車輪で走る乗り物を扱う者として
知っておかなければならない歴史があります。
オートバイなら、もてぎコレクションホールを観ることをお勧めしますが、
ここの博物館はそれを凌ぐスケールの展示内容に驚かされます。
究極のビンテージがここにあります。
150形式蒸気機関車 1871年製造
英国から輸入された日本初の蒸気機関車。
新橋ー横浜間を1時間で走ったそうですが
初めて乗った乗客は横浜に到着しても、誰も降りようとしなかったといいます。
当時歩いて丸一日かかった距離なので、あまりにも早く着いたので、疑っていたのだそうです。
当時は日本に機関車を作る技術はありませんでした。
北海道開拓に活躍しました。
機関車のデザインも英国と米国ではかなり違っていますが、古い映画のワンシーンを観ているかのような光景ですが、これらの車両は実物で、重要文化財に指定されています。
私は鉄道マニアではありませんが、この博物館を観たいと思ったきっかけは、
私の故郷、愛媛の偉人に十河信二という人物がいたからであります。
第4代国鉄総裁 「新幹線の父」と呼ばれた十河信二(敬称略)は
愛媛県尋常中学校東予分校 (現在の西条高校)出身で東京帝国大学法学部卒業後、鉄道院入省。
満州開発の社長で鉄道事業に尽力し、昭和20年西条市長就任。昭和30年、71歳にして第4代国鉄総裁就任。東海道線の輸送力の行き詰まり打開策として、新幹線構想を打ち出した。
この世界的に前例のない一大プロジェクトを立案し遂行した偉人が、私の出身地、西条市の市長であったことで、この史実について知っておかねばならないと思っていた矢先、自宅から近い大宮に鉄道博物館が開業したので、観に行かない理由はありませんでした。
これは、展示物の中で最も興味のあったものです。
9850形式蒸気機関車 1913年製造
マレー式と呼ばれ、東海道本線御殿場越えで活躍した車両で大胆にカットモデルを作成し、蒸気機関内部の構造を解説しています。
内径×行程 500×650mmのシリンダーは前後に配置し、後ろのシリンダーから排気した水蒸気を前側のシリンダーに再利用して、左右で4つのピストンを動かしています。
そして、長くなった台車の中央に間接を設けてあり、カーブでもスムーズにコーナリングできるようになっています。足回りの構造は地下ピットに入って見学できるので、機関車の構造が目で見て分るようになった、ありがたい教材です。
マレー式とはフランスの鉄道技師、マレー氏の発明した方式のことだそうです。
C57形式蒸気機関車 1940年製造が中央の回転台に乗っており、一日2回の回転実演を行っています。
展示車両は同じ幅の軌道のため、整備場から軌道を使って搬送され、この回転台で、それぞれの場所に割り振りされました。
機関車の車輪の製造方法と現物を展示したスペースがあり、これも興味深かったのですが、私は自動車の足回り部品が担当だったため、神戸製鋼の鋳鍛造事業部で鍛造ホイールの製造工場を見せていただいたことがあります。
自動車はアルミホイールですが、材料と大きさの違いはありますが、同じ原理で製造されていることがわかります。
初期の車輪は一体成型の製造が不可能で
鋳造されたスポークに外輪を焼き嵌めで組み立てしたため、車輪が壊れて事故になることもあったといいます。年代が進むにつれて材質や製法が改良されて、信頼性の高い安全な車輪が製造されるようになりました。
最近の製法は鋼材を熱間鍛造でハブとスポークの成型をおこない、リム部を回転鍛造によって絞るように立ち上げて旋削加工前の素材を作っています。
機関車の車輪はガソリンエンジンに例えるとクランクシャフトと同様な機能を持っています。車輪の外周は真円に旋削加工され、ピストンからの連接棒(コンロッド)がむき出しで取り付いています。
連接棒が取り付くシャフト(クランクピン)の反対側に釣り合いのための重りが付けられているのがわかります。左右の車輪は車軸が圧入されて一体になっていますが、左右のクランクピンの位置は90°ずらして取り付いています。その理由を考えてみました。
動力となるシリンダーは左右にありますが、ピストンが上死点でそろってしまうと、蒸気機関はスターターを持っているわけではないので、車輪に最初の回転を与えることができないはずです。
クランク角を90°ずらしておくことによって、左右どちらかのピストンが動きだしますが、両方のピストンが上死点に位置すると、圧力を受けたまま動けないということになるからです。従って蒸気機関に同爆はあり得ない、必ず90°クランクだということです。
今までどれだけの人を幸せにしてきたでしょう。
大勢の人や沢山の物を運び続けた、機関車や電車たち、自動車やオートバイ同様
乗り物は乗ることは勿論ですが、観る者を幸せな気持ちにしてくれます。
まだ観てないという人は是非、大宮の鉄道博物館へ行ってみてください。
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