全日本シーズン前になると毎年作っている気がします。
YZ250Fのノーマルマフラーを改造しているのです。
マフラーを変更するには根拠が必要です。
手間をかけて作り変える根拠があるのですが、ノウハウに関わる部分は公開できません。
そのかわり、マフラーの役割について解説しましょう。
多くの人はマフラーは排気を促進する機能があると思うでしょう。
それは逆で、排気を滞らせる役割を持っているのです。
排気ポートが開いて高温の排気ガスが音速で排出されエキパイを通ってマフラーへ達しますが、排気ガスは水の流れのようにパイプを流れているわけではありません。
圧力の高いところから低いところへ移動(膨張)しようとして
高圧の燃焼室から圧力の低いマフラー側へ移動すると考えるのが正しいです。
そして排気ガスが必ずしもパイプの後ろに移動するわけではありません。
排気ポートが開いていれば燃焼室へ戻りますし、吸気バルブも同時に開いているタイミングではインテーク側まで達します。(バックファイヤー)
以上のことを踏まえて、音速で移動した排気ガスの後に起こることが問題になります。
移動した排気ガスの後は真空状態になります。
このことを利用してマルチエンジンでは次の排気を負圧で引張り、排気速度を増す集合管の方法がありますが、ここではシングルエンジンに限定して考えます。
もし、マフラーが無かったらどうなるか、排気は一瞬で完了して大気中に爆音となって拡散していくでしょう。最も早い排気の状態ですが、それと同時に燃焼室内に吸入された混合気も負圧で引っ張って排出するでしょう。
直ぐに排気ポートが閉じて混合気の一部は燃焼室に留まって、次の圧縮、燃焼へ繋がっていくでしょう。
そこで排気された一部の混合気は本来燃焼してエネルギーになるはずのものが、無駄に排気してパワーダウンを起こす要因となってしまうわけです。
上記は分かりやすく極端な例を挙げましたが、要するに抜けのいいマフラーがパワーアップする根拠にはならないということです。
音速で排気された後の真空を適当にコントロールできれば吸入された混合気を逃がさないで本来のパワーを発揮することができると考えるのです。
それができるのが、排気の圧力を適当に減衰させるマフラーです。
純正のマフラーですから中身に問題はありません。信頼性の高い構造を採られていますから使わない手はないです。
排気ガスの圧力をコントロールするのに
エンドパイプの仕様を変更して調節しているわけですが
金型作って成形するには生産数が少ないですから資金的に無理です。
そこでステンレス板を板金して拵えて、現実的な価格に抑えようとしています。
異形断面のサイレンサーにインサートして
φ5の穴8か所がずれることなく一致しなければ装着不可能なので非常に慎重な作業です。
サイレンサー本体に仮組みして
8か所の穴にM5ビスを取り付けて装着確認後、バフ研磨して完成です。
ノーマルはリベット止めなのでM5ビスに変更することでメンテナンス性が向上しています。
明日は積雪の予報なので発送は週明けということにします。