飛び込みの修理は受け付けておりません。それは長期間お待ちいただいている仕事に専念するためです。それと同時に、エンジン修理などはここでなくても直せる業者さんは多数あると思います。
そういうわけで、修理依頼は他の手段をお勧めすることにしています。
今回は知り合いの頼みなので、バイク屋へ行ってくれ、というのも角が立ちますから
先ずは状態を確認するために、お預かりしました。
KDX220SRですが、症状はピストンが割れてしまったのは分かっていて
どうやらクランク室に穴が空いているので
塞いでほしいということです。
仕事終了後にクランクケースをばらして洗浄します。
Rケースですが貫通して大きな穴が空いています。
予想した最悪の場所の欠損です。
溶接肉盛りしたあとケース合わせ面を正確に擦り合わせなくては使えません。
Lケースも欠損まで行ってませんが、荷重でずれていることが確認できます。
全体的にオーバーホールの時期だと思いますが、あまり金を掛けたくはないと思います。
また、こういう物を直して使い続けることより
新しいマシンに投資していただいた方が
オーナーさんのためだと、個人的には思っていますが、そのへんの判断は私が決めることではないです。
翌日、オーナーさんに破損状態を確認してもらって修理することで合意しました。
大きな欠損のあったR側ケースの穴は
ピックアップした破片を溶接しました。
亀裂のあったL側ケースは溶接にて肉盛り
デブコンで埋めるという案がありましたが強度保証できない理由で却下しました。
可能な限り母材に近い修復を試みるのが正統なやり方と思うのです。
肉盛りは最小限度にケース合わせ面より
少し高めにするのがコツです。
後の面出しの手間を掛けないためです。
クランク室側はエアグラインダーで
均します。
ケース合わせ面はオイルストーンで
面研します。
面出し完了の目安は、凸凹がある状態では
オイルストーンが滑り安定しませんが
急に摩擦抵抗が出る瞬間があります。
そのときが平面度が上がった状態です。
面研完了したらRLケースを合わせて
ボルト締めします。
修正部分が浸るように熱湯を注ぎ
気密漏れがないか確認します。
何故熱湯か?
ダイキャストの溶接はピンホールが出来易いので、冷間で塞がっているピンホールも熱膨張すると漏れる可能性があるので
熱湯で膨張させてみると完全にわかります。
漏れると再研磨になりますが、これは全く水漏れなしで合格でした。
後は交換部品が入荷したら組み立てるだけです。
オーナーさんから、「組み立てまでやって幾らだ?」と聞かれたので
知り合いだから「5千円くらいでどうですか?」といいましたら(部品代別途)
「それは駄目だ、もっと取ってくれ」とおっしゃるので、1万円くらいにします。
低品質の修理に飛び込みとはいえ、高額を請求するつもりはありませんので快諾ですね。