パーツリストなどでは排気系というカテゴリーで分類されているチャンバーという部品ですが
完成車組み立ての観点から、エンジン部品だと思いますか、それとも車体部品だと思いますか?
エンジンの動力性能に関わるのでエンジン補器であるか、エンジン組み立ての後、取り付けはフレームに搭載してからという順番なので車体部品と考えるか。
これは某廃盤のチャンバーから測った諸元(スペック)をストレート図で表した模型です。
エンジン設計では、このストレート図までを図面化して、車体設計部門へ引き継ぎます。
すなわち排気系のレイアウトを決めて配管を行うのは車体設計の役割になります。
従ってチャンバーやマフラーはエンジンでなく、車体部品ということになります。
私は開発者じゃないので、オリジナルチャンバーを作るときは図面値に極力近い寸法で
製作します。
ところが、図面は設計部門と製造部門で機密管理されて部外者が見ることはできません。どうやって図面値を知りえるかというと、純正部品を実測することで知ることができます。
2輪メーカーの純正チャンバーは1日に何百台も製造できるように金型を使ってプレス成型されたものです。ブレス成型された鉄板をモナカのように張り合わせて作ったパイプの外周を計測するのですが
縦と横の数値が違っていて、真円でないことが分かります。
鉄板を金型で絞った場合、半円まで絞ると高圧で雌型に食い込んでしまい鉄板の型抜けが困難になるので若干の勾配をつけた断面形状で金型設計する必要があります。
そのため、勾配が付いた半分のパイプを張り合わせたら真円になりません。
パイプの図面値は真円で設計されているはずですが製造上の問題で図面値でなくても量産することにしているわけです。
僅かな寸法差で性能にバラツキがでる部品なので、まずは図面値どおりに作り直すことがオリジナルチャンバーを製作する理由なのであります。
余談ですがエンジンのファインチューニングで吸排気ポートの研磨を行うことがあります。
シリンダーヘッドは鋳造で製造されますがポート内部には砂をレジンで固めた中子を入れて注型します。
この中子を成形するときに金型の合わせ面に段差やバリが出ることがあります。それが製品に転写されて残るわけですが、量産では手仕上げで均されることはないので図面値にない段差やバリを除去する作業はエンジンを図面通りにするということですね。
燃焼室内のカーボン除去も、カーボンは図面にないものだから除去する。
そうやって内燃機関の効率を設計どおりのものにする目的です。
では車体部品、チャンバーのワンオフ製作ですが
ここからは板金屋の仕事になります。
寸法測定したストレート図の模型は
中心の棒がパイプの長さを表し、
円盤がパイプの内径を表します。
そして中心の棒を曲げた形は車体に合わせてレイアウト検討の指標となるものです。
この形状でパイプの基となる展開図を作成します。
エキパイ部分のカーブですが排気ガスは流体なので、カーブを流れることによって
ストレート管に比べて損失が出ます。
だからなるべく滑らかなカーブを描くように膨らまし成型とします。
後半はカーブがないので設計通りに作りやすい巻きパイプとします。
パイプの成型ができたので全体のレイアウトが車体に適切かどうか実車に仮組みして
確認してから、溶接作業に掛かります。
私がお客さんに提示させていただいている
型制作の中身はこういうことです。
溶接完了しました。
車体取り付け、アンダーカウル装着確認
諸元は老舗チャンバー屋の設計なので
私の責任ではありませんが
寸法的に見て、よく回りそうです。
車種は非公開ですが、オーナーさん以外から同じ物を頼まれても作らないことにします。