トレールというカテゴリーを築いたヤマハから発売された初期の最大排気量モデルがRT1、360ccです。
大阪万博開催の70年モデルですから、もちろん実車は見たことがありません。
そんな古いモデルのチャンバー修理することになろうとは想像もしてませんでした。
もとい、凹み修理は74年型YZ250Bでエキパイ製作はRT1に着けるDT1用MXチャンバーです。
すごい複雑な形状のプレスチャンバーです。
(これは74年型YZ250Bとのこと)
跳ね石のせいでしょうか、前面がボコボコに凹んでおりますが
ここを見栄えが悪くないように直すという依頼です。
エキパイがジョイント式になっており
通常の水圧成形は無理な感じなので
切開板金することにします。
一般部の切断をなるべく避けて
溶接個所を剥離して分解しました。
年式の割には鉄板が腐ってないので
修理に問題なさそうです。
直すべき凹みは、この二つです。
裏から当て金をするのが容易なので
可能な板金修理です。
凹みが深く入っていたので完全ではないですが、目立たない程度に直りました。
これ以上叩いても変わらないと思いますので
これを元の位置に溶接します。
これは溶接後ですが、難易度が高かったです。
パイプの内側にカーボンとオイルが混じったタール状の膜が堆積しており容易に除去できません。
洗浄液で洗いながらワイヤブラシで擦っても殆ど落ちませんので
そのまま溶接するとどうなるか
オイル分が燃えるので、アーク熱でパイプ内側から火炎が出ます。
するとパイプ接合部から燃焼ガスが噴き出してきて、シールドガスを飛ばしてしまうので
溶接が中断されます。
燃焼により酸化物が溶けた鉄に巻き込み
溶接不良になったりするので、火炎が消えるまで度々中断して、健全な鉄板同士の溶接なら10分でできるところを、1時間以上かかって全周溶接です。
それだけでは溶接欠陥だらけなので全部ディスクサンダーで粗削りして再溶接して健全なビードにやり直します。
腐食した鉄板は再生不可、タールが付着したパイプは一旦焼いてから溶接することにします。
これはRT1の車体に中身空っぽのDT1ダミーエンジンが載せられたものです。
エキパイが切り取られているチャンバーが付いていますが
失われた部分だけを新造するという依頼内容です。
DT1のエキパイを参考に
パイプを膨らましました。
パイプ径と曲げRを再現したものです。
これを実車に合わせて丁度良い位置で切断して使います。
ダミーエンジンと切断されたチャンバーに当てがって形状決めたパイプと口元です。
ノーマルは内側にOリング2本入るのですが
差し込んでコーキングだけでよいということなので、排気口に0.1mm隙間の内径に加工してあります。
溶接組立て完了しました。
エンジンDT1なのでDT1用MXチャンバーになりました。
凹みの板金修理と、部分製作と
二通りの修理方法やってみました。
どちらもイレギュラーな作業なので、最も安価な方法と直し方の洞察力が発揮される場面です。(どうやって直すかの判断を求められているということ)
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