4スト全盛の若手諸君には意味不明とは思いますが
70年代にモトクロッサーが市販化されて以来、エキスパンションチャンバーの取り回しは
シリンダーヘッドの上とガソリンタンクの下を通ってシートレールに沿ってテールパイプを後方に配管した形が定番でした。
とても理に叶ったレイアウトで横の張り出しが少ないレイアウトですから、転倒時のパイプへのダメージが少ないデザインであったと思います。
ところが88年に今まで見たことのないレイアウトのチャンバーを付けたモトクロッサーが発表されます。
これが2輪史上初のローボーイと呼ばれたレイアウトのチャンバーです。
当該車両は89モデルですが
88モデルと同じ金型で製造された部品です。
これまでのアップタイプに比べると
車体の低い部分に横幅が広い形状であることが分かります。
このモデル以降、ホンダだけでなく他の全てのメーカーのモトクロッサーにローボーイが採用されていくことになります。
そのため多くのモトクロスライダーが転倒によるチャンバーの凹みという問題に悩まされることになるのでした。
では何故、これほど転倒によるダメージを避けられないデザインに移行したかというと、低重心化を実現するために、メインパイプを下げガソリンタンクを低い位置に下げる車体の設計をしたためです。
ただでさえロングストロークのサスペンションを備えた車体ですから運動性を上げるためにはマスの集中化が不可欠だったでしょう。マスの集中化⇒前後方向と上下方向、具体的にはリヤショックを中央よりに
タンク位置を下方へ、その結果排気系は下へと改変されたわけです。
このチャンバーもお約束のように凹んでいますが
保管状態がよかったためか
殆ど腐食してなく板厚が完全に維持されていますので修理します。
凹み直りました。
何回も公開してきたので
飽き飽きするので
修理工程は省きます。
先週はこれに集中していました。
KX85チャンバーとサイレンサーです。
隣の県から電話でお問い合わせだったのですが、
「去年から通信販売は中止しました。来店のお客さん中心の業務になっております。」
レース用のチャンバーですからレース日程に合わせた納品ということも難しいということで
いつできるかわからないというお返事をしておいたのですが
そのお客さんは直接来店されて、2台分全額代金をお支払いの上、納期はこちらの都合でいつになっても構わないとおっしゃるので、逆にお断りする理由がなく
長期間代金をお預かりするわけにいかず、予定変更で製作実行に至ったものです。
今月中に新型投入予定のチャンバーに取り掛かりたいので、3月は全く日程に余裕がありません。