2013年9月アーカイブ

先週末、つまらん仕事に手こずり予定が狂ってしまったので時間を取り戻すために日曜も業務でした。おかげで先週完了予定だったサイレンサーを今朝発送できました。

CIMG2731.JPG

 

YZ85サイレンサーですが、ミニモト用商品としては一番多く作ったと思います。

2ストトレール用チャンバーに並ぶ主力商品となっています。

本当は新機種のマフラーを作りたいですが、大きいメーカーが競って新商品を出しますので、零細な個人商店は出る幕がありません。

そこで、どこもやっていない旧式マシンのマフラー作りが回ってくるという寸法です。

暇にならなくてありがたいことです。

 

CIMG2738.JPG先週預かったサイレンサーの修理をサクサクとやっていきます。

削れた部分を切り取り、新しいアルミ板を板金で丸みをつけた後、仮止めします。

気をつけることは、元の板と段差ができると溶接後に修正が効かないので、繋ぎめを同じ高さで止めるということです。

溶接で歪みますので、仮止めは多い方が狂わないでしょう。

 

 

 

CIMG2739.JPG全部溶接してからビードを研磨仕上げした状態です。

繋ぎ目がなるべくわからなく仕上げるところが腕の見せどころですが

あまり上手じゃないですね。

実は新しい物を作るより、部分的に修理して元どおりにする方が困難だったりします。

このエンドカバーは純正部品で¥4000で購入できるので、迷わず新品に交換した方が手間がかからないです。

しかし、私は部品交換屋ではないことを示したいために敢えて板金溶接することを選びました。

CIMG2737.JPG

 

削れてしまったサイレンサーボディは5cmカットしてリベット穴を空ければ再使用できます。

インナーパイプも5cmカットして差込部分を溶接します。

2013モデルのサイレンサーは5cmカットしても音量規制をクリアできることを確認してあります。純正品は消耗も考慮して騒音に対して余裕をもった仕様になっているのです。

全長が長いので、転倒でエンドカバーが衝突しないためにも短い方が有利です。

 

CIMG2741.JPG

板金修理したエンドカバーに色気を持たせるためにバフ仕上げとしました。

5cmショート化とポリッシュによる輝きでノーマルサイレンサーとは違った外観になるでしょう。

傷ついたから、あっさりと社外マフラーに取り換えるよりも、個性的になるとは思いませんか。

 

 

 

 

 

関東選の翌日、オフビレに伊田選手のお店で使うスノースクート用フレームの改修のため、打ち合わせを兼ねてMX練習に行きました。

偶然隣に止めてあったバイクキャリア積載のCRF250のマフラーが酷く削れているのが気になりました。暫くして持ち主が戻ってきたら、昔のミニモトライバルでした。彼の乗っていたCR125のチャンバーやアフリカツインのマフラーも作ったことがあったので思い出しました。

CIMG2728.JPG

 

問題なく乗り回していましたが、「これはどうした?」と尋ねたら

関越道でキャリアから落として引きずった、と言います。

タイダウンが引っかかっていたので、後続車に衝突されることは無かったのが不幸中の幸いです。

ハンドルもメチャメチャになったので取り換えましたが、マフラーは中身にダメージがないので走行に支障ありません。カッコ悪いだけです。

部品交換で治せばよかろうと思いますが部品代はマフラーボディ単品で¥42700もします。リベットも20箇所で¥1600します。交換工賃¥5000でやったとしても5万円オーバーですから悩むところです。

修理代5万円出すなら、社外のマフラーに取り換えてしまうところです。このマフラーは純正で¥88000もするのに驚きです。お金持ちでないと、なかなか取り換えないでしょうね。

しかし、彼は東京ドームの近くで飲食店を経営していて今度2店舗めを出す予定の実業家ですから新品交換などわけないことだと思います。しかもお気に入りの国際A級ライダーに現金スポンサーもしているそうです。

CIMG2730.JPG

その彼が私に「どうすればいいですか?」と聞くので

ダメなとこだけ作って取り換えればいいんだ、という具合にいつものように安易に答えてしまった責任をとるために、練習後マフラー外してお持ち帰りすることになりました。

修理代大幅削減は確実ですが、これにかかっていると仕事の予定に影響がでますので、納期はゆっくりでいいという確認をとって、再来週くらいに治したいと思います。

彼と彼の奥さんはスノースクートにはまりつつあるのですが、マイスクートを持っておらず、今度伊田選手のお店へ行く約束をしていましたので、スクート2台買っちゃいそうなので、伊田選手もうすぐ儲かりますね。

仕事というものは一人だけでは成り立ちません。需要と供給、そして自分の持ってないものを補ってくれる人脈が大事という一例でした。

今週は借り物のPCで更新しております。

我社から最も近いサス屋さんのBLITZ・SCHNELLでフォークスプリングの試作を依頼しました。

同社は(株)ショーワと取引されているので、非買品のパーツを頼める心強いショップです。

CIMG2561.JPG

 

5月に動作確認のため試走した2WDのフロントフォークに入れ換えるためのスプリングです。

この2WDはフロントの駆動系だけで10kgの重量増となっており、ノーマルのフロントフォークでは性能不足は明らかでした。

操舵系の等速ジョイントのベアリングホルダーがボトムブリッジに衝突するため高速でギャップを通過するときに危険な状態になるため、なんとか改善したいと考えてフォークスプリングの強化を計画したものでした。

 

CIMG2727.JPG

このマシンは月間ガルル1992年1月号に試乗インプレッションが掲載されていましたので覚えている読者も多いのでは。

開発者の吉田さんと打田編集長が仲がよく実現した取材だったと聞きましたが

雑誌では取材協力者の不利になることは書けないので、記事の中ではフロントサスやハンドリングの問題点は濁して書かれています。

只、これからの改善すべき課題とだけ書いてありましたが、譲り受けた私が改善の続きを行うことになろうとは、当時からすれば夢にも思わないことだったでしょう。

2WDが実用化されない理由が試乗することで分かった気がします。先ずハード路面のオフロード走行には適しません。スタックする路面やグリップの悪い登坂においては1WDを凌ぐはずですが、普通のギャップ走行で、乗り手のテクニックが必要になってくる上、製造コストが増えるということで、メリットが少なかったことによると思います。それでも保存する上で少しでも走行性能を向上させたいというのが技術者魂ではないでしょうか。

 

CIMG2726.JPG

下がノーマル(若干ハードスプリングかもしれないが履歴が不明)

上2本がBSさんからショーワ関係の試作屋さんに頼んでもらったハードスプリング。

当初は88年式のCR125のオプションで出ているハードスプリングに取り換えようと安易に考えましたらスプリングの外径がφ37でCRMのインナーパイプに入りませんでした。

CRMのスプリング径はφ35なのです。88CR125のハードスプリングはホンダの最後の在庫でした。ほしい人があれば安価でお譲りします。

 

従ってCRMに装着可能なφ35、L=530mmで最大限度のバネ定数ということで依頼しましたら、15%増しのバネ乗数で仕上がってきました。

スプリングのデータを参考までに記します。

ノーマル K0.487 線径φ4.82 外径φ35  ピッチ12 巻き数42  L530

ハードSPG K0.560 線径φ4.8 外径φ35  ピッチ14 巻き数36  L530

88CR125ハード K不明 線径φ4.7 外径φ37 ピッチ12 巻き数41 L514

CR125のバネ定数はパーツリストまたはSマニュアルに記載されています。

材料の熱処理状態が不明で縦弾性係数の数値から計算で求めることができませんので、バネ定数は、ばね試験機で圧縮して、荷重と変位のグラフから読み取る方法で計測します。

15%のバネ定数アップで10kgのバネ下重量に対応できるかどうかは次回(たぶん来年春)の動作確認のときにテストする予定でいます。