耳の痛い話ですが、80年代のモトクロス全盛期に存在したレース場のうち9割以上が無くなっている現実をご存知でしょうか。
関東では新潟の川西モトクロスコース以外、全てのコースが閉鎖されてしまいました。現在はその後つくられたコースで運営されていますが、コースが閉鎖される理由は幾つかあると思います。その一つに騒音問題というものがあって、コースの近隣住民から苦情を受けて対策を迫られるということがあるようです。
2輪メーカーは、国内においてはMFJ公認車両を製造することが、目的でありますから
MFJ公認レースが開催されて、それに適合した車両が販売されれば目的は達成なのです。近隣から苦情を受けるような場所でレースすることについては対応できないということが現状でしょう。実際、全日本開催コースで苦情がでた話を聞かないですし、市街地であったとしても川口や伊勢崎のオートレース場ではモトクロスの比較にならない爆音でレース開催できていますし、その場所で暮らす人たちの認識の違いもあるでしょう。そんな折、関西方面のコースでも騒音問題で一部車種が走行を断られるという対応をされているようなのです。あちらのコースで走られているお客さんから依頼がありまして、2011モデルYZ250Fのマフラーを消音加工してみました。お客さんの話では2012CRF250レベルだと問題ないそうで、カワサキかヤマハが問題の対照となっているということです。
送られてきたマフラーはYZ250FのUS仕様のサイレンサーとエキパイで、国内のノーマルより当然、うるさいとおもわれます。比較検討のため、ノーマルは手をつけずにUSの方を加工することになりました。
よく暫定的にマフラーの出口にバッフルを装着することがありますが、チューンアップされたエンジン性能を損ねることと、バッフル長が短く、出口付近にあるため風切り音が出てしまい、耳障りな音に変わったりして満足な効果は得られないでしょう。
目的は暫定的な処置ではなく、CRF250並みの消音性能を目指すということで、取り外せる仕様にはなっておりません。
リヤパイプの内径を縮小しつつ、長さも延長しています。排気の吸い込みが有利になるように吸い込み口をテーパー状にしてあります。パンチングの太さはパワーに影響しますので細くしません。
マフラーの容積がCRFより小さいので同等にはならないですが、ノーマルに比べると違いが歴然となるでしょう。
グラスウールが消音する上で重要なアイテムになります。
US仕様に組み込まれていたのは旧型のノーマルグラス&ステンウールでしたので、ホンダ純正に取り換えました。ヤマハさんに申し訳ないですが、こちらの方が消音性能が上なので、純正部品代7600円投資する必要がありました。
CRFサイズは画像の通り量が多いのでYZ用には2割ほどグラスウールを間引かないと入りません。
エキパイもノーマルにサブチャンバーを仕込みました。騒音は1dBほど軽減されますが耳で聞いた程度ではあまりわかりません。
車検で数値ギリギリだったとすると1dB余裕ができるといった具合です。
パワーアップは殆ど変わらないでしょう。むしろ大人しい特性に変わります。直管に横穴が開いてサブチャンバーに入ることになるので排気の勢いが下がり、パワーがマイルドで騒音も少し減るということになります。
マフラーは排気することだけでなく、燃焼室と吸気系が連動していて、排気された分だけ空気が吸入されて適正な燃料がミックスされることで充填効率が上がってパワーアップに繋がるということです。マフラーに蓋をして騒音を下げるという手法は吸入の妨げになってパワーダウンすることになります。
パワーダウンは承知で、そのコースで走り続けるか、問題ない場所まで移動して走るか、いずれにしても最盛期のモトクロスから比較して、やりにくい時代になってきたと思います。