走行距離は500km、エンジン快調のまま5年以上放置されていたCRM250です。
2輪駆動の特許内容は「カウンターシャフトからの動力をチェーンで前輪に伝達する」
この方式で某メーカーが4輪バギー車を生産したことがありましたが、発案者の吉田さんから意義申し立てを行ったところ、販売を海外向けだけに切り換えたことがありました。特許庁の権限は国内だけ適用のためです。そのために国内で生産されることの無かった駆動方式なので、何とか保存できないものかと切望します。
まずは、この車両の走行性能を体験したいと思うのですが、開発者の吉田さんがリヤサスペンションを福祉車両の懸架装置に流用するため部品取りされていますので、リヤサスペンションの手配を行いました。
89年式なので純正部品は既に廃番になっています。中古品を探したのですが、初期型のショックは鉄ダンパーでした。
そこで、2型のアルミダンパーを選びました。アルミダンパーなら現行のレーサー用部品が組み込めるので、あとでチューンアップが可能になるからです。
しかし、ショックの全長が取り付け軸距離でノーマルの350mmなのに対し、2型は380mmと30mm長いのです。
そこでアンダーブラケットの穴位置を15mm上方に空け直し、シールケースのストッパー厚みを15mm追加して合わせて30mmショック全長を詰めました。ダンパーのストロークは15mm短縮したことになりますが、ホイールトラベルを確認したいと思います。
全長詰めたショックが組み上がりましたがリンクも部品取りされていますので、製作しなければなりません。ノーマルの寸法は吉田さんの福祉車両から測らせていただいたので、加工する材料は手配しました。
来週、入荷したら加工にかかる予定です。
ショックが組み上がったら車体につけてみたくて、我慢できずにダミーのリンクを作って取り付けしてみました。
リヤサスの作動確認とホイールトラベルを測ってみたかったのです。
ダンパーのストロークが15mm減っていますがホイールトラベルは294mmもあり十分なストロークではないかと思います。
来週、リンクが完成したなら、いよいよ走行するための整備ができます。
リンク切削中です。材質はA7075、これはオフロード車のスプロケットに使用されるものと同じで、熱処理はT6を施します。
T6の前にT4を行いますがT4は溶体化処理といい、材料は一旦柔らかくなります。材料内部の応力を取り除く効果があります。
溶体化処理の後、T6即ち強制時効をおこないます。アルミニウムは時効硬化する材料として有名ですが、熱処理を行うことで短時間で所定の硬さに調質できます。
プロリンク完成、ベアリング圧入完了
圧入部内径はベアリング外径と同じ寸法で、締め代ゼロ狙いで加工すれば圧入加重が調度良くなります。
テンションロッドはアルミ化により板厚アップしてありますので、ボルトの長さに合わせて座グリ加工してあります。
プロリンク取り付け完了。廃番の部品を探す時間が勿体無いので、作った方が早いということです。
サイレンサーも壊れて無くなっていましたので、新造しました。89モデルらしく丸パイプでシンプルなデザインにしました。
これで、試乗するのに必要な加工は終わりましたが、長年放置されたらしくタイヤがひび割れていますので、タイヤ交換が必要ですね。
思いついたら即行動。タイヤショップに注文して待っているより、うちからスクーターで10分の東福寺エンタープライズに買いにいくことにしました。タイヤは18インチなので東福寺さんが現役のころ使ったやつが残っているはずだと。そうしたら予想通りホイールに履かせたやつが1本だけありました。最後の1本です、ラッキーでした。
ダンロップK695 100/100ー18をフロントに履かせた車両は、こいつだけでしょう。フロントの駆動系のため、フォーク幅が広く、ドリブンスプロケットを取り付けたハブはワンオフでアクスルシャフトも長い一品物です。右側アウターチューブに取り付けられているのはチェーンテンショナーです。
これで走行する準備が出来上がりました。近いうちに2輪駆動体験走行してきます。