2012年8月アーカイブ

無駄なことはやってみる。そうすればわからないことが見えてくるという例です。

ちょうど10年前、レースで上腕骨折って仕事ができなかったころに企てた改造マシン計画。YZ426とCRF450の初期型以外に4ストモトクロッサーが存在しなかった時代、ミニモト用の4ストエンジンを検討していたところ、排気量2倍の法則に従い、2ストの85ccの2倍は170ccということで、125エンジンの改造で170を作ろうと計画しました。

ベース車として選んだのはTTR125でボア、ストローク 54.0×54.0。このボアを最大限に拡大したら幾つになるかということ、ピストンリングは量産純正品を流用するために機種の選定を行った結果。

最大公約数は62.5mmになりました。その結果、62.5×54.0というオーバースクエアになりました。排気量は165.6ccで圧縮比13.0:1という高圧縮エンジンです。

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足周りと車体のディメンションはCR85です。フレームを改造してエンジンスワッピングしています。タンクシュラウドはCR125用でオイルクーラーとCDIユニットが左右に振り分けて装着してあります。

エンジンのボアアップと車体作りを平行で進めて行きましたが、新規に装着したFCR28φのキャブレターが思わぬ苦労を招きました。

FCR28のTTR125に装着した例が国内にはなく、標準のジェッティングオーダーも皆無の状態でしたのでMJ、SJとニードルを複数取り寄せ手探りでキャブセッティングを決めていく作業が待っていました。このキャブレターは販売状態で走行すると、アイドリングは不能で加速中にエンジンストールしたり、走行不能なくらいセッティングが外れた状態だったのです。

大体、取り付けから問題でインテークとエアクリーナーに繋がるアダプターを製作し、強制開閉のアクセルワイヤーも付属してないので、YZ426用のワイヤーを切り詰めてタイコをハンダ付けして取り付けました。なんとか平地で走行可能な状態になりましたが、今度はギャップ通過後に息つきが起きてしまうので調べたら、MJ、SJ付近をカバーするバッフルプレートが付いていないことが原因でガソリンが踊ってしまうことがわかり、バッフルも製作しました。初めて使うということは誰からのアドバイスも得られませんから全て自分のノウハウで解決するということです。

ボアアップしたことによる問題は次々に起こりました。その前にエンジン特性はどうであったかというと、非常に低中速トルクが上がっていて、まるで別物のエンジンですが、高速はノーマルより回りません。重くなったピストンのせいというより、上がり過ぎた圧縮比のために回転上昇を抑えられている感じです。

最初の問題は2時間走行程度で来ました。オイルクーラーが熱くなっていない。即ち、オイルポンプが機能していないと思いました。そして間もなくシリンダーから異音が出てきたので、走行を止めて持ち帰りエンジンの分解点検を行ったら、なんとピストンピンが抜けて片側だけボスに刺さった状態でした。ピストンピンがクリップを打ち抜いて飛び出してきたのです。折れたクリップの破片がオイルポンプのローターに食い込んでオイルポンプを不能にしていたのです。

ピストンは4個、スリーブは2個作ってありましたので、壊れた部品は直ぐに交換して再トライしましたが再び同様な症状が出ていたので、ピストンピンが抜けてくる原因をコンロッドの剛性不足と判断し、強化コンロッドの製作に着手しました。クロモリ鋼を熱処理して硬度を上げ、断面積を増したコンロッドをつくり、クランクシャフトに組み込みました。

思惑どおり少し寿命は延びましたが、欲がでてきて高回転を改善しようとセッティング中、エンジン全開で回していたときに大破させてしまいました。ピストンがピンボスのところで割れてヘッドはバルブに衝突し、ピストンの無くなったコンロッドがスリーブを直撃して終わりました。

こうしてφ62.5のピストンが実用に耐えないということを証明する形となりました。メーカー純正品の実用強度が充分にできている裏には量産される前に数々の耐久テストと改良の繰り返しによって実現していることを改めて思い知りました。

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FCR28装着のエンジン部分。ワンオフのエキパイやブレーキペダルはエンジンスワップした車体には必須アイテムです。CR125のシュラウド装着のため、専用のアルミタンクも製作です。

ボアアップエンジンは3個のピストンとクランクシャフト1本、スリーブ2個を壊した時点で中止しました。部品代30万円くらいが授業料となりました。

エンジンはノーマルのシリンダーとピストンに戻して、しばらく乗りましたが純正のレーサーより遅い車両は直ぐに飽きてしまい、それぞれのCRとTTRの車体に戻されて売却されましたので、TTR160の実車はこの世に存在しません。

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拡大可能なボアの限界はシリンダースタッドの内側の円ではありません。タイミングチェーンの穴のほうがスリーブに近いため、ヘッドガスケットのチェーンホール側の幅が3mm程度残るくらいです。

鋳鉄スリーブの板厚も2mm程度になりますのでスリーブの剛性も限界です。

写真のピストンのスカート部に肉抜き加工が見えますが、実はピストン後ろ側にバランサーシャフトが存在して、下死点で干渉することがピストン完成後にわかり、削ったものです。ノーマルだと、勿論当たらないわけで、ギリギリの寸法で設計されているわけです。

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点検により、亀裂発見されたピストン。

ピストンピンボスの横に(矢印付近)亀裂が確認できます。

このまま使い続けるとピストンが上下に分断されてしまうことになります。

世の中にはもっと大きなピストンはいくらでも存在するわけですから、ピストンピンボス周りの肉厚不足か材質不良か熱処理の問題か、いずれにしてもメーカー並みの開発費を投入しなければ分らない案件であると思います。

2スト全盛期は老舗のチャンバー屋さんが沢山ありましたので、選り取りだったと思います。2スト全廃の今では入手困難になってしまったようで、今頃になって初めて作ることになりましたNSR250用チャンバーです。

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左右非対称のチャンバーなので2種類の型を作らなければなりません。

先ずは90度V型ツインの前バンクの方から型を決めてレイアウト検討します。

ノーマルのアンダーカウル装着のため、エキパイのカーブもノーマル同様にしないと収まらなくなります。

その結果、オフロード車のチャンバーよりタイトな曲げカーブが必要になります。

 

 

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前バンク取り付け状態ですが、このようにクネクネ曲がっています。

このあと、後バンクからのエキパイのレイアウトを検討するのですが、ラジエターとシリンダーの隙間を通って右側に出てくることになります。

エキパイのクロスは過去最高の難易度となるでしょうが、長年の経験で決めていきたいと思います。

 

 

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後バンクのエキパイは前にラジエター、下に前バンクのエキパイが干渉するので狭い隙間を数ミリの隙間を空けて通っていきます。

これでクロス部分の取り回しが完了しましたが、テールパイプとサイレンサー2本の製作が残っていますので完成は来週に持ち越しということで、今週はここまで。

 

 

 

 

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パイプ本体が出来たとしても完了には程遠いです。

サイレンサー2本作ってテールパイプの曲げカーブを決めて、サイレンサーの取り付けバランスを見なければなりません。

最初は溶接されていないパイプを手で持って取り付けバランスを確認しますが、離れて見ることができないので、目見当だけが頼りです。

接合部にマーキングして溶接して再度取り付けて確認という作業を繰り返します。しかもアンダーカウルも脱着しながらということで

作業時間は刻一刻と過ぎていきますので、お時間の約束をしても守れたためしがありません。

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ひとまず取り付け完了しました。カウル装着すると全部隠れてしまいますので、この状態で撮影です。

今回も初めて作るチャンバーでしたが、製作するのに必要な図面やモデルも無しで白紙の状態から取りかかるのです。

しかも1週間くらいで仕上げないと商売になりません。他の仕事全部止めていますからね。

今回低い姿勢での作業が多く、無理な体位で腰痛が始まってしまったことが余計な悩みです。体の老化現象が確実に忍び寄っています。あと幾年続けられるか体力だけが頼りの仕事です。

先日、地域の盆踊り大会があって、今年役員をさせられていますので設営やら模擬店の手伝いにいってきました。このへんはホンダOBが多く居住されている場所で、定年になったOBの話を少し聞きました。

早期退社で退職金と厚生年金をもらって、金銭的には余裕がありそうですが、退職後の生活のことや在職中の職務の辛さなどを考えさせられ、どうしても、自分の立場と比較してしまうのは僻みというものでしょうか。