ドローイングナンバーと読みます。図面番号のことですが、そのまま部品番号となって、製品を作ったり部品発注する基の番号となります。
今回はパーツの在庫が無くなってバックオーダーになった部品の製造ですが、ひょんなことから溶接工程だけ請け負う3次メーカーとして働かせていただきました。
6角パイプにフランジを溶接するだけの単純な作業ですが、久々に量産気分です。
元請けの会社、N田製作所さんの経歴と驚異的加工技術に魅了されることになりました。
これは6角パイプとフランジの手配と穴加工がN田さんの領域です。
一本あたり8箇所の穴加工があり、108点なので864箇所,板厚4,5mmにφ8,5の穴を空けるのも大変なことですが、特筆すべきはパイプ内側にバリが一切出てないことです。パイプ内面ですから面取りは不可能です。
どのようにしてバリの出ない穴空けをおこなうのか?その手法をN田さんに聞きました。
原理は分かりましたが実際やるとなると、私の技術では到底無理だと思いました。これが加工職人の技術力です。
2次メーカーですから一般ユーザーに部品がどこで製造されたかはわからないでしょう。
しかしN田さんの加工品は2輪ユーザーならほぼ100%お世話になったことがあるはずです。
たとえば、キックアームのボス、鍛造素材に穴加工して内面にセレーションを割り出し加工とか。
横型単気筒エンジンのインテーク、鋳造のエルボーの両端に角度の付いた面だしとオフセットされたフランジのボルト穴加工。
ドラムブレーキのアームやカムの加工、セレーションは割り出しして位置決めのポンチ打ちとか、
誰でも見た事のある部品たちですが、どこの会社で加工したか知らなかったのです。
こんな物もあります。
4気筒のセンターにタイミングギヤがあるタイプのクランクシャフトとか、当然ギヤより大きい外径の丸棒から削り出しです。
コンロッドなどは単純な方、アルミメッキシリンダーの内径研磨とポートの面取り。
これらに共通することは加工難易度が高く普通の加工屋さんが嫌がる(加工不良になる可能性が高い)品物ばかりということです。
N田さんは御歳70過ぎですから経験50年以上のベテランでしょう。
親会社はこういう難易度の高い加工を押し付けてこられますが、後継者はいないので将来困ることになると思います。
加工できる会社は多く存在するでしょうが、問題はコストを決められていますので、難しく手間の掛かることに高額報酬を求める会社では親会社の要求に応えられないのです。
こんな物も見せてくださいました。
ブレーキホースの加締める前の金具です。ブレーキ液漏れなど絶対あってはならない重要保安部品ですが、その内部の加工も超A級難度だと思います。
これの加工には特殊な刃物を自作して単能機で対応したそうですが、刃物代は殆どかからないそうで
クズ鉄屋へ行って捨ててある超鋼チップをもらってきてロウ付けバイトをこしらえるので、特殊刃物で汎用品は無いそうです。
ブレーキホースのメーカーに日輪ゴムという会社がありますが、ホンダは最初、日輪ゴムにバカにされたそうです。「直接取引はしない、製品がほしい場合はマツダかNISSANを通して買ってくれ」と言われたそうです。
N田さんは見事にホース金具を作って見せました。技術力の高さを専門メーカーに認めさせた瞬間だったと思います。
身近に貴重な加工技術者がおられて、何10年も2輪車の製造分野を支えて、今でも現役であることがわかったことに感動いたしました。
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