな感覚で車体合わせして接合しました。
所要時間、丸1日。






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これで元の位置に収まったと思います。
ラバーマウントがちぎれて無くなっているので、純正部品を注文して入荷すれば、
依頼者に電話して作業終了です。

依頼者さんは自動車の板金修理屋なので
塗装は彼にお任せします。







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87年式のKX250は見覚えがあります。
この車体ではないですが

元ジュニアライダースのクレイジー安藤さんが固定の#2ゼッケンつけていたのと同じモデルです。

その年は僕はジュニアで、狭山レーシング時代に練習場でお世話になっていたころを思い出します。







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YouTube見ていたら
1984年全日本モトクロス第7戦山形大会のビデオニュースに私が映っておりました。

ノービス一年目ですがレース内容はさっぱり覚えていません。
チームグリーンの長沼選手がコース脇で倒れて失神しているのを横目でみながらレース走ったことは思い出しました。

尾花沢市の銀山温泉に泊まったことや
事前練習に井本さんのファーゴに
うず潮の中馬選手と僕のマシンとCR3台積んで行ったことなど、走馬灯のように駆け巡ってしまいました。


ワークス・ワンのモトパンにKUDOHの文字、間違いなく僕ですが、なぜスタートシーンでクローズアップされたかは、定かでないです。

最初はメールでの修理問い合わせでした。社外品の修理は原則的にやりません。
それは社外マフラーメーカーの企画で販売されたものが、どのように処理されても私には無関係だからです。とにかく関わらないことが一番です。
しかし生真面目にメールの問い合わせに回答してしまったおかげで、やらなくていいことを引き受けることになってしまいました。

最初に送られてきたメールには、まだ購入してない凹んだエキパイの画像が添付されており、おそらくオークションサイトの出品画像だったと思います。
その時点では依頼者さんも現物を確認してない状態だったと思います。
しかも運の悪いことに、車体持ち込みで修理するエキパイを預かる日に急用で外出しており約束の時間に戻れませんでした。
そういうわけで、凹んだエキパイ現物を確認しないまま工場前に置いて帰られました。(連絡先教えてないから仕方ないね)

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CBR400ですね。作業の妨げになるのでカウルを外しました。

ノーマルのエキパイが露わに、
これはフィッティング作業のため外します。

純正マフラーは三恵技研製、私の知るかぎり国内で1番のマフラーメーカーです。
生産数、塑性加工技術、部品制度
どれをとっても、このメーカー以上のものはないです。
企業間取引しかしないので
一般顧客とは純正パーツしか関わりない会社です。


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これは凹んだエキパイ、
このように大部分に歪が入ったパイプは直りません。
いくら安くても、このようなものを購入してはいけません。

事前に現物確認できればお断りするのですが、車体ごと置いて行かれたのですから
マフラーが装着できれば、目的は果たせるのだろうと思い、
代わりのエキパイを作ることにします。




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スクラップ同然の中古品を購入するくらいですから予算も少ないと予想されます。

同寸の鉄パイプ曲げて
集合部分にフィッティングしました。

3次元曲げはワンピースでは無理なので
3分割で1本になります。
2本で合計6R曲げです。

曲げ角度が微妙で難易度が高かったです。
絶対一発では無理ですね。

まあ取りつけばOKでしょう。


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事前に聞いてない問題が次々発覚。

衝突の影響でミドルパイプのマウントステーは吹っ飛んでいることは聞いていましたが

O2センサーのネジサイズが違っていて
センサー取り付け用のネジを作らねばなりません。

サイレンサーのマウントもノーマル位置とは離れた場所にあるため
マウント用アダプターも必要です。

事故車から取り外したマフラーを売るやつの不親切さが垣間見えますね。

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なぜかセンサーボスのネジサイズが違っていて、変換アダプターがあるかどうかわかりませんが、取り寄せていると時間がないので
ステンレスナットにリタップしたものを溶接しました。








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スチールパイプを潰れたエキパイから
曲げカーブを推測して作りました。

錆止めの耐熱ブラック塗装です。










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ミドルパイプのマウントステー、O2センサーなど取り付け確認。













IMG_0936.JPGサイレンサーマウントはノーマルと70mm穴位置が違っていたので
アダプター作って装着しました。

この商品はどうやって取り付けるかは知りませんが、支給されたものだけで組み上げるために必要な作業でした。





これで年内の物つくりは終了とします。

土地の境界にブロック塀ができたので
地面を埋め戻したら
備品棚の移動に取り掛かり、
片付け終わってすっきりと正月を迎えたいものです。


40年前に製造されたファクトリー・チャンバーなので修復には慎重を記することになりました。
サイレンサー切除した後、テールパイプの向きを元通りにしないと、車体との位置関係が狂ってしまう可能性があることと、鉄板が薄板の上、腐食しているので溶接も健全にできません。
思った以上に難航しました。

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改造されたオリジナルのサイレンサー部分は切断するのですが
2重管のため、中身も外れてしまいます。

テールパイプがセンターになりますので
パイプの向きが元どおりになるように

マーカーでラインを引いておき、切断面は擦り合わせなしで溶接棒で仮止めして
傾きが無きように調節しながらの接合になります。
テールパイプから後ろが新品になります。



IMG_0840.JPG


拵えたサイレンサーの部品

#1の凹みはオリジナルに倣った位置で
チェンジペダルの干渉を避けるものです。

パイプの前後2か所を全周溶接して
パンチングにグラスウール巻いて
エンドキャップはリベット止めにしました。

将来ばらすことは無いと思いますが
メンテナンスできる構造にしておきます。



IMG_0841.JPG


組立て完了しました。

お客さんの指示で錆止めの耐熱ブラック仕上げです。











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完成車は見てないですが
若干のアレンジされている他は、フランス・カワサキ時代の形に似ていると思います。

WPとチャンバー、他に問題があるかわかりませんが、エンジンかかれば実走行も予定しているそうなので
イベントの時に見にいきたいですね。
80年代WGPサウンドが再現されることを期待します。



ウォーターポンプカバーの損傷が激しく修理不可能なので、新造して取り付けることにしました。
KR250は80年ころのワークスマシンなので純正部品というものが存在しないのです。

IMG_0836.JPG

本来は鋳造品なので少量生産なら
ロストワックス製法で作りたいところですが
予算に限りがあると思うので
可能な限り安価な方法を採らせていただきました。

アルミの丸棒を素材に旋盤とフライスで削り出したものです。

要はポンプの機能が回復すればいいだけなので、ケースカバーに取り付きさえすればいいシンプルな設計にしました。

この個体は日本に輸入されてから、この問題でエンジンをかけてないと思われるので
動かすことが先決のことだと聞きましたので。


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ハウジングの部分も素人ながら、このように加工してあります。

ポンプの能力云々を語る以前の問題で
取り換えるパーツがないのですから、仕方ありません。

まあ、これで水は回ると思いますよ。

余談ですが、ポンプシャフトの駆動は2番(後方)のクランク軸から伝達されています。
2番クランクは正転(前回り)してギヤを介して、インペラを上から見て半時計回りに回転させます。
冷却水はラジエター下からポンプ中央に流れ込み、羽根車の遠心力でポンプ外側の出口へ押し上げられ、シリンダーヘッドを冷却してラジエター上部へ上がって、ラジエターコア内を降りてくる。
で、よろしいですね。

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ケースやエルボーも取り付けでき、インペラも問題なく回るので、これは完了です。









明日はチャンバーのサイレンサー部分の改修に取り掛かります。

世間は4連休ですが前半は雨のためどこにも行かず、タイヤ交換台を作ってみました。

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ホイール・ハブセンターにアクスルシャフトを差し込み、ホイールを保持する台です。

タイヤ交換は普通にタイヤレバーを使いますが、ビードに体重を乗せやすいので
床置きで交換するより圧倒的にやり易いです。

150と350でアクスル・シャフトサイズが
全部違うのでシャフト径に合わせたアダプターをセットしてホイールを安定させることができます。

床置きでやると腰が痛くなっていたのですが
これ使うと、腰が楽になりました。
連休後半は天気回復するのでモトクロス練習です。(健康増進)

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もちろん、仕事も進行しています。

W/Pシャフトのインペラを止めるネジが折れているので、シャフトを引張り出せません。

そこで抜き工具を作ってギヤを内側から押し出す方法を採ってみました。









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シャフト抜けました。
オイルシールとベアリングも一緒に抜けています。


これはインペラを止めるネジが根元で折れていたかと思いましたが
違いますね、シャフト先端にM6ネジがあったはずなんですが、中ではなく外側だったようです。

シャフトが硬くて、ネジ穴開けるのが困難でした。


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インペラをネジで固定できました。

次はポンプのハウジング加工すれば完了ですが
ちょっと面倒な加工なので、連休明けに
続きやります。


















この仕事では歴史的マシンに触れる機会があります。
77年から82年までカワサキが世界GP250/350ccクラスに参戦し、K・バリントンやA・マンクがチャンピオン獲得したころのマシン。
今回は5月ころ予約いただいていたチャンバーの部分改修で、順番が来ましたので持ってきていただいた、KR250のチャンバー前後(タンデム・ツインなので)とRケースカバーです。

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お客さんの了承を得て画像載せています。

車体は見てないですが、80年ころフランス・カワサキから世界GPエントリーしたKR250のチャンバー。

製作者は存命らしいですが、高齢のため
こちらに依頼が回ってきました。

フランス・カワサキから払い下げられたKRをプライベートのライダーが所有した間に改造されたテールパイプ部分を
オリジナル同様に戻す改修を行います。

フランスから東京のバイヤーが、このKRを輸入した後、現在のオーナーに渡ってきたと説明をしていただきました。

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実車見てないので、レーサーズVol.42から
車体の確認をします。

画像は神戸の川崎重工ミュージアムにある
展示車両と思われます。

画像からチャンバー形状が同一の物のようです。
ゼッケン1はK・バリントンのチャンピオンマシンですね。

お客さん所有のKRはフランス人ライダー
J・F・バルデが乗った車体らしいです。
バルデはA・マンクと共に活躍し、81年にシリーズランキング2位(チャンピオンはマンク)獲得した選手です。

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ついでに頼まれたウォーターポンプの修理です。

冷却水が入ったまま長期間保管されたためか
インペラがアルミナの堆積物で固着して動かなくなっていたのでした。

オーナーがアルミナを削って、インペラは取り出せたのですが、ハウジングは使用不可能です。




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インペラを固定するボルトは折れてシャフトの中に立て込んでいます。

シャフトを引張りださないと立て込んだネジ穴の修理ができません。

シャフトの抜き工具を作らなければなりません。


奥のギヤはタコメーターのケーブルを差し込むシャフトが入っています。



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ハウジングの損傷が激しいので
削り出しで新造した方が上手くいくと思います。

ちょっと時間の読めない作業なので
来週取り掛かりますが
それまで他の業務はできません。



一つ一つ進行です。















トレールというカテゴリーを築いたヤマハから発売された初期の最大排気量モデルがRT1、360ccです。
大阪万博開催の70年モデルですから、もちろん実車は見たことがありません。
そんな古いモデルのチャンバー修理することになろうとは想像もしてませんでした。
もとい、凹み修理は74年型YZ250Bでエキパイ製作はRT1に着けるDT1用MXチャンバーです。

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すごい複雑な形状のプレスチャンバーです。
(これは74年型YZ250Bとのこと)

跳ね石のせいでしょうか、前面がボコボコに凹んでおりますが
ここを見栄えが悪くないように直すという依頼です。

エキパイがジョイント式になっており
通常の水圧成形は無理な感じなので
切開板金することにします。





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一般部の切断をなるべく避けて
溶接個所を剥離して分解しました。

年式の割には鉄板が腐ってないので
修理に問題なさそうです。










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直すべき凹みは、この二つです。
裏から当て金をするのが容易なので
可能な板金修理です。











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凹みが深く入っていたので完全ではないですが、目立たない程度に直りました。

これ以上叩いても変わらないと思いますので
これを元の位置に溶接します。









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これは溶接後ですが、難易度が高かったです。
パイプの内側にカーボンとオイルが混じったタール状の膜が堆積しており容易に除去できません。

洗浄液で洗いながらワイヤブラシで擦っても殆ど落ちませんので
そのまま溶接するとどうなるか
オイル分が燃えるので、アーク熱でパイプ内側から火炎が出ます。
するとパイプ接合部から燃焼ガスが噴き出してきて、シールドガスを飛ばしてしまうので
溶接が中断されます。
燃焼により酸化物が溶けた鉄に巻き込み
溶接不良になったりするので、火炎が消えるまで度々中断して、健全な鉄板同士の溶接なら10分でできるところを、1時間以上かかって全周溶接です。
それだけでは溶接欠陥だらけなので全部ディスクサンダーで粗削りして再溶接して健全なビードにやり直します。
腐食した鉄板は再生不可、タールが付着したパイプは一旦焼いてから溶接することにします。

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これはRT1の車体に中身空っぽのDT1ダミーエンジンが載せられたものです。

エキパイが切り取られているチャンバーが付いていますが
失われた部分だけを新造するという依頼内容です。







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DT1のエキパイを参考に
パイプを膨らましました。

パイプ径と曲げRを再現したものです。
これを実車に合わせて丁度良い位置で切断して使います。









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ダミーエンジンと切断されたチャンバーに当てがって形状決めたパイプと口元です。

ノーマルは内側にOリング2本入るのですが
差し込んでコーキングだけでよいということなので、排気口に0.1mm隙間の内径に加工してあります。





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溶接組立て完了しました。
エンジンDT1なのでDT1用MXチャンバーになりました。

凹みの板金修理と、部分製作と
二通りの修理方法やってみました。

どちらもイレギュラーな作業なので、最も安価な方法と直し方の洞察力が発揮される場面です。(どうやって直すかの判断を求められているということ)



浅間火山レース時代から勇名を轟かせた、野口種晴さんのショップ、野口モータースで製作されたであろう、当時物のチャンバーをレストアのため、お預かりしておりました。

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このとおり50%以上が腐食で欠損したエキパイ部分。

かろうじて内側R部分が残っているので
パイプの曲げRは推定できます。

全体的に激しく錆びているので
再使用する部分は無く
新しいパイプを新造で復製することを目指します。






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エキパイ部分、見た目は完全コピーできているようですが

車体に取り付くかは分かりませんので
依頼者のTさんに接合は託します。

Tさんは板金職人なので溶接は私より本職だと思います。








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全体的にパイプ部材はできました。
見た目は同じカーブになっています。

面識の無い人に部材の供給はしません。
Tさんの作品はいくつも拝見しているので
確実に完成できることを知っているので
お引き受けしました。

現行新車で買える250ccトレールバイクはホンダCRF250Lとヤマハ・セローだけになってしまいました。
時代の流れで4輪では省燃費や低排ガスなど環境性能を充実させながら自動ブレーキ、自動運転など安全性を持ったクルマ作りが必要だとメーカーが努力する中で
2輪車も交通手段の一員として無視するわけにもいかず、低エミッション、ABS、トラクション・コントロールなどの性能が備わっていないと販売しにくい状況が影響していると思われます。

そこで顧客のニーズに応えるのでなく、メーカーの販売戦略優先の動きで今回、やりたくもない作業をやる破滅になったのであります。


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モトクロスの先輩が新車から乗っている
CRM250R(2型)がツーリング中に
エンジンがロックして停止しました。

先輩がエンジン降ろして
来られたのでクランクケース分解してみると
この通り、クランクウエブのカバーが割れて
破片がケースに噛みこんで止まったようです。

通常ならクランクシャフト新品交換するだけですが、
30年前に生産したバイクですからエンジン部品の大半が純正廃番で購入できません。


ネット通販で中古品捜してクランクシャフト1本だけ見つかったので注文しました。

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CRMは年式によって部品仕様が変わっていることが分からず
注文したクランクシャフトは3型用であることが判明、
シャフト径は同じなので、なんとか流用できないものか

ドライブギヤのカラーも廃番で別の機種で供給されているものを取り寄せハメてみると
シャフト根元からカラー外側端面の距離が
5.6mm長く、そのためOリング溝まで被っていません。

そこでカラー内径の突き当り部分を5.6mm中グリ加工すれば2型のエンジンに使えるという算段ができました。


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カラー加工してクランクケース組み立ててみました。

クラッチギヤとバランサーギヤの位置は
バッチリ問題ありません。

ML3のカラーを加工しただけで
3型のクランクシャフトが2型エンジンに組み付けできました。

あとはRカバーとオイルポンプ取り付ければ
先輩にお返しできるのですが
本人はこのエンジンはほぼ諦めていて
割りと綺麗な車体だけ売却しようと言っていたので、気が変わるかもしれません。

ドリーム店とハトヤでCRFの新車見積もりをしているのでした。
僕は部品代だけもらえれば、どっちでもいいですがね。

部品待ちで製作業務が中断しているうちに別の仕事をやります。
一か月以上預かっている修理依頼のマフラーをそろそろやらねば。

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今日の修理は2件

上はNC30用、カーボンが焼けて穴が空きそうなので、アルミ板で作って取り替える。


下はCBR250用、転倒で削れてしまって
修理不能なので
ステンレスの蓋とパイプをアルミ板で作って取り替える。







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1mm厚の板をφ100で巻いて
内径φ98にハマる蓋を作って組立てました。

φ98は昔作った金型があってので
ステンレス板をプレス成形しました。










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こちらは楕円断面ですが
長さが480mmもあるので
ロールベンダーでも完全に曲がりません。


ハンドワークで楕円形状に曲げて
前後の蓋にをハメた状態で溶接仮止めして成形しました。


パンチングも中で折れていて修復してから
組み立ててあります。



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リベット穴位置も12か所合わせて
組立て確認してあります。

グラスウールは現行のレーサー用を取り寄せて組み立てるので
これらも部品待ちになります。




楕円断面のチャンバーは水圧による修理はできません。
楕円が丸くなろうとして横に広がってしまうためです。

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プレス成形したバリをナメ付けした部分が圧力に耐えられず、水が洩れると思います。

修理依頼はメールに画像添付されたものだったので、断面形状が分からず判断できませんでしたが
現品確認して、無理だとわかったので
切開して板金する旨、お客さんに伝えて
切開することにしました。






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切開は大きな凹み部分だけ切り取り
新しい鉄板を板金して
チャンバーの形状に合わせて
仮止めします。

注意点は
継ぎ目が段差にならないように
接合部の隙間は極力無くす

溶接で鉄板が歪むことを予測しながら
仮止め箇所は多い方が、本溶接がやり易くなるでしょう。



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溶接棒を使って全周溶接します。

表面を少し肉盛りして、サンダーで研磨して
均します。










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耐熱塗料でタッチアップすれば
修理痕は大体わからなくなったでしょう。

全体に腐食していて状態がよくなかったので美装ではなく、機能回復が目的の修理です。











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世間は、もうすぐ10連休らしいですが
ウチは通常どおり業務の予定です。

バックオーダー多数残っていること、
先月畑の整備で10日間帰省したなどの理由で
5月連休は無しの予定です。


そうは言っても
一日くらい伊豆方面にツーリングに行くと思います。





エンジンオーバーホールですが交換する必要ないベアリングがあります。
クラッチレリーズシャフトを支持するベアリングです。

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クラッチカバーの内側に圧入された小さいベアリングなので、動力とは関係なく消耗する部品ではありません。

お客さんが交換用の新品部品を送って来られていた中に、ここのベアリングが入っていたので、問題ない部分ですが交換しておきます。







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ほとんど交換しない部分ですが
特殊工具つかわないと抜き取りは不可能なので、工具作りました。

工場の隅に転がっているφ10の鉄棒を切って使いましたので材料代は推定100円以下です。

M6のタップとM8のダイスで棒の両側にネジ切りしただけなので加工時間15分くらいです。

M6ボルトの頭はφ9に削ってあります。
これでベアリングの奥に引っかけて引き抜く方法です。

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作業時間30秒くらいでベアリング抜き取り完了です。

難易度ゼロでした。











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新しいベアリングを入れるときは
圧入部を下からバックアップして
上から棒を使って打ち込みます。
ベアリングが突き当たる荷重を感じたら必要以上に荷重しない手加減が重要です。

これは10秒くらいで圧入完了です。

オーバーホール総額で決めてますので
特殊工具作成の費用は不要です。







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普段は受注したチャンバーやサイレンサーの製作で粉塵が舞う職場なので
エンジンやサスペンションなどの機械ものを分解するのは時間外ということにしています。

なので夜か休日に分解整備作業ということになります。







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これはCRM250RR用になります。

ラインナップ品CRM250AR、RMX250S、DT200WR、KDX125SRの
チャンバーかサイレンサーを注文順に
順繰り順繰り作っています。

現在お待ちのお客さん16名で、24品作ることになっています。
ようやく去年の9月分に取り掛かったので
1月分まで完成するのは4月ころの予定です。




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去年頼んであったヘルメットのペイントが仕上がってきました。

豹紋が原案より細かく手が入っていて
びっくりしました。

ペイント屋さんの技法が込めてありますのでご鑑賞ください。








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今年のモトクロス用です。
有名ライダーのレプリカヘルメットは無難だと思いますが、
自分の顔だと思うので、デザインに注文を付けて塗っていただくことが
オリジナルペイントの目的でしょう。








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紙に描いた原案に従い
色やラインをアレンジして貰った形です。

「一生ウチのヘルメットを被っていただきたい」
とおっしゃられたので
走りの方も練習して恥ずかしくないようにしないといけないな。


近年流行りの3Dプリンターで金属粉末を積層するとか、金型作ってハイドロフォーミングで成形するなど、高額な設備投資をした工場でないと難しいと思われる形状ですが
どの生産設備も持ち合わせていない弊社がアナログでハンドワーク満載の加工例を紹介します。

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某メーカーのモトクロッサー
ウォーターポンプの出口パイプです。

45度カットしたパイプをロウ付けして90°に曲がったパイプになっていますが

冷却水の流量に損失が多く、冷却性能に影響するらしく、損失の少ないエルボーに変更したいという依頼です。

右の2個はバルジ加工風に作ってみたパイプです。
丸棒に穴を空けて、外周をバルジ形状に切削したパイプを曲げたものです。
極小Rで潰れないように曲げるのがコツです。

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フランジ部分はエンジン側にOリングをセットする段付き加工が必要のため
無垢材からフライス加工しました。

これは2個取りしている場面です。











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削り出したフランジにエルボー差して溶接すれば完成です。

カネは掛かっていませんが手間が掛かりますね。











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エキパイの下に冷却水ホースが通っているため
出口を90°に曲げる必要があるのですが
水の抵抗を抑えるため
ワークスマシンはR曲げになっているらしいです。

オーバーヒートするのでラジエターキャップ開弁圧1.3に変えてあります。
開弁圧1.5にすると冷却水漏れの原因になるということなので注意してください。
ナナハン・ライダー早川光タイプ来た。(劇中のはK1だったかな)

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オーナーのE露さんが高校時代、福岡で
ヤマハHT1に乗ってモトクロスしよったら
デビュー前の光安鉄美に遭ったそうです。

これはK3だそうですが
マフラーがガラン胴でイイ音がするんです。

公道走れるオートバイでは、この音が最高だと多くのヒトが思うでしょう。







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今回の依頼は2番マフラーが腐食と振動で割れてしまっていますが
直して使いたいということ。

中古品も捜したが、どれも似たような物に法外な値段が付けられているそうで、手が出せません。


鉄板が欠損しているので、部分的に作って移植することにします。




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スペアの2番マフラーから形状を測り
鉄板を巻いて欠損部分を作りました。



部妙にカーブしているので目検討で合わせます。
間違ったら取り付かないマフラーになるので
重要な工程です。


HM300が前期型



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車体治具にして溶接仮止めにします。

実は左2本マフラー組み合わせたとき
若干の狂いがあって
フレームのマウントボルト(タンデムステップ共締め)を締めると
マフラー後部の連結が合わず
一回やり直しました。


4本マフラー難しい。




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スペアマフラーと比べながら
睨んでいますが
車体取り付けないとわからないんですよ。


時々マフラーだけ送って修理してほしいと頼まれるのだけど
車体ごと来ないのは全部お断りしてます。
ホント分かんないんですから。




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今度こそOKかな。

新品復元が目的じゃないんで
シルバー耐熱塗装で錆止めです。

よく見えないところなんで、オーナー了承済みです。







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エンジンかけて、排気音聞いて完了です。









これにて年末進行終了です。

どなた様もよいお年を。












ホーリーさんからクリスマスプレゼントが届きました。

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ハスラー250の76年型に
ダウンチャンバー付ける計画があるのですが
ノーマルのキックアームは外側に回らないタイプなので
ダウンチャンバーに当たってしまいます。

そこでハスラーに取り付ける外側に出るキックアームを捜していただいたものです。

スズキ純正部品で検索しましたが、殆ど入手不可になっているので
別機種であってもキックスピンドルに取り付きさえすれば使えるであろうと考えました。



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運よく1本だけキックスピンドルに適合するものがありました。

左がノーマルのキックアーム
右が選びだした一品

高さもノーマルより低いので
ハスラー250のアップチャンバーでも装着できると思います。







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ノーマルのボスがクランプ式なのに対し
アルミのアームはセンターボルト式なので

クランプ式に改造して使います。

抜け止めのサラビスの頭がナメていて
緩まなかったので
クサビで叩いてもダメでした。
ネジが錆ついて緩まない場合は
頭に溶接で突起を持ってモンキーで挟んで回します。
メスネジが熱膨張するので、大概緩みます。



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ボス加工完了

ボロ隠しにシルバー塗装してあります。













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キックスピンドルにとりつきました。

ノーマルチャンバーのヒートガードにアーム先端が触る以外は問題ないようにみえます。

ボスを奥まで差し込むとアルミのキックは厚みがあるため、ケースと擦ってしまいます。
なので、手前に少し出してクランプボルトを締めると問題なく使用できそうです。

これでダウンチャンバー製作の見通しが立ちました。



先月、四国へ帰ったときに讃岐のMさんから頼まれたエキパイ成形です。
ヤマハの最初のトレール、DT1のレーサーを作っておられましたが、エキパイの180°曲げの部分だけ
担当させてただくことになりました。

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これが本物から切り取った見本です。

実用に耐えないことは明らかですが
原型が残っていれば採寸できますので

これを元に作ってみたいと思います。










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本物のパイプは、この通り丸くありません。

そこで、真円パイプに置き換えた寸法を決めることから始めます。

周長を測るということでもいいですが
楕円断面の最大と最小の直径を測り
平均してみました。

目標値φ47






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展開図

2枚合わせてパイプ1本になります。













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外周を折り曲げて突合せ溶接します。

口元に水圧ポンプ用の金具を溶接すれば
膨らまし準備完了です。












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膨らませました。

展開図より曲げ角度がきつくなっています。

実物より若干緩いカーブにする必要があります。










CIMG6673.JPG

曲げカーブは合っていますね。
現物が太いようにみえますが、扁平になっているので、これで同寸です。

経験値がありますので
大体一発でできます。

外径は誤差0.5mmくらいになっています。
実用上問題ない範囲でしょう。









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口金はMさんが加工するので
パイプの成形はこれにて完了です。



作業時間4時間でした。

思い立ったら、その日のうちに出来る時間ですね。
役に立てれば幸いです。

集合マフラーの修理はパイプが歪んで取り付かなくなるので、単体での修理はお引き受けしません。
今回は車体相当の冶具を提供していただいたので特別に修理します。

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全部溶接で密閉された集合マフラーに限り
この方法が可能です。

エンジンが載ったフレームを冶具にしているため、エキパイが歪んで取り付かなくならない方法です。

エキゾーストフランジ4か所はゴムパッキンで密閉されています。







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凹み箇所

2番3番シリンダーのエキパイが凹んでいます。
およそ直径の3分の1くらいの深さで食い込んでいる状態です。










CIMG6621.JPG

今回使う道具はこれです。

マフラーの出口に溶接して使います。

直管なので密閉出来るフタが取り付けられないためです。










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ガス漏れしないように全周溶接して

窒素ガスを13気圧ほど封入します。


溶接した冶具は修理後に切断します。










CIMG6622.JPG

13気圧掛かった状態でバーナーで炙ります。

赤熱したところが柔らかくなって圧力で戻るわけですが
鋭利に食い込んでいますのでハンマーリングして叩き均すようにすることで
パイプが丸く直っています。

このあと取り外して表面研磨して傷を目立たないようにします。






CIMG6666.JPG

マフラーエンド

冶具切断しました。













CIMG6665.JPG

修理箇所研磨しましたが

ハンマー痕多数
なかなか消せません。

ひたすら研磨すれば消えると思いますが
板厚も減ってデフォームのようになるので
ほどほどで止めておきます。








CIMG6667.JPG

完璧とはいえませんが
私のやり方ではこれくらいが限度です。

塗装して、よく見なければわからないくらいには修復できていると思います。


これは特殊なケースなので
どのような修理にも対応できるわけでないので期待しないようにしてください。
(修理不能な相談が多いので他を当たってくださるようお願いします。)


一般的にチタンマフラーは軽いと思われがちです。
実際はちょっと違うと思います。板厚が同じならアルミマフラーの方が軽いはずです。
その理由は比重を見れば一目瞭然です。
比重(同じ体積で水を1として比較した重量)
Fe 7.8
Ti 4.5
AL 2.7
Mg 1.74

チタンは鉄とアルミの中間なので、同じ大きさのマフラーならアルミの方が軽いはずです。
それから見落としがちなのはグラスウールの重量です。
容積の大きいマフラーほどグラスウールの量が多いですから、外側の金属が軽くても
グラスウールの量が多かったり、湿っていたりすると重量が増えるわけです。
ではチタンのメリットは何かというと、アルミより硬いということです。
同じ荷重で変形する度合いがチタンの方が少ないでしょう。

しかし、クラッシュして直接荷重を受けて凹まないわけではないので
今回の修理品のように最初は横からの荷重で歪みが入っただけだと思われますが
エンジン回転と同じ周波数で振動する板に歪みが入った部分が加工硬化して
応力集中して亀裂に至ったという経緯です。

CIMG6449.JPG

亀裂がクモの巣状に進展してしまって
板金修理は不可能な状態でした。

これ以上亀裂進展しないように
外側にチタン板を当てて溶接しました。
ツインウォールの部分は強度アップされています。

しかし溶接時の熱歪みで内側と外側の板が離れようとして隙間が開いてくるので
溶接は均一にはできませんでした。
隙間が開きそうになると溶接棒を入れて
埋めていかなくてはならないからです。

買う時は高価なマフラーだったと思いますが
凹まして亀裂が入るようになったら
諦めて新しいのに換えることをお勧めします。
持ち主には今度割れたら、アルミで巻いて作ると伝えておきました。


CIMG6451.JPG

今月2本目のCRM250チャンバー

ARじゃなくて初期型でした。
初期型はラインナップしてないので
車体お持ち込みいただいて
ワンオフ製作です。










CIMG6454.JPG
車体合わせ手間はかかりますが
取り回し確認できて安心です。

確実に取り付け保証できますからね。

CRMも純正部品廃番になっていて
オーバーホールも難しくなっています。

下側のラバーマウントステーも廃番で
入手不可なんですが
ラバーが8割剥がれてマウント不能になっていたので
ラバーの中心を貫通ボルトで固定して
再使用しました。
いずれマウントステーも作るようです。

溜った残務を終わらせないと、新たな仕事にかかれません。必死でやってます。

CIMG6215.JPG
腐って鉄板に大きな穴が開いている
CL50マフラーです。

このようになったら普通は修理しません。
捨ててください!

ところが20年来の知人から紹介されたということで、修復を頼まれました。
(顔知ってるくらいじゃダメじゃよ)

一応、捨てたらどうかと進言したら
どうしても使いたい、形にはこだわらないから使えるようになればいい。

このように言われるので渋々うけました。
しかも、予算はいくらか?
これは安い方がいい、年金暮らしなんで新しいの買うつもりもない。
こういうわけですよ。そりゃうち以外でやってくれる業者さんは見つからないかもしれません。

CIMG6238.JPG

金はかけられませんから
金型作ってプレス成形など無理です。

ハンドワークで取り替える部分の板金部品を作りました。

表と裏で若干違う寸法ですので
2種類の部品になっています。








CIMG6240.JPG

切断して内部構造も確認できましたので
同様の寸法で復元してあります。














CIMG6241.JPG

直したとこが長持ちするように
開いているうちに錆止めの耐熱塗装を施しておきます。













CIMG6243.JPG

左右の板金部品を合わせて溶接し、
修理品と結合しました。

これで実用上は純正相当でしょう。

錆落としや耐熱塗装はお客さんが自分でやりたいそうなので
このままで修理完了です。








CIMG6244.JPG

ご希望通り、インナーバッフルは抜けるようにしてあります。

腐ったマフラーではバッフル脱着不可能でしたので。

工作時間は1日かかりましたので1万円くらいはもらいたいです。





一件落着
今日の残業はコレです。
もうすぐ全日本MX開幕ですから、凹んだエキパイの修理も日程が決まっています。

日常的にやらない修理なので記録に残しておかないと

CIMG6129.JPG

2017CRF450のエキパイ社外品です。

早くも凹ませていますが
このまま使うことはできませんね。


直しましょう。









CIMG6133.JPG

修理後の状態です。

傷は残りましたが、性能は完全に回復しているでしょう。





修理方法はパイプの開口部(3か所)を塞いで、窒素で加圧します。(およそ10気圧)
直したい部分をアセチレンバーナーで炙って赤熱します。
凸部を板金ハンマーで叩いて均すようにして形を整えると丸く戻ってきます。

CIMG6130.JPG

密閉する治具が引っかかるように
ストッパーリングを溶接しておく必要があります。

また直すこともあるので、このまま付けておくとよいでしょう。










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修理作業は3分ほどで終わりですが

蓋を3か所作らなければできませんので
一日掛かりになってしまいました。

修理代ようけもらわんと合いませんね。










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180度曲げのパイプの凹みを直した場合
カーブが10mmほど広がってしまうことがあるのですが
そのときは曲げ戻せば、取り付けに問題ないですが

今回のは1mm以内の歪みだったので
このまま修正なしで取り付くでしょう。

13年ぶりに車体合わせで製作したRMXチャンバーを治具に取り付けてレイアウト確認した後、
治具更新して新造しました。

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RMX250Sチャンバー

今回はサイレンサーもセットです。

価格25700円と12300円(税込み)
送料(本州)1000円

ラインナップ品なので受注生産できます。








RZV500チャンバーのフロントバンク右側の修理状況です。

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社外品マフラーの修理依頼はお断りしております。

他メーカーのやるべきアフターサービスを弊社でやってあげる理由はないからです。
直すところが無ければ諦めてください。

不慮の事故で大事なマシンに傷がついて、なんとか修復をしたいとお考えの人が、インターネットで検索されて弊社に問合せされてくると思いますが
どんな場合でもうまく直せるわけではありません。
殆どのお問合せは「修理の可否」と
「修理の金額」を問うてこられます。
凹み修理は滅多にやらないので規定の料金や確立された修理方法もありません。
現品を確認しない限りわからないというのが正直なところです。
私はメーカー寄りの考え方なので、
自分で直せる人以外は古いクルマを維持し続ける努力をするより
新製品が常に生産されているのですから
新しいのに買い替えるのが現実的です。


大した凹みではないですが、異形断面なので水圧成形は不可能です。
形が変わってしまいますからね。

水圧成形は真円パイプのみ使用可能な方法です。

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二重構造なので切開板金も不可能です。

裏側から叩けない以上は引張るしかありません。

棒を溶接して引張りだしますが

擦り傷が消えるわけではありません。








CIMG5894.JPG

もちろん一回で元に戻ることはありません。

画像は2回目の引っ張りですが

微妙な凹みが散らばっていて
5か所くらい引張り出しました。

溶接痕はグラインダーで研磨して消すのですが
擦り傷が消えるまで研磨すると
板厚が無くなってしまうので
削ることはできません。




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普通の修理ではやらない方法ですが
エンジン内部の肉盛り等に使うデブコンで
擦り傷を埋めて、サンドペーパーで面出ししました。
完全硬化するとアルミ材程度の硬さで
耐熱温度1000℃だそうなので
排気熱くらいは問題ないでしょう。

板金パテでは剥がれてしまうと思います。







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本来、剥離して再塗装が理想ですが

お客さんが自分で塗装すると言われるので
耐熱塗料だけ吹いておきました。

艶消しなのでノーマル色にこだわるなら
板金塗装工場に依頼されるといいでしょう。












先週、軽井沢でクラブマンMXが開催されて、そのとき追突されて凹んでしまったマフラーを預かってきました。
カワサキのマフラーはエンドカバーだけ部品で取り替えられないそうで、サイレンサーボディ・COMPしか購入できないらしいです。
なんとかエンドカバーの部分だけ直したいと思うのは当然ですが、袋構造になっていて板金修理は困難です。

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中のパイプも溶接されて2重になっているため解体するのも厄介です。

こういう場合の直し方の1例を示しましょう。











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まずは凹んだ部分を切り取ります。

中身が露わになっていますね。

エンドキャップもサブチャンバーの役目をしているようです。










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新に鉄板を成形して溶接します。


なるべく元の板と段差が無いように付けるのがコツです。











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溶接痕を消すように研磨します。

パテ盛りではない証拠を表しています。












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マスキングしてエンドカバーだけ塗装すれば出来上がりです。

ほとんど修理痕は分からなくできましたね。

作業時間1時間くらいです。

板金修理って出来て当たり前のように思われていて、少しでも粗が見えるとマイナス評価されてしまう割りに合わない仕事だと思うのですが、どうでしょう?

凹んだエキパイほどカッコ悪いものはない。

先週末、軽井沢MPへ練習にいきましたが石の多いコースなので
跳ね石をエキパイにヒットさせてしまいました。

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尖った石が食い込んだ跡があります。

この手の凹みは直りにくいですが
このまま放置していては次々に石が当たって原型を留めなくなってしまう恐れがあるので早速直したいです。









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何年か前に作っておいた450用エキパイ治具がありましたので

作業時間は数分で終了です。











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窒素で加圧しながらアセチレンバーナーで炙ります。

食い込んだ跡は消えませんが凹みは大体直ったと思います。










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同じ過ちを繰り返すのはアホのやることです。対策を講じなければなりません。

石が当たって困る場所にはプロテクターを付けることにします。

φ45 2mm厚のアルミ6063パイプを
エキパイのカーブに併せて曲げます。

これを半分に切開してエキパイガードを作ります。



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これで跳ね石対策エキパイガードの完成です。

高額なチタンパイプですから安々と捨てるわけにはいきませんからね。

凹み修理も無駄な時間なので、やらんでいいに越したことはないです。

以上。

先日作ったエキパイがワンレースで凹んでしまいました。
いくら手間がかかっていようが、高額であろうが、潰すときは一発です。
程度によりますが、凹んだまま使っていては、本来の性能が出ないんじゃないか
またぶつけたらもっと酷いことになるんじゃないか心配しますね。

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転倒はしてないですが
他車と接触したんでしょう。

これくらいの凹みは簡単に直ると思います。











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やり方は示しますが、社外のエキパイ修理を頼むことはご遠慮ください。


エキパイの前後を治具で密閉します。

片側には窒素ガスを封入するバルブを付けてあります。

酸素でも出来ると思いますが、火炎で赤熱するときに酸化して材料が脆くなることを防ぐ目的です。




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スリ傷は残りますが、凹みは完全に修復できました。

炙りすぎると外側が酸化してしまうので
必要以上に加熱しないことがコツです。

難しい技術は特にありません。
高校の機械科以上の経験があれば誰でもできると思いますので、どうぞやってみてください。

先日、元無限ファクトリーライダーの伊田さんから、本物の無限チャンバーの研磨を頼まれました。

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サイクルサウンズ誌に載ったこのときのマシンです。
85年全日本選手権、国際A級125ccクラス
開幕から4ヒート連続優勝。
鮮明に覚えています。
その後無限からプレゼントされたME125は伊田さんの下に、そして東希和レーシングの先輩、岸さんの店(ラフ&ロード)で展示されて20余年の月日が流れ、持ち主のところへ帰ってきました。

その歴史に残るマシンから外されたチャンバーなので丁重に扱わせていただきます。

私のモトクロス人生において当時の国際A級ライダー(全日本ランキング上位5名昇格時代の)は神様と同じ、しかもチャンピオンからの依頼ですから「俺は研磨屋じゃないよ」なんて言える立場ではありません。
「へへー、承りまして仕りまする」という具合に研磨屋に持ち運ぶ役を仰せつかりました。

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まずさび落としに高品質なウエットブラストしてもらおうとしましたら
大きすぎて機械にはいらないと言われ、やむを得ずサンドブラスト頼みました。











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仕上がってきた状態です。

完全に錆が落ちていますが、光沢はありませんので、手仕上げすることにします。












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おっとー、腐食により穴が開いています。

これは溶接で塞いでから研磨します。












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全体をサンドペーパーで擦って艶出ししました。

今回はバフはかけません。
レーサーなのでこれくらいの仕上げが本物らしいと思います。

放っておくと錆びてしまうので、耐熱クリアーを吹かせていただきます。







サンドブラストなら知り合いでいくつか出来るところあるんですが、わざわざ八潮まで持っていってやってもらったのは、もう一つの目的がありました。

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これを見せてもらう用事でした。
去年の旧車天国に展示されたのは知っておりましたが実車は見ておりませんでしたので。

80年にジョニー・OがUSGP125ccクラスにスポット参戦して優勝したマシンのレプリカです。

本物は関東某所で見たことありますが、これは本物より綺麗です。
もっとも本物はジョニー・Oが乗って痛んでいるわけですから、当たり前ですが。

じつはこの車両のレストア前の姿も見ていましたから、変貌ぶりは精巧なフィギュアと言いましょうか、もちろん動くわけですから限りなく本物に近いでしょう。

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一般公開されているわけでなく、ここへ来ないと見ることはできないですが
「走る予定は?」と聞きましたら、
「土を付けたくない」ということです。

乗りもしないものにお金を掛けられる、最高の贅沢じゃないですか。
しかも、限られた人しか見れない監禁状態ですから、うらやましい限りです。

オートバイの楽しみは乗るだけじゃないことも理解できます。
コレクションホールのように歴史に残る車両がいつでも動く状態で保管されていることに目的があるのだと思います。

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古いだけの車両はたくさんあると思いますが、ほとんどがスクラップ状態で、いつかゴミになっていく運命です。

何十台も所有している人もおられますが、家族や親戚はその価値も分からないので、持ち主が死んでしまったら
同様にゴミになっていくでしょう。

そこで、このようにキチンと仕上げた車両であれば、誰かの下に渡って生き続けることができる。
歴史を継承する役割であると、私は思っています。




なかなかエンジンかけさせてくれないヴィンテージマシン。
アルミタンクに取り替えたのですが、燃料コックに問題が発生しました。
タンクにガソリンを入れた途端、コックがOFFにも関わらずガソリンが漏れ始めました。

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正面のプレートはリベットで固定されていますので
リベット切除して分解しますが
再組立ては不可能になります。

本来、新品にASSY交換するべき部分ですが部品入手が難しいので
修理することにしました。

GAS漏れの原因はゴムパッキンのヘタリと硬化です。
4つ穴が開いた円形のパッキンですが
上がリザーブ、下がONの通路で
右が出口に繋がり、左は回り止めです。

新にゴム板からパッキンを切り出し装着しました。
リベット止めのところをφ2.2mmで貫通させ、M2.6のネジ止めに変更しましたので再組立てできました。
ガソリン漏れはエンジン始動不良だけでなく引火して火災を引き起こすため、直しておく必要があります。
もう一つ不具合があって、ガス漏れするのにONにしても出口からガソリンが出てきません。
これではエンジン始動するはずがありません。

パーツクリーナーを通路に吹いてみると導通がありません。途中にゴミが詰まっているようです。
エアブローしてみると豆鉄砲のように固形物が飛び出して貫通しました。
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これで燃料コック復活です。

ガソリン入れてON、OFF動作確認、

リザーブは必要ないので
リザーブパイプは短くカットしてあります。

普通は故障しない部分ですが
40年も経過すると、思いがけないトラブルに見舞われるものです。





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今度はあっさりとエンジンかかりました。

良い圧縮、良い火花、良いガソリン
エンジン始動の3条件ですね。


カッコええのー  RMは!
これは記録的な損傷です。(本体は不思議に大丈夫です。)

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KX250F用のアクラポビッチです。

社外のマフラーは修理しない方針ですが
これは事情があって承諾しました。


ジョイントパイプ部を切断して
新たに作って交換します。

φ48.6チタンパイプは定尺4Mで
33000円しますので無駄にすると大変な損失になります。



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パイプは手曲げで行います。

ベンダーが無いだけなんですが
熟練の技が必要です。











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お預かりしている車体に合わせて
フィッティングです。

大体狙いどおりのカーブにできました。

TIGで仮止めしてから本溶接します。










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ジョイントパイプ完成。

マウントブラケットは元のパイプから取り外して
溶接すれば早いかもしれません。












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ミドルマウントBRKT、外してみましたが
フィッティングがイマイチ良くないので
オリジナルプレートで作りました。

これにてアクラポビッチジョイントパイプ修理完了。

「タンクはオートバイの顔だ」などと言っている奴が凹んだままのタンクを使っていたのでは信念に反する。
というわけで、チェッカーズのシマダさんからPV50チャンバー代金の代わりに頂いた3型RM125のアルミタンクを直すことにします。

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マジックで囲んだ部分が凹みです。















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目立つ凹みは3か所確認できます。

これらを、塗装する前に修理します。













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今回はこんな道具を作ってやってみます。

アルミ板にM8のネジ付きカラーを溶接し
鉄の棒をネジ込み引っ張るつもりです。












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凹み箇所にアルミ板を溶接して
バーナーで炙りながら引っ張ります。

かなり板厚が薄いらしく、
あっさり板が割れてしまいました。

こりゃあ余計な修復作業になったぞい。
やめときゃよかったな。
と後悔先に立たず。







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溶接しては削って均すを何度か繰り返し
メチャメチャな肌になってしまいました。

自分のだからいいけど、こんなに下手な修理では人のやつはできませんね。











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これ以上やっても綺麗になる気がしませんので
これくらいで止めておきます。

仕上がりは塗装屋さんに委ねたいと思います。

塗装はフラワーオートさんに頼みます。


社外マフラーの修理はいたしません。その理由は
それは他社の企画による商品だからです。
10万円を越す高額な商品にも関わらず、交換部品の販売や修理サービスの対応をしないということは
その会社の企画の一部ですから、社外品の顧客が希望するサービスを、関わりのない
弊社で受け持つということが必要のないことなのです。
ジャペックスのようにガエルネブーツの損傷においては顧客の注文に応じて修理サービスを行って、同社の製品を長く愛用していただくようにしている例もあります。
競技用車両ですから、耐久的に消耗するだけでなく一発の衝撃によって使用不能になることもあるわけですからメーカーの方で対応してもらうべきです。

しかしながら、今回の修理はお断りできない人物からの依頼ですから半強制的に実施することにしました。

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イゴール・アクラポビッチさんのCRF250マフラーです。

左マフラーが大きく凹んでいますが
ジョイントパイプが潰れ、マフラー内側がタイヤに擦ってしまうくらい変形していました。

その場合はサブフレームも歪んでいるはずなのでマフラーだけ直しても曲がって取り付いてしまうことをお伝えしたら、新品のサブフレームに仮組みして持ってきていただきました。



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これは潰れたジョイントパイプの修理後の画像です。
エキパイのように密閉して膨らますことはできませんので
切断してハンマーで叩いて丸めてから再溶接する方法を取りました。

これでパイプの向きは正常に修正されました。






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サイレンサースリーブを板金修理するため分解しました。

内部の寸法が私のオリジナルマフラーと偶然同じであることから、メーカーさんも同じようなことを考えているのだなと思いました。









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スリーブ叩き直して、見た目問題なくできました。

これで当分は使い続けられるでしょう。










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新品のサブフレームに取り付けて左右の整列も確認しました。

以前スコーピオンというブランド名だった同社は商標の問題でオーナー名に社名変更して業績を伸ばし、現在では従業員数450名という、マフラーメーカーとしては大企業になりました。

では日本で最大のマフラーメーカーとしては
私の知る限りでは三恵技研ですね。
三恵といってもリプレイスマフラーは作ってないので馴染みがないように思いますが
ホンダの2輪4輪全車種のマフラーを製造し標準装着されていますので、ホンダ車の全てのユーザーが三恵製マフラーを使用した経験があるということです。
アフターのマフラーは純正マフラーをベースに材質や寸法の変更を行っているので純正マフラーはマスター品という位置付けになるといえます。
ウエットカーボンなので高温に耐えられないことはご了承済みと思いますが
お客さんと協議の上、損傷した時点でカーボンパイプを交換するという前提でのサイレンサーです。
ワークスレーサーのようなドライカーボンを使用すれば耐久性は格段に向上すると思いますが
以前、別の機種でドライカーボンの見積もりを取ってみたところ、サイレンサーの材料代だけで
本体価格の10倍以上が必要と分かりましたので断念した経緯がありました。

ですから、これはあくまでカーボンファイバールックの樹脂パイプと捉えていただきたいと存じます。

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KX65なので子供さんのモトクロスに使用されているものでしょう。
半年くらいでメンテナンスのため送られてきました。

案の定、熱で溶けて、サイドカバーの縁が食い込んで穴があいています。

リベット穴も緩んで、アルミキャップに動揺がみられます。
このまま使用続けると確実に破損してしまうので丁度良い時期だと思います。




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弊社商品なので格安の千円で交換しますが、2台で36箇所のリベット穴位置を合わせて空け直して組み立てるのに半日費やします。

排気ガスが樹脂パイプに直接当たらないように内壁にガスケット材を仕込んでおきました。
しかし、リベット穴の磨耗は対策不能なので
定期的にメンテナンスするしかありません。





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ハイ、フレッシュなカーボンパイプに直りました。
リベットも新規カシメなので、パイプの動揺はもちろんありません。

これも、他人と違った方式を貫くための涙ぐましい努力です。








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ついでにチャンバーの凹み修理も依頼されましたが、全体の歪みに加え
凹みの大きさよりも、鉄板の伸び具合が修理の可否を左右します。

このようにエキパイ外径の小さい場合は圧力で直すとき荷重を受ける面積が少ないため殆ど戻りません。

窒素封入してバーナーで炙る手法もありますが、専用治具を作る気力が無くて
切開して叩き出すことにしました。



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鉄板の歪みが大きくて、元通りというわけにはいきませんでした。

大変見苦しい修理痕でありますが、再使用に不都合はないと思いますのでお許しいたいとう存じます。

全日本MX会場でマフラーお預かりしてきました。

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YZ250F後方排気用です。

パイプエンドが凹んでいます。
中身にダメージはありませんが
このまま使用するのは格好悪いですね。

取り外して交換すればいいのですが
この際ですからデザイン変更してみましょう。






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先ずは全バラ検証。

なるほどー、よく分かりました。

新型なんでしっかりとした作り込みですね。
金型代が相当かかってそうなので
しばらくモデルチェンジしないでしょう。

以前のYZマフラーに比べると内径が大きくなっていてパワーが出そうです。





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パイプエンドをテーパーコーン状に作りました。

パイプの内径はノーマルと同寸ですが
長さが伸びていますので、音量に対するマージンが上がっていると思います。

材質はオールステンレスで強度も充分でしょう。





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サイレンサーの断面が異形なオーバルなので嵌めあい寸法を守るために
サイレンサー現品を預かって現物合わせする必要がありますので
パイプエンド単品のご注文はお引き受けできません。

費用はパイプエンド製作1万円
サイレンサー分解、再組み立て4千円
ステンレスリベット50円×8本
グラスウールヤマハ純正部品
送料(本州)1000円
代引き料400円

以上が費用明細となります。

飛び込みの修理は受け付けておりません。それは長期間お待ちいただいている仕事に専念するためです。それと同時に、エンジン修理などはここでなくても直せる業者さんは多数あると思います。
そういうわけで、修理依頼は他の手段をお勧めすることにしています。

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今回は知り合いの頼みなので、バイク屋へ行ってくれ、というのも角が立ちますから
先ずは状態を確認するために、お預かりしました。

KDX220SRですが、症状はピストンが割れてしまったのは分かっていて

どうやらクランク室に穴が空いているので
塞いでほしいということです。


仕事終了後にクランクケースをばらして洗浄します。


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Rケースですが貫通して大きな穴が空いています。

予想した最悪の場所の欠損です。

溶接肉盛りしたあとケース合わせ面を正確に擦り合わせなくては使えません。








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Lケースも欠損まで行ってませんが、荷重でずれていることが確認できます。

全体的にオーバーホールの時期だと思いますが、あまり金を掛けたくはないと思います。

また、こういう物を直して使い続けることより
新しいマシンに投資していただいた方が
オーナーさんのためだと、個人的には思っていますが、そのへんの判断は私が決めることではないです。




翌日、オーナーさんに破損状態を確認してもらって修理することで合意しました。

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大きな欠損のあったR側ケースの穴は
ピックアップした破片を溶接しました。














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亀裂のあったL側ケースは溶接にて肉盛り

デブコンで埋めるという案がありましたが強度保証できない理由で却下しました。

可能な限り母材に近い修復を試みるのが正統なやり方と思うのです。

肉盛りは最小限度にケース合わせ面より
少し高めにするのがコツです。

後の面出しの手間を掛けないためです。



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クランク室側はエアグラインダーで
均します。

ケース合わせ面はオイルストーンで
面研します。

面出し完了の目安は、凸凹がある状態では
オイルストーンが滑り安定しませんが
急に摩擦抵抗が出る瞬間があります。
そのときが平面度が上がった状態です。





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面研完了したらRLケースを合わせて
ボルト締めします。
修正部分が浸るように熱湯を注ぎ
気密漏れがないか確認します。

何故熱湯か?
ダイキャストの溶接はピンホールが出来易いので、冷間で塞がっているピンホールも熱膨張すると漏れる可能性があるので
熱湯で膨張させてみると完全にわかります。

漏れると再研磨になりますが、これは全く水漏れなしで合格でした。

後は交換部品が入荷したら組み立てるだけです。

オーナーさんから、「組み立てまでやって幾らだ?」と聞かれたので
知り合いだから「5千円くらいでどうですか?」といいましたら(部品代別途)
「それは駄目だ、もっと取ってくれ」とおっしゃるので、1万円くらいにします。
低品質の修理に飛び込みとはいえ、高額を請求するつもりはありませんので快諾ですね。



全然気が乗らない社外サイレンサーの修理ですが、3ヶ月も放置してしまって、今こそやる時がきました。
転倒のためか傷モンになったカーボンパイプをアルミに交換するだけの依頼だったのですが
損傷がフロントキャップに及んでいることが判り、一気に工数が上がってしまうため、優先順位から後回しになっていたのでした。

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カーボンパイプと同寸でアルミ板を巻いておきます。












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損傷していたフロントキャップも鉄板巻いて
溶接で修復しておきます。

リベット穴はアルミ筒を差し込んでから同時加工で
穴開けします。








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アルミパイプの溶接にはこれをつかいます。

パイプの内側にシールドガスの通路となるトンネルを取り付けて

表から突き合わせ溶接します。

裏ビードを酸化させないで健全な溶け込みを得られます。





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使い方はこんな感じです。

シールドガスは垂れ流しですが、流量を手元のバルブで調節して溶接作業します。

薄板の場合は裏側が酸化して溶接欠陥になりやすいので、溶接強度と作業性が向上します。







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アルミパイプにリプレイス完了しました。

頼まれたのは筒の交換だけですが
それ以外のことに労力が掛かる事例でした。
最大の難関はカーボンパイプの取り外しで、
前後キャップがパンチングと一体のため
パイプが抜ける力でパンチングが壊れていくという代物でした。

たぶん、安価にメンテナンスしようとするお客が、まともに分解できずに壊してしまうのが狙いかもしれません。
そうすれば、また新しいのが売れるかも(信頼を損ねるだけですが)しれないことを期待しての作りだと推察します。
とにかく人がいらなくなった中古品に手をだしていると、余計な金や労力が掛かるということです。

弊社は2輪販売店ではありませんし、エンジンチューニング屋でもありません。
エンジン整備について学校で習ったこともなければ、会社でエンジン組み立てする部署にも所属しておりませんでした。
そのため、整備方法が説明されたサービスマニュアルとは全く違った方法を用いることがあります。
マニュアルには一部の最小限度の説明が記載されていますが、細かな注意や手加減によって機械部品の組みあがり状態に差が出てくることの説明がありません。
あくまで自分の洞察力、機械の状態を目で見て判断し、手作業の感覚を頼りに作業します。

専用工具もマニュアルのように全ての工程でそろえていたら、1万円の工賃に対して10万円くらい工具代かけることになりますので、販売店のように頻繁にOH作業が無ければ利益を出すのは無理です。
そのため、良く使う専用工具は純正品を購入したり、自作工具を作って持っていますが、それ以外はハンドワークで分解します。

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たとえば、負荷の大きい高回転部分にはラジアルボールベアリングが使われていますが
圧入でケースを傷めないために、ストーブの上で温めて抜きます。
殆どがベアリングの自重で落ちますが
ガバナーのベアリングとウォーターポンプのシャフトのベアリングが落ちなかったりします。

(クランクシールが取り付いていません。再度暖めてベアリング入れ直します。
クランクシールのストッパーがケース外側にありますので先に内側からシール圧入しないとベアリング付けられない構造です。)

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これはLケースのメインシャフトを受けるベアリングですが、奥が突き当たりになっています。
引っ張って抜くしかありませんが、ニードルベアリングなのでインナーカラーがありません。
専用工具で上手く抜けるのか知りませんけど、ハンドワークで抜きたいとおもいます。

抜いたベアリングは再使用しない前提なので交換部品が確認できた時に限り外します。



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これは禁じ手です。
溶接に自信が無い人はケースにスパークなどさせて修正できなくなりますので、やめたほうがいいでしょう。

ボルトの頭をベアリングのサイズに加工して溶接します。
あとは自作のクランクシャフトインストーラーで抜くだけです。
ボルトは汎用ボルトを100個単位で購入していますので、材料代は100円未満でしょう。
専用のベアリングプーラー購入する理由が無いですね。


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抜くときはあっさりです。なんの苦労もありません。

しつこいようですが、新品の交換ベアリングを確認した場合に限ります。

圧入は再度ケースを暖め、自重で落とし込みますので、プレス機は必要ないですね。

一応組んでしまうと見えなくなる場所なので作業内容示しておきました。



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クランク組み立ては(株)井上ボーリングさんに依頼しました。
弊社は内燃機加工も外注ですが、設備、経験ともに頼んだ方が圧倒的に安価に済みます。
部品の運搬は実費で掛かりますので1往復あたり1000円いただきます。
外注費はマージン無し(ようするに利益はありません)なので
クランク組み立てだけ頼む人は、お断りしておきます。
ご自分で運搬するか、宅配便をご利用ください。

クランクウエブが錆びておりましたので研磨してあります。
新しいのは気持ちいいですね!

時間がありませんので、こういう残業は歓迎できません。
知り合いのオートバイ屋さんから頼まれたので仕方なくやりました。
時間がないだけでなく、社外のアフターパーツと思われますので、自社オリジナル品を長期間待っていただいているのに先に加工できる道理がありません。
そういうわけで残業ということにしました。
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ダイキャスト製のスタビライザーですね。
35年くらい経過したものでしょうか。

画像は既に加工完了したものです。

どこを加工したかといいますと








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ボルト穴の近くに亀裂が見えます。
皮一枚でつながっています。

アルミ合金ですから大気中で劣化したわけではないでしょう。

80年ころの大型バイクはフロントフォークが細く、ハンドル周りに剛性がありません。
スタビライザーでボトムケースを連結することでフォークの捩れを防止できますが
そのためにスタビライザーに応力がかかっていたことでしょう。
従って金属疲労が原因だと考えられます。
金属疲労は事故で過大な荷重が掛かった場合を除き、大半は設計不良です。
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問題のクランプ部分だけを新造したわけです。
ダイキャスト品の形状を模倣するには
3次元測定により外形をデータ化してCNC加工機で製作するのが今風だと思いますが
この部品1個だけ作ると莫大な費用がかかるでしょう。

そこで汎用の旋盤とフライスだけで丸棒から削りだします。
ダイキャストのプロフィールのように丸みを帯びた形状はできません。
平面と円弧を繋いだ形状にデザインし直しです。

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切断した端材から丸棒であったことがわかるでしょう。

切り粉と合わせて8割はスクラップになります。
加工時間は10時間程度です。
いくら請求するかわかりませんが
時給で換算すると平均的なサラリーマンの2割くらいしかもらわないでしょう。

「断わればいい」とか「もっと値上げしろ」とか声が聞こえてきそうですが、人間関係はそんな簡単にいかないものです。

CIMG3724.JPG

78年型のフロントフォーク
アウターチューブのクリア塗装が剥がれ、腐食と汚れで見栄えが悪かったので、磨きました。

上が未処理、下が磨き後です。
サンドペーパーで一皮剥いて、ナイロンたわしで数分磨けばこのとおり。





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今日は工場の温度計が40°Cを指していました。
実はこの季節を待っていたのです。
CJ360(76年型)のタンク内を高圧洗浄します。
CBヨンフォア専門店のシオハウスさんからタンクコーティングの手法を教わっていたのですが、今回は自己流の方法にトライしてみます。

タンクの錆が悪さしてキャブレター不調になっていたのを解消したいためです。

CIMG3729.JPG


洗浄した水を捨てただけでこのような錆が出てきました。
推定これの3倍以上は入っていたようです。

こんなものがガソリンに混ざっているのですから、まともにエンジン動いているのが不思議なくらいです。







CIMG3728.JPG

そしてサンポール投入、
一本全部入れます。
粘性があるので全体にいきわたるように水1リットルいれて希釈します。
サンポールは9.5%塩酸なので、結構強力に鉄を溶かします。
あまり長時間入れておくと鉄板を侵してしまうので、時々ひっくり返しながら1時間くらいかけて錆を溶かしました。

抜いた廃液はお見せできないほど汚い汚水になっていました。



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内部洗浄した後は酸が残らないように流水でタンク内を満たし、何度か捨てて、乾燥させます。
この高気温が乾燥を促進してくれます。
1日で乾燥は無理なので夜間はエアコンの室外機の前で加熱させておきます。

乾燥後はコーティング剤を入れます。
ワコーズ、タンクライナーを使ってみます。
250ccで20リットルタンクに処理できるそうです。

完全乾燥は1週間後なので、お盆あたりガソリン入れて試運転してみます。



























              

90年代以降のエンジンはメッキシリンダーばかりなので、ボーリング屋さんにお世話になる機会もめっきり減ってしまいました。
ボーリング屋さんはボーリングのみならず精密な穴加工、平面加工も得意なのでコンロッド作ったりクランク改造したりで頼んだのが10年くらい前になりますが、久しぶりに井上ボーリングへ行ってきました。
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DT125の傷がついたシリンダーのボーリングを頼みました。
サイズは0.5オーバーサイズで
ピストンサイズφ56.495
ボア φ56.5
ピストンクリアランス0.05を指定してきました。
空冷シリンダーなので水冷メッキよりクリアランス大き目に加工するのがセオリーです。

ホーニングは高精度なプラトー仕上げで依頼しました。
ホーニング仕上げ後はポートの面取りが必要です。
ボーリング屋さんでも頼めますが、自分で出来ることは他人任せにしないことがモットーなので、エアグラインダーで砥石切削します。
手仕上げですがC0.5くらいを目標に削っています。


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加工後にミツトヨの面粗度計による検査データーを添付していただきました。

面粗度計とは金属表面をプローブ(接触子)で直線的になぞり、表面の粗さを計測します。
1ミクロン程度の精度が保証された計測ですが電気的に検出してアンプで増幅するので可視的に判定が可能です。

プラトー(高原)の名のごとく山の高さが平坦なホーニングであることが分かります。
通常のホーニングだと突出した山が削れるまで慣らし運転が必要ですが、これは慣らし運転時間が早く終了できる処理です。
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エンジン積み込み完了です。
エンジン試運転も問題なくできました。
今回はYZチャンバーでピストン溶けたことによる修理だったので、ノーマルスペックのチャンバーで乗って帰っていただきます。
本来は軽トラで引き取りお願いするところです。
YZチャンバーをトライするときはメインジェット2ランクくらい濃い目にしてからセッティングしていただきたいと思います。(製作業務が停まってしまうのでオーナーさん自己責任でお願いします。)

試運転中、テールランプが切れているのに気がついたので、我社から徒歩3分のモトグラッドさんへ行って6V用の電球を売ってもらいましたので、この仕事はこれにて終了!

今回の修理方法を公開したのは、見知らぬお客さんからの依頼に応える目的ではありません。
貧乏くさく修理などせず、新しいエキパイを購入していただくことが2輪業界、アフターパーツメーカーにとってプラスになると考えているのです。実際、メーカー純正品、社外マフラーの販売元による修理は一切行っていませんし、整備士の正当な修理方法としては部品交換しかないわけであります。
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それでは、何故このエキパイの凹みを修理したかというと、依頼者には幾度となくお世話になっていること
これが無限というメーカーの品物で数に限りがあるという2点が理由であります。

凹んだエキパイ単品を送られて来ましても修理過程でパイプが歪みますから歪みの修正が必要ですが、車体合わせ無しでは確認もできません。
安い修理代で直れば喜ばしいことですが業界としてはデメリットになりますので、修理方法は公開しましたから、直したい人はご自分で努力してみてください。
おそらく大半の人は部品買った方が楽だということに気づくでしょう。
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パイプの前後を治具で蓋をして窒素ガス封入します。
圧力は10kg/cm2くらいが妥当でしょう。
酸素でなく窒素の理由は材料の酸化を少しでも防ぐ目的です。
パイプを加圧した状態で凹んだ部分を板金ハンマーで軽く叩きながら均していきます。
殆ど目立たない程度に修復できていますね。
パイプの曲げRが若干外に開きますので
内側に曲げ戻せば取り付けに問題は無くなります。

2輪レースでもロードとMXは異質なものだと思っています。人間とマシンの比率が、MXは人間の割合が大きいということです。マフラー取り換えたくらいでレース結果が大きく好転するとは思えないのですね。速さより音や外観といった嗜好の部分で選んでいる人が殆どでしょうね。
それからモータースポーツはプロの人は仕事ですから別ですが職業以外の人は部活動のようなものだと思っています。
私は中学時代は剣道部でしたから剣道やってない生徒と竹刀持って試合しても負けることはなかったわけです。2輪レースなら乗ることはもちろん、マシン整備や故障修理は2輪レースやってない人より出来るのが当たり前なわけです。
剣道だって竹刀や防具の手入れは自分でやって競技を続けるのですから、2輪レースで自分のマシンの修理を他人に頼んでいたのでは経験や技術が身につかないだけです。
私自身も最初は何にもできませんでした。30年以上やってきたから多少分かるようになってきただけです。体力は始めたころより大分落ちてますが・・・

最近のもの忘れの激しさに自分が恐ろしくなります。50歳にしてこの状態では60代で完全にボケてしまうのではないかと思えます。

例えばこんなことがありました。ストーブに火をつけるライターをエアコンに向けてカチカチとスイッチ入れようとしたり、お昼にラーメン食べようと思って包丁でナルトを切って包丁とまな板を洗って、包丁を包丁立てにしまおうとしたらナルトが立っていたり。

または灯油を買いにいこうと思ってポリタンクをスクーターに積んで走りだしたのに、家のそばのGSを通り過ぎて次の交差点まで突っ走って気がついたり。

今、何をやろうとしているか、または1分前の行動が記憶に無かったり、かなり重症のもの忘れです。

そしてついに仕事上のもの忘れで大失敗を犯してしまいました。

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このサイレンサー、材料支給で組み立てを頼まれたのですが

完成したつもりで梱包して荷物発送した後で、中に入れ忘れたものに気がついてやり直しするために依頼主に電話して返送してもらったばかりです。

中身のパンチングが後ろに抜けてこないためのストッパーを付け忘れたので、このまま納品したら、お客さんとこで問題が発覚するのではないかと思いました。

 

 

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早速、溶接を剥離して分解する前に、パンチングを引き抜いておこうとしたのですが、意に反して抜けてきません。

差し込んであるだけなので、バーナーで炙ってアルミを膨らませておけば緩むだろうと思ったのですがビクともしません。

パイプを中に突っ込んで力任せにど突いていたら、アルミの方が負けてしまいました。

結局、改修しなくてもパンチングは抜けてこないということが分かりましたが、これは偶然の産物であり、自分の設計では抜け止めが必要なことに変わりはありません。

この凹んだアルミも修復して無駄にしたりはしません。余計な仕事が増えただけです。

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しっかり溶接されたものを再使用できるように分解することは至難の業です。

切断したパイプの部分は寸法が足らなくなりますので廃却して新規に製作です。

やり直しするということは同じもの2回作るより労力が必要です。

往復の運送代も無駄になっていますし、もの忘れの恐ろしさを今更痛感するのであります。

 

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同じ失敗を繰り返さないために、新たに巻いたパンチングにストッパーリングの取り付けを確認しました。

1個品物が増えていますが、追加で頼まれましたので工賃をいただかないで運送代の足しにしていただこうと思います。

あと少しで組み立て完了のところで夜10時を回ってしまいましたので、近所迷惑にならないように、続きは明日の朝ということにします。

 

 

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翌朝組み立て完了しました。

全損になる可能性もありましたが材料の予備はないので、悪戦苦闘して改修しました。

アルミは柔らかいので溶接を剥がすときに歪んでしまうので、新品で作るより困難です。

私のもの忘れが原因で約束の納期も守れず、余計な運送の手配などしていただき、依頼者の方には大変申し訳なく思っています。

エンジンの組み立てなど、作業が決まっている場合は同じことを2回以上確認して締め忘れや未取り付けを防止できますが、初めてやる作業や方法が確立されていないことはミスが出る可能性が高いことを忘れないで今後の仕事に取り組んでいきたいと存じます。

私らが子供のころはズボンの膝や上着の肘が擦り切れたら、継ぎ当てをして着ていました。着る物や食べる物が貴重で粗末にすると親から怒られたりしました。ですから使える物はなかなか捨てません。可能なかぎり直して使います。

競争原理主義であるはずのモトクロスをやるようになっても貧乏性のままで、チャンバーなどは転倒で簡単につぶれてしまうので、下手な板金修理で直して使い続けました。そんな苦労した経験から、安価に上手く直せればいいなと思って始めたのがチャンバー作りなので、スペシャルパーツとかチューニングとかの目的ではなく、高価な部品をあっさり交換するのでなく直して使うことで出費を抑えようという目的でした。

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エクボくらいの凹みですが、これを直してほしいという依頼です。

「金は持っている」といいますが、これが直ったとしても価値があるとは思えませんので、どれほどの難易度か確かめるためにやってみます。

 

 

 

 

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250のエキパイは以前、やりましたので治具がありましたが450のパイプには使えません。

450専用の治具を製作しました。

パイプの端面を密閉して窒素を加圧するための道具です。

 

 

 

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エキパイに加工が必要です。

治具が引っかかるストッパーを溶接してあります。

これがないと圧力で治具が動いてガス漏れしてしまうためです。

 

 

 

 

 

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窒素を10気圧かけてバーナーで赤熱します。

炙りすぎると酸化してチタンが脆くなってしまうので手早くやらねばなりません。

溶接ビードの真上なので、一般部より固かったですね。

 

 

 

 

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凹みはこの程度修復できました。

焼け跡が残りますので色は美しくないですが、凹んでいるよりはいいでしょう。

 

 

 

 

 

 

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こっちの方が重症です。

カーボンパイプは衝撃が加わると割れてしまいます。接着剤では再び剥がれてくるでしょう。

これは諦めてアルミで巻いて作るように頼まれましたが、忙しいので後回しにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先週末、つまらん仕事に手こずり予定が狂ってしまったので時間を取り戻すために日曜も業務でした。おかげで先週完了予定だったサイレンサーを今朝発送できました。

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YZ85サイレンサーですが、ミニモト用商品としては一番多く作ったと思います。

2ストトレール用チャンバーに並ぶ主力商品となっています。

本当は新機種のマフラーを作りたいですが、大きいメーカーが競って新商品を出しますので、零細な個人商店は出る幕がありません。

そこで、どこもやっていない旧式マシンのマフラー作りが回ってくるという寸法です。

暇にならなくてありがたいことです。

 

CIMG2738.JPG先週預かったサイレンサーの修理をサクサクとやっていきます。

削れた部分を切り取り、新しいアルミ板を板金で丸みをつけた後、仮止めします。

気をつけることは、元の板と段差ができると溶接後に修正が効かないので、繋ぎめを同じ高さで止めるということです。

溶接で歪みますので、仮止めは多い方が狂わないでしょう。

 

 

 

CIMG2739.JPG全部溶接してからビードを研磨仕上げした状態です。

繋ぎ目がなるべくわからなく仕上げるところが腕の見せどころですが

あまり上手じゃないですね。

実は新しい物を作るより、部分的に修理して元どおりにする方が困難だったりします。

このエンドカバーは純正部品で¥4000で購入できるので、迷わず新品に交換した方が手間がかからないです。

しかし、私は部品交換屋ではないことを示したいために敢えて板金溶接することを選びました。

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削れてしまったサイレンサーボディは5cmカットしてリベット穴を空ければ再使用できます。

インナーパイプも5cmカットして差込部分を溶接します。

2013モデルのサイレンサーは5cmカットしても音量規制をクリアできることを確認してあります。純正品は消耗も考慮して騒音に対して余裕をもった仕様になっているのです。

全長が長いので、転倒でエンドカバーが衝突しないためにも短い方が有利です。

 

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板金修理したエンドカバーに色気を持たせるためにバフ仕上げとしました。

5cmショート化とポリッシュによる輝きでノーマルサイレンサーとは違った外観になるでしょう。

傷ついたから、あっさりと社外マフラーに取り換えるよりも、個性的になるとは思いませんか。

 

 

 

 

 

関東選の翌日、オフビレに伊田選手のお店で使うスノースクート用フレームの改修のため、打ち合わせを兼ねてMX練習に行きました。

偶然隣に止めてあったバイクキャリア積載のCRF250のマフラーが酷く削れているのが気になりました。暫くして持ち主が戻ってきたら、昔のミニモトライバルでした。彼の乗っていたCR125のチャンバーやアフリカツインのマフラーも作ったことがあったので思い出しました。

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問題なく乗り回していましたが、「これはどうした?」と尋ねたら

関越道でキャリアから落として引きずった、と言います。

タイダウンが引っかかっていたので、後続車に衝突されることは無かったのが不幸中の幸いです。

ハンドルもメチャメチャになったので取り換えましたが、マフラーは中身にダメージがないので走行に支障ありません。カッコ悪いだけです。

部品交換で治せばよかろうと思いますが部品代はマフラーボディ単品で¥42700もします。リベットも20箇所で¥1600します。交換工賃¥5000でやったとしても5万円オーバーですから悩むところです。

修理代5万円出すなら、社外のマフラーに取り換えてしまうところです。このマフラーは純正で¥88000もするのに驚きです。お金持ちでないと、なかなか取り換えないでしょうね。

しかし、彼は東京ドームの近くで飲食店を経営していて今度2店舗めを出す予定の実業家ですから新品交換などわけないことだと思います。しかもお気に入りの国際A級ライダーに現金スポンサーもしているそうです。

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その彼が私に「どうすればいいですか?」と聞くので

ダメなとこだけ作って取り換えればいいんだ、という具合にいつものように安易に答えてしまった責任をとるために、練習後マフラー外してお持ち帰りすることになりました。

修理代大幅削減は確実ですが、これにかかっていると仕事の予定に影響がでますので、納期はゆっくりでいいという確認をとって、再来週くらいに治したいと思います。

彼と彼の奥さんはスノースクートにはまりつつあるのですが、マイスクートを持っておらず、今度伊田選手のお店へ行く約束をしていましたので、スクート2台買っちゃいそうなので、伊田選手もうすぐ儲かりますね。

仕事というものは一人だけでは成り立ちません。需要と供給、そして自分の持ってないものを補ってくれる人脈が大事という一例でした。

チャンバーの凹みがどの様に直っていくか、実態がわからないためか質問を受けることがあります。そこで調度よい修理依頼が来ましたので掲載してみます。

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機種はRMX250Sで半年ほど前に販売したものです。

転倒したらしく大きく凹んでいます。

 

 

 

 

 

 

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真横から見ると酷い状態がわかりますね。

修理方法は棒を溶接して引っ張るとか、裏側に穴を開けて棒で突くとか、おっしゃる人がいますが、仕上がりを想像すると恐ろしいですね。

空気圧をかけてガスバーナーで炙る人もいますが、鉄板が酸化してしまって外観も強度も落ちてしまいます。

この程度の凹みなら水圧方式が簡単でしょう。

 

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口元とテールパイプに治具を取り付け水押しの準備は整いました。

この角度が変形の入り具合がわかりやすいですね。

それでは圧力をかけていきます。

 

 

 

 

 

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圧力は物と状態によって調節しますが、この場合は35気圧かけています。

圧力だけでこの程度戻りますが、これから板金ハンマーを使って形状を整えていきます。

 

 

 

 

 

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およそ10分ほどハンマーで叩いて均していきます。

方法は高い所を叩くと水圧がバックアップになって低い部分を押し上げてきて同じ高さになります。

路面の固い所に当たったのでしょう。傷が沢山見えますが、これはこのままにします。

サンダーで研磨すれば傷は目立たなくなりますが、板厚が薄くなってしまうのでこのままのほうが強度が保てます。

これくらいの修理なら2回、3回と繰り返しても再使用できます。

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跳ね石で小さい凹みができていますが、実は大きい凹みより直りにくいことがあります。

それは固いものが食い込んで鉄板が伸びてしまっていることと、水圧を受ける面積が小さいのでバックアップされる荷重が低くなることが要因です。

 

 

 

 

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しかし、大体痕がわからない程度に直りました。

棒を溶接して引っ張っていたらこのように仕上がらないはずです。

但しこの方法で直せるのは、断面が真円のパイプに限ります。楕円パイプなどは、圧力で真円になろうとしますので形状が変わってしまいます。そういうパイプは面倒ですが切開板金するしかないでしょう。

 

 

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最後に治具に取り付けて歪みの確認をします。歪みが大きいと車体に取り付かなくなることもありますので矯正が必要です。

これはラインナップ品なので、これが可能ですが、社外品は形状が違っていて治具に取り付かないので、歪みの確認ができません。

その場合は車体合わせで確認する方法を採ります。

 

 

バックオーダーは1ヶ月分残っていますので、社外品マフラーの修理は優先的にはできません。2ヶ月以上お待ちいただいているお客さんの注文がありますので順番に進めております。

不運にもマフラー壊してしまった場合は、新しいものに交換されることをお勧めします。

また実車は殆どありませんので取り付け確認などが必要なほど変形している場合も保証できないことをご了承いただきたいと思います。

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カーボン樹脂製のエンドキャップが割れてしまって交換が必要ですが

補修パーツもありませんので、鉄板で作って代用します。

 

 

 

 

 

 

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ビレットパーツのマウントステーですがリベットが外から外せない構造でしたので、ボディーを切って内側のフランジを削除して外しました。

マウントステーの面積が小さいので加重を受けるとボディーに食い込んでしまう難点があるようです。

 

 

 

 

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チタン材は非常に高額になりますので、アルミ板でボディーを作って代用します。

修理というより半分製作という形になります。

メーカーから補修パーツが販売されることが理想だと思います。

 

 

 

 

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マウントステーの取り付け位置は全く不明なので実車をお借りしてマーキングしてから取り付けることにしました。

今回は隣の川越市在住の国際A級ライダー松本耕太選手のガレージにお邪魔してきました。

彼はお父さんの会社で働いているのでお給料でチャド・リードと同仕様の前後サスペンションを購入してCRF450Rに奢っています。モトクロスは気が向いたときだけ乗るというお気楽モードが信条のようです。レース出てもお金になりませんからね。

私は言い訳をしなければなりません。これで許されることとは思っていませんが、競技者、製造者、顧客などの立場を考慮した結果このような処置をとることにしました。

マフラーの製作依頼を受けて順番に作業を進めていますが、手作業のため2ヶ月程度お待ちいただいている状況ですが、突発で頼まれる依頼に対応しなければなりません。

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レース中のアクシデントでマフラーとサブフレームが曲がってしまい、タイヤがマフラーに擦りながら走行した結果このようになりました。

折れ曲がったジョイントパイプ、切れたバンド、エンドキャップ割れ、が損傷箇所です。

パーツを取り寄せて交換したらどうか?と言いましても高価で買えないと言います。

しかし、スペアの新品マフラーは来るということなので、これに金を掛ける気は無いということです。

それならば、金が掛からないように修理方法を考えなくてはなりません。金は掛けませんが、時間は丸一日掛かっていますので、その分お待ちいただいているお客さんの仕事が遅れるということです。時々、突発の仕事が入りますので作成した工程表の通りに予定が運ばないことが言い訳の内容です。

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ここが折れ曲がったジョイントパイプ部分ですが画像は炙り戻した後です。若干のシワが残っていますが、マフラーの向きは正常に修復できました。

曲がったサブフレームも正常な位置に戻して取り付け状態を回復しておきます。

 

 

 

 

 

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割れたエンドキャップはプラスチック製です。

このパーツは単品で購入できないそうで、マフラーASSYで8万円掛かるということで迷わず製作です。

コストを抑えるため鉄板で板金製作です。

仕上げはつや消しブラック耐熱塗装です。

 

 

 

 

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擦り切れたカーボンバンドは単品購入できるらしいですが1万2千円掛かります。

ここもアルミステーとステンレスバンドを作って代用です。気に入らなかったら部品発注してください。

オリジナルを見たことが無い人は改造したことが分らないでしょう。

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レストア界の最高権威、小林さんから溶接肉盛りを頼まれたケースカバー。

左ケースと思いますが、車種が分らない私が質問しましたら、ホンダSAだとおっしゃいました。1955年製の同車種ですが、最近まで実動で、イタリアで開催された2000kmのラリーを完走して年代別クラスで入賞したマシンだそうです。

ヨーロッパの旧車レースは日本とは比較にならない人気とレベルの高さが予想されます。

自分を育ててもらった会社のマシンですから、恥ずかしながら調べてみましたら、これがホンダの2輪車の歴史上重要な役割を担ったマシンであることがわかりました。 ドリームSA.jpg

ホンダコレクションホールの展示車画像から拝借しました。

たしかにこの車両の左ケースが同じ形状を呈しています。

これがホンダ初の4ストエンジン、OHC単気筒250ccです。

本田宗一郎さん直々の設計で、夢の4ストロークエンジンが完成したので、ドリームという車名を与えた最初のマシンです。

製造された1955年にレースに出場しています。日本にサーキットが無かった時代で

7月に第3回富士登山レースで250ccクラス優勝。11月の第1回浅間火山レースで250ccクラス2位入賞という快挙。因みにこのレースの優勝はライラックに乗る伝説のレーサー伊藤史郎でした。

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修理内容は、オイルドレンに亀裂が発生したため溶接肉盛りをすることです。

古いダイキャストですから表面を少し削って地金を出す必要があります。

酸化皮膜が溶接不良を引き起こすためです。アルミの溶接は交流TIGを使いますが、交流は極性が+ー交互に流れる高周波です。+イオンを衝突させ酸化皮膜を除去しながらー電子でアルミを溶かします。この酸化皮膜が強固な場合、除去できずに上手く溶けてくれないため、予め削っておくことが必要です。 

 

 

 

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内側もこの通り一皮剥いて、浸み込んだオイルの脱脂も行います。

 

 

 

 

 

 

 

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ネジ穴の内側から溶かすように溶接棒で埋めてしまいます。

ここに新たなネジ穴とボルト座面を加工するのですが、私の仕事はここまで

続きは小林さんのレストア工房の加工機で行います。

サンドブラストで全体を美しく仕上げて、消耗部品も新品交換して組み上げますので、新車同様のコンディションになるでしょう。

小林さんは、ホンダのワークスレーサー、ダブルプロリンクや2気筒RCなどの開発を勤め、オートマチックRC時代のHRC監督でしたが、その後、会社命令でコレクションホールの立ち上げを任され、茂木の展示車両は同氏の作品であります。

英国バーミンガムのモーターサイクルミュージアムも見た事がありますが、展示台数は多いですが、旧車のコンディションは悪かったと思います。それに比べて、茂木のコレクションホールは全車動態保存で外観も新車同様、F1やMotoGPの歴代チャンピオンマシンも保有していることで、間違いなく世界一の2輪4輪博物館であると同時にホンダの偉業を実物で感じ取れる、後世に伝えたい異空間であることを申し上げておきます。

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CRF250 10モデルのマフラーですが、インナーパイプのエンドキャップ部分で破損してパンチングパイプが中で外れてしまいます。

レーサーですから補償はありません。しかし、寿命の設定としては絶妙ですね。

去年のモデルですから1年間壊れなければクレームもつかないでしょう。壊れれば部品交換しなければ走れませんので、やむを得ず交換するのですが、この部品だけで2万円以上しますから、分解工賃など加えると3万円くらいの出費でしょう。

画像はエンドキャップを修復した後です。破損したキャップ部分に鉄板を追加して補強していますので寿命は大幅に伸びるでしょう。

分りにくいですが、エンドキャップの内側にエンドパイプを差し込むツバがあったのですが、パイプが中で暴れて無くなっていたので、ツバの部分も修復してあります。

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溶接場所はこのとおり、これで僅かな材料で元どおりの機能を果たすことができます。

修理代も純正部品で交換するより大幅に削減できました。

社外品のマフラーは修理しません。他店でお買い上げいただいた商品については、他店に依頼してもらいたいからです。

純正部品を修復してスペアマフラーにしながら我社の製品をお買い求めのお客さんに対するサービスとして安価にて提供するものであります。

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エキパイの凹み、熱影響のためか外側が延びて潰れたように変形しています。

曲げるときは、パイプの断面積がなるべく変わらないように注意して作りますが、激しく走行しているうちにダメージを受けてしまいます。

こういう状態のエキパイを修理するのに、チャンバーのように蓋をして圧力を掛けようとしても元通りにはなりません。

スッキリ直すためにダメージを受けた部分を取り換えます。

 

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メーカーによって特殊なサイズのパイプを使用している場合があり、パイプが入手困難で修理断念していただくこともありますが、

これはφ31.8でパイプの在庫がありましたので、直ぐに曲げました。

パイプベンダーという高価な設備はありません。万力とバーナーを使って手曲げによるものですが、内側40Rで潰れないように180°曲げて素材を作ります。

パイプのサイズが大きくなるにつれて曲げられる最小Rが大きくなっていきますので、車種によっては難しいものもあるでしょう。

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潰れたパイプは切除して新しいものに取り換えて溶接しました。

チタンパイプは材料代が高価で3万円くらい材料購入してエキパイ3台分が作れる程度です。

ダメージの無い部分を再使用することで、新品の半分以下のコストで修理することが可能となります。

勿論、予算に余裕がある人は新品購入された方が経済の活性化に繋がると思いますが、修理代を節約して、もっと有効なことにお金を使うことができるということです。

2ストトレールは健在です。これは公道バージョン、オンロードタイヤでフロントインチダウンされています。

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外装も丁寧にカスタムされていて、大事に乗られていることが分りますが

94モデルなので登録から17年経過していて、走行距離は5万キロくらいだそうです。

さすがに、このまま乗り続けるのは不安だということでエンジンOHすることになりました。

社外のチャンバーも激しく凹んでいます。これはオーナーがヤフオクで凹んだ状態のものを安く落札したそうですが、普通は社外品の修理はお引き受けしません。それは、マフラーメーカーか販売店が対応すべき仕事だと考えていますので、私が社外品を使い続けるために救済する必要は無いと思っているからです。

トヨタの販売店にホンダ車の修理を頼むようなものですからね。そうは言っても、こちらのお客さんが、この車両を総合的に直したいと依頼してこられているわけですから、その一環としてチャンバーの修理も行います。

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リヤショックはオイル漏れの上、バンプラバーもウレタンが崩れて無くなっています。ショックもOHして機能回復しなければなりません。

チャンバーはエキパイ部分から全体に潰れていて、まともな状態ではありません。ここまで潰れていると商品価値はゼロだと思うのですが、ヤフオクではこのようなものに5千円の値段をつける人がいるそうです。明らかにスクラップであることを付け加えておきます。

 

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オイル漏れの激しいエンジン。シリンダーベースにコーキングが見られますが、ガスケットが吹き抜けていることが予想されます。

さすがに5万キロのダメージが蓄積されているのでしょう。

これから全バラして修復することにします。

 

 

 

 

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排気デバイス、KIPSの部品です。

遠心ガバナーにより駆動される可変ポートタイミング機構です。ラック&ピニオンで中央のスライドバルブと左右の回転式バルブが低速域と高速域の排気ポートタイミングを変化させて、幅広いパワーバンドを稼ぎ出します。

しかし、その部品点数の多さは4ストロークエンジンの動弁系より多く感じられ、メンテナンスの工数も、こちらの方が上です。

 

 

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エンジン部品全部。ばらすだけでなく、相当な汚れが付着しているので、全部洗浄してからメンテナンスに入るので非常に時間がかかります。

汚れが付着していると、小さい傷や磨耗の状態が判断できませんので、整備の方針を決めていく上で重要な工程です。

こうして、交換部品のリストアップが可能になります。

従って正確な見積もりはこの段階以降でないと分りません。

 

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エンジン整備には夏でも石油ストーブを使います。

ベアリングの交換にはケースを熱膨張させて、脱着します。これはケースにダメージを与えない方法で

プレス機を使った圧入では圧入面がかじって、小さい傷がつきます。そのため折角、真円に加工された穴やベアリングが偏芯してしまうので、それを防止します。

2010モデルから著しく大型化したCRFのサイレンサーですが、思わぬ不具合も生じています。

張り出したサイレンサーは転倒しなくても、通常のライディングでサイドカバー越しに圧迫されてデフォーム(凹み)が発生します。また角ばった断面のアルミは平面が広くなっていますが、排気圧で膨らもうとしますので、金属疲労により亀裂が入ってしまいます。

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上は2011CRF250R、下は2010CRF450R。

250方が450よりサイレンサーが大きいことが分ります。

これらのサイレンサーは純正部品で一個9万円もしますので安々と買い換えられるものではないでしょう。

レーサーモデルも高品質化して付加価値を付けていかないと商品として受け入れてもらえなくなるということは予想できますが、限度というものがあります。

私が自分の150用のマフラーを作る理由はクラッシュで一発破壊する恐れのあるものが、純正部品で5万円もするので、作る場合は半額程度のコストで済むからです。

この高いマフラーの仕様を設定する人たちは、元々高収入で中小企業の社員とは違います。その上、このようなレーサーモデルは会社の車両に乗れるため、自分で買う必要がないですから、一般庶民の金銭感覚は持ち合わせていないのではないかと思ってしまいます。

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これはどちらも国際A級ライダーが所有しているものですが、日本ではトップクラスの彼らでさえ、スペアサイレンサーを持っていないという現状からも、その問題点が感じとれます。

とりあえず、修理するためにはリベットをはずして分解しなければなりません。

現在バックオーダーの状況が2ヶ月分溜まっているため、新規の注文を先延ばしするか諦めていただくなどの対応をさせていただいている状態なので、作業する時間がとれるかどうかわかりませんが、修理してみることにしました。

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まずは450から

アルミ筒に絞りが入っているため

切断して別々に整形してから溶接です。

大体、元の形状に直りました。

 

 

 

 

 

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次は250です。

デフォームを均してから亀裂部分を再溶接です。

古い溶接ビードを削除して溶け込ませていきます。

ビードは平滑でないと、すぐに割れてしまいます。このあと外側にアルミ板を張り付けツインウォールにしますが

これは国際A級用なのでスペシャル仕様の加工を行います。

 

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音量に余裕があることと、加速力を増す目的でショートタイプに変更。

テーパーパンチングのため繋ぎめの外径を合わせて溶接しています。

アルミ筒はデフォームになりやすい外側をツインウォールにしています。

エンドキャップの嵌め合いがきつくて、経験のない人は組み立てが難しいと思います。

 

 

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グラスウール詰めて、ステンリベットで荷締めて組み立て完了です。

高価なマフラーなので、メンテナンスして寿命を延ばしてあげないと、亀裂が拡大して使用不能となって

余計な出費が出ますからね。

 

・・・ああ、また予定が遅れてしまった・・・

今週は休みなしで働きます。

 

「これ直すんですか?」一応確認のため聞いてみた。そしたら「直したい」という答え。

「ものすごく大変だよ」と言うと、「いくらぐらいですか?」というので「普通の3倍くらいかかるよ」

と答えたら、「新品買った方が安いですか?」と言うので、「そこまではいかない」ということで

契約成立して修理することになった。

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普通はこのように大破している場合は新品に交換するように勧めます。

それは修理に相当な時間を費やし、製作業務に差し支えるからです。

おそらく、これは、新品交換した上で直したチャンバーはスペアとして取っておこうということだと思います。

そして、直らなければ諦めると思うのですがダメ元で聞いてみるということは、私が直せるかどうか試しているのではないかと、思わせるのです。

これが直ったとしても私の評価が上がるわけでは無いと思いますが、もしかして直せないんじゃないかと思われることが、マイナス要素なので

この挑戦に応えることにしました。

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ここが荷重の力点だと推測しますが、鉄板が破けています。

圧力をかけて直すために、溶接して穴を塞ぐ必要があります。

 

 

 

 

 

 

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エキパイにシワがよって蛇腹のように曲がっています。

ここまでいくと、水圧では直りませんので

切断して鉄棒を当てがいながらハンマーで板金修理しなければなりません。

 

 

 

 

 

夜は騒音の出る作業は近所迷惑になりますので、この続きは明日ということにします。

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パイプを切断し、潰れた部分をハンマーで整形して溶接。

その後、水圧で元の形状まで膨らましました。

しかし、そのままでは歪みが大きく車体に取り付けができないくらいパイプの向きが変わってしまいました。

結局、4箇所の切断面を削ってパイプの向き矯正して取り付くようにしました。

 

 

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MTBプロライダー、日本人として始めて海外メーカーと契約し世界選手権を走った世界ランカー。

アジア選手権2連覇、JCFシリーズチャンピオンなど輝かしい戦績をもつダウンヒルライダー

井出川直樹選手はホンダレーシングとも契約してRN01で戦ったこともある。

現在、彼は京都のダイアテックと契約し、カナダのEVIL(イービル)というメーカーの自転車に乗っている。

しかし、このEVILは国内に1台しか輸入されておらず、

即ち井出川選手専用のプロトタイプでスペアマシンもない。

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これが、EVIL社スイングアーム、部品単価は聞いてないが、メインフレームだけで40万円くらいだそうだ。

これをハンドワークで1品だけ製作頼まれても、この前のスイングアームより3倍くらい手間が掛かりそうだ。大体、切削部品をこのクオリティで仕上げるにはNC(数値制御)マシンに頼るしかないわけだが、NC加工の工賃は段取り1回の金額なので1個加工するのと50個加工するのとあまり変わらないので、1個だけ加工すると莫大な金額になってしまうので普通はやらない仕事だ。

幸いこれは2箇所のヘアクラックを補修するだけなので問題はない。

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クラック2箇所、塗装を剥離してからTIG溶接することになる。

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亀裂を溶接だけでは再び発生してしまうだろう。

再発防止のために補強パッチを追加しておく、これで寿命は格段に向上するはずだ。

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こちらはビード肉盛りで様子をみる。

このスイングアームは左右非対称な接合方法で、こちら側だけ突き合わせになっていることが

強度不足の原因とおもわれる。

高負荷の足回り部品を溶接する場合、荷重の方向に対してなるべく長手方向に接合することが

セオリーなのであるが、突き合わせが最も不利な条件なのである。

いずれにしても日本屈指のダウンヒルレーサーが溶接修理を頼ってきてくださったことに感謝いたしまする。

2スト車の車体に4ストエンジンのスワッピング(換装)は何度もやってきた。 しかし今回のスワッピングは今までのとはわけが違う。

これまでのエンジンは旧式の空冷2バルブであったのに対し、これは新型の水冷4バルブだ。 おそらく日本で初めての組み合わせだろう。前後サスペンションはホワイトパワー。リヤはリンクレス。 ブレーキはフォーミュラの対向ピストン。国産には採用されないヨーロッパ製品が目を引く。 画像はエンジンのレイアウトを検討している様子でエンジン位置は決定したがフレームのパイプは繋がっていない。高くなったキャブレターにあわせたエアクリーナーの変更、シリンダーヘッドをかわしたガソリンタンク製作、フレーム中通しの専用エキゾーストパイプetc.難題山積みである。 おそらく実走できるのは夏頃だろう。

 この製作計画を聞いて殆どの人は無意味だとか、改造しないでそのまま乗るのが一番いいとか思われるだろう。 実は製作を担当している自分自身も同様に思っていたのだが、製作を諦めさせる説得をしながら、自分の気持ちが完成させて走らせてみたい方向に変化していった。

これを無意味なことと思う人は、マシン選びにどれ程の理由があるだろう。 メーカーのイメージであったりレースで上位を走る機種であったり、バイク店との付き合いであったり。いずれにしても明確な根拠は存在しないはずである。しかも、高額な支払いをして手に入れたマシーンも翌年にはあっさりモデルチェンジされて旧式になってしまう。本当に乗りたいものを決める手段が完全にメーカー任せになっていて、お客さんは踊らされている状態だ。そんな宛がわれたような選択肢では、ただ流行にながされて、他人の真似しかしない日本人の一員になってしまう。

他人と違う方式を試みる精神がこの車両の製作に現れているではないか。 これが完成して走っている姿をみて、どんな乗り味なのか興味を持つ人は多いだろう。しかしその答えは作った者、乗った者にしかわからない領域だ。

 無意味だと思う人には一生わからない答えだろう。 そしてこの製作を実現する手段に弊社を選んだ依頼者に満足していただくために腕を振るわなければならない。

アルミタンクはワークスモトクロッサーだけの物ではない。70年代後半までは量産車がアルミタンクだったのに、大物は金型でプレス成形されるが、溶接などハンドワークの部分に熟練が必要なため、生産性のよいプラスチックタンクへと変更されていったのだ。 昨今のビンテージオフロードの盛り上がりで70年代後期のレーサーもレストアされレースに参加する台数も増えてきた。ところが30年も前のプラスチックはどうしても劣化が進み、軽い衝撃でも割れてしまって、ガソリンが漏れてしまうのだ。接着材で補修しても耐ガソリン性のものはなくて使い物にならない。塗装しても揮発するガスで塗膜が剥がれてしまう。 そんな悩みを解決するためにアルミタンクを製作することにした。タンク専門の会社に依頼すると、量産とそっくりな形状の品物ができるが、必要なモデル代、金型代、を負担した上に製作費がかかるので、すくなくとも35万円は かかるらしいが、お客さんの依頼は1個だけなのでそのような金額では諦めてしまうだろう。今回はプレス成形を行なわない方法、アルミ板から叩き出す板金手法で作ったタンクだ。 全体のデザインを決めるアッパーハーフをハンマーで叩きながらカーブをつけていく。見本と見比べながら感を頼りに曲げていくのだ。一枚板では不可能なので、要所要所分割して成形して溶接で組みたてていく。フレームに組みつけるロアーハーフも車体に取り付け確認をしながら成形していく。アッパーとロアーを接合する前に形状を整えないと、後からでは叩けないのだ。溶接が全て終了したら、水を満タンに入れて洩れがないか確認する。エアーを入れて水没させる方法もあるが、加圧してタンクが膨らんでしまうことがあるので、水を入れた方が安心なのだ。これでプロの塗装を施せば、アルミ製の複製タンクであることはよく観察しないと気がつかないだろう。 アルミタンクはけしてワークスチームだけのものではない、むしろ庶民的な旧車マニアのためにあるのだ。