エンジンメンテナンス2台、ヤマハとカワサキで重なってしまったので
丁度NEWピストンがあるうちに、見比べしてみました。
シリンダーヘッドメンテナンス
タペットクリアランスが車体装着状態で
計測すると全くあてになりません。
バルブフェースにカーボンや砂粒を噛んだ状態で、特に吸気側のクリアランスが広過ぎて機械的な寸法でないことが推察されます。
そのためバルブは全て外して燃焼室やポート内、クリーンに清掃してからカムシャフト乗せるまで再組立てしてクリアランス測定するのが正しいと思います。
左はカワサキKXのピストン
右がヤマハYZ用です。
一目みてわかること
KXはピストンヘッドが全面黒皮に対し
YZはトップとバルブリセスが機械加工になっています。
KXの黒皮は金型鋳造、ダイキャスティング製法で造形されたとわかります。
センターだけ切削された跡になっているのが
湯口でヘッドを下にした金型構造で下から
低圧で溶解した金属を注入し
ピストンスカート方向にお湯を押し上げながらガスを上方に抜いて欠陥のない鋳物となります。
それに比較してYZは鍛造素材を削り出して作ったフォージング製法だとわかります。
鍛造の場合は型底に特徴があって、表面が滑らかであること、それ以外は金型表面を高圧で金属が滑って造形されるので摩擦痕がみられます。
製造上のメリットとしてはダイキャストの方が加工時間が短縮でき、比較的安価である。
鍛造は何百トンもの高圧に繰り返し耐えられる金型構造のため造形も大がかりでその後の加工時間もかかるため、鋳造品よりは高価になります。
材質的にはADC12とA6061の溶体化処理後の強制時効硬化の熱処理行って
素材の硬さを調整しています。
鋳造より鍛造の方が金属の密度が高く、同じ肉厚なら鍛造素材の方が強度が高い、
従って薄肉に造形して軽量化が可能ということです。
ピストンの設計者が一番思考を凝らすところが、裏側のリヴ構造だと思います。
ピストンヘッドに燃焼圧力を受けたら
主にピストンピンのボスに荷重が集中しますから、ボスの周辺が厚肉になっていて
それ以外は応力を分散させてピストンの歪みを抑える薄肉のリヴに支えられています。
実はエンジン部品の中で一番高熱に晒されるのがピストンで熱膨張による寸法の変化がエンジン性能や耐久性に関わってきます。
そのため如何にピストンヘッドの高熱をシリンダーボアに伝達して冷却するか、ということが、応力と熱歪みの両方の要素で設計された答えだといえます。
鋳造品は裏側も均一な鋳肌と
金型に食いついた製品を取り出す、押し出しピンの跡が確認できます。
鍛造品は全体的に硬い金型を素材が滑った
摩擦による傷や光沢が確認できます。
リヴを横からみると表面状態が明らかに違います。
エンジンキャラクターを決める、寸法諸元はどうかというと
KX ボア×ストローク 78.0×52.2mm 249cc
YZ ボア×ストローク 77.0×53.6mm 249cc
どちらも超オーバースクエアで1mm
違いのボア設定ですがKXの方が高回転型を狙った設計であることがわかります。
圧縮比はKX14.1:1 YZ13.8:1
とてつもない高圧縮比ですが、燃焼効率的に同じ燃料燃やすなら圧縮比が高い方が仕事率=馬力が上という計算上の理屈があるのですが、実際はもっと複数の条件が絡んでいるので、乗ってみてのお楽しみというところでしょうか。
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