1911(明治44)年、奈良原三次が自身で製作した日本最初の国産機による飛行に成功。
その前年に代々木練兵所で徳川好敏がアンリ・ファルマン機(仏製)で日野熊蔵がハンス・グラーデ機(独製)による日本最初の飛行が成功しました。
それから100余年、2回の世界大戦中や戦後も発展を遂げ続けた航空史をダイジェストで見ることができる日本屈指のミュージアム、所沢航空発祥記念館。
GW中に行くのが恒例になってきました。
自動車用エンジンとは方向性が違うため、比較する意味はないですが、レシプロの基本原理は同じで
大きさや機構の複雑さでは圧倒的に航空機用がスゴイ。
他にもターボ・シャフトエンジンやジェット・エンジンも展示されていて、これらに関わることはあり得ないですが鑑賞用としては自動車エンジンより興味深いではないかと思いました。
ホンダ・エアクラフトのジェット機も新色がそろいました。
先輩が出展している模型クラブの展示会は毎年この時期に開催されているので鑑賞しに来ました。
いつも超絶技巧に驚きますが
主催者メンバーは、元航空自衛隊や
高校の校長先生など博識の高そうな方々で、造形や塗装テクニックはもちろんですが
実機の詳細にいたる知識がなくては、このような精巧なモデル制作はできないでしょう。
ミグ29戦闘機
世界最速の戦闘機ですね。
本物はまず見る機会ないです。
だけど模型なら見れる、ここへ来れば。
F14戦闘機
今回のテーマは世界の戦闘機
年代別に主要国の機体が100機以上展示されています。
展示室の最初にでてくるのが
ノース・アメリカンT・6G
1952(昭和27)年、アメリカ陸軍、空軍から契約して航空自衛隊の練習機として導入された機体。
ライカミングT53 軸流式5段+遠心式1段
タービンシャフト・ターボプロップエンジン
軸出力1100shp
タービンシャフトはヘリコプター用
ターボプロップはプロペラ軸を回す用途だそうです。
川崎重工がライセンス生産したエンジン。
アリソン・ターボシャフトCT63 M5A
1958(昭和33)年、三菱重工業がライセンス生産開始したタービンエンジン
軸出力317shp(シャフト・ホースパワー)
軽ヘリコプター用
燃焼室カバーの造形が美しくて、萌えます。
岸燃え美
ライトR・1820 カーチス・ライト社製
星形9気筒
排気量29874cc
ヨーロッパ戦線で対ドイツ戦略爆撃に活躍したボーイングB17フライング・フォートレスに装備されたエンジン。
1956年(昭和31)航空自衛隊中級練習機、ノース・アメリカンT28Bに
86型(1425馬力)を装備。
三菱重工製 星形14気筒エンジン
墜落機から取り出されたのか損傷していますが
主軸の周りに遊星ギヤが露出していて
オーバーヘッド・バルブのプッシュロッドを
駆動する方式が想像できるカットです。
同エンジンですが
ヘッドカバーが損傷しているおかげで
バルブスプリングやロッカーアームらしきものが露出していて
現代の4サイクルエンジンとあまり変わらない構造だったことが分かります。
しかし、冷却フィンの造形など
2輪車では見たことも無い細密な鋳造だと思います。
今回の催しの一つ
フランス航空教育団100周年パネル展示であります。
第一次大戦中、同盟国だったフランスに要請し、日本の脆弱な航空技術に対し
操縦や機体製造の分野で技術指導をいただいた記録を写真と解説で展示されています。
国産エンジン黎明期
岐阜県各務原でのエンジン製作
ル・ローン空冷式回転星形9気筒を製造中。
所沢では機体の製造も開始していました。
フランス航空教育団はフランスクレモンソー首相の任命でフォール陸軍中佐と62名を派遣。
1918(大正7)年11月マルセーユ港発
1919(大正8)年1月長崎へ入港
神戸から東京は陸路で到着。
黎明期の日本の航空に多大な影響を与え日本の航空や工業技術の基礎を植え付けることに貢献しました。
富士山を上空から初めて観察したとされる機体
ブレゲー14B2
大正時代にジュラルミン製の骨格を採用していたなど、当時の日本の工業技術では当分できなかったことでしょう。
当記念館の敷地も当時は滑走路もあったようですが写真のとおり、草ぼうぼうの状態ですね。
一機18000円はどれくらいの価値でしょう。
昭和5年にマン島TTレースに出場した
多田健蔵さんのベロセット350は2千円で東京に一戸建てが買える値段ということでしたが、家10件以上?
大正期ですからもっと価値があったでしょう。
石川島播磨重工 J3・IHI・7B
日本が戦後初めて独自開発、量産した純国産ジェットエンジン。
離昇推力1400kg/12700rpm
防衛庁が指示して航空自衛隊、中級ジェット練習機
富士T・1に装備されました。
後方の長い円筒から燃焼ガスが噴射されて推力を生みだします。
マフラーとは違いますが円筒が長い方が
四方八方に拡散することなく後方に噴射する圧力が生まれるという考えに基づいていると思います。
空を飛ぶものですから陸を走るもの以上に重量やスペースに厳しい制限がある中、他社(他国)に負けてはならない使命を負って進化を果たしてきた航空の歴史や技術にリスペクトする休日でした。