私の実家は瀬戸内なので来島ドックや今治造船など、造船所が近くにあったにも関らず、製造現場を見ることもなく過ごしていました。物作りを生業とするようになってからは、あのように大きなものをどのようにして作っているのだろうと、大変興味が沸いてきます。
戦時中の大型船は物資の輸送を絶つために米軍に攻撃されて沈没させられていました。氷川丸は機雷に2回も当たって爆破されながら生還した只一隻の大型船です。
タイタニック号の沈没の要因の一つは船体の鉄板を繋ぐ、錬鉄リベットの強度不足と言われていますが、そのときの教訓を生かして、厚さ25ミリの鋼板は溶接継ぎ手によるもので非常に頑丈な作りであったことが生死を分けたようです。
1930年就航当時の1等乗船券の値段ですが、千円で家一軒が建った時代に5百円だったそうです。日本郵船の初任給は70円。
横浜シアトル航路の船旅が如何に豪華であったかがわかります。
欧州の腕利きの料理人を年棒1万5千円で雇って乗船させていたので、料理の美味さが評判で、チャールズ・チャプリンは好んで氷川丸を選んで乗ったという逸話もあります。
一等特別室や三等室、特別食堂室など、船内の様子も見学できるのですが、なんといっても乗り物を扱う身としましては機関室が、興味をそそられるところです。
デンマークのB&W社ディーゼルエンジンを搭載。
これはエンジン上部のロッカーアームの部分です。長い棒は下の階にあるカムシャフトの動きを伝えるプッシュロッドになります。すなわちOHVということです。
このエンジンの特徴は燃焼室がピストンの上下にあって、下降と上昇のそれぞれの燃焼を発生させて運転しています。
したがってカムの下側にもプッシュロッドを介してバルブ開閉が行われています。
これが中央のカムシャフトの動きを受けるプッシュロッドの先端です。カムの接触部分は別の油圧ポンプから送られるオイルで潤滑されたローラーで受けています。
4気筒を2連装したエンジンで一つのプロペラを回します。
左右に8気筒あって舵の両側にプロペラは二つありました。
今では展示用にカットモデルになったエンジンなので、クランクケース内のクランクシャフトも覗くことができます。
このような大きなエンジンを組み立てる技術者の腕前に感銘を受けます。
こんな大きなエンジンですが、始動は只1人の機関士が行うそうです。
機関室にはエンジンとは別におおきな発電機や油圧ポンプ、ボイラーやコンプレッサーが整然と配置されており、エンジン始動はコンプレッサーで起こした圧縮空気を燃焼室に送り込み動かすそうです。
これは操舵室の舵輪です。
航海士は機関室に指令を出しながらエンジンの運転状態を決定していたようです。
即ちアクセルとブレーキは航海士の音声を聞いた機関士が切り替えを行っていたということになります。
こんな貴重な船内の見学をたったの200円で体験できる、氷川丸を気に入ってしまいました。いつまでも保存していただきたいと思います。
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