去年の5月からお預かりしているXT500の車体ですが、その目的は
オーナーさんがレストアして新規登録するためにノーマルマフラーが欲しい。
しかし50年前に製造された車体なので残っていたとしても腐食して使い物にならない
改造マフラーならいくらでもあると思いますが、陸運局へ持ち込むため型式認定当時の仕様に準じておく必要があるということ。
安易に引き受けてしまったものの、分かるのは外観だけ、金型も無いのにどのようにしてノーマル仕様のマフラーを作ったらよいものか途方に暮れて、何も進まないまま9か月が過ぎてしまいました。
貴重な現存するノーマルマフラー。
腐食していて実用には耐えないはずなので
これでエンジン掛けることはせず
なるべく忠実に同仕様マフラーを作って取り付けるのが目標です。
唯の箱のようにみえますが
外側に何かの逃げのためか
凹み加工とヒートガード取り付け用のネジが4か所ついていますので
これに似せた外板を作っていきます。
金型がないのでプレス機で一発成形というわけにはいきません。
鉄板を切って叩いて溶接して、工場板金で拵えた外板に
凹み加工をするための治具を作ります。
この部分だけで2日掛かっていますが先は長いので黙々と進めていきます。
治具にセットして油圧プレスで棒を押し込んで加工します。
凹み3か所なので3回位置を決めて成形します。
図面などは無く、目測による作業です。
鉄板で上下から挟んで拘束しておかないと
棒で押した周辺が反ってしまって変形するので、このような工法で行っております。
ヒートガード取り付けネジですが
4か所共、平面でなく高さや角度も違っているので、取り付け治具で穴位置や傾きを合わせるようにします。
ネジは旋盤で作っておいて外板の裏から溶接で取り付けます。
ここまで作りましたが、箱を閉じる前に
内部構造は分かっていません。
ノーマルの音を再現するためには
中身を同様にしなければなりません。
中身を仕込んでから左右の外板を溶接で閉じることができます。
全然わからなかったですが
内部構造を見るために、切って構わないとオーナーさんから許可を得ているので
車体内側の外板を切り開かせていただきました。
なるほど排気の流れが判明しました。
エキパイが部屋の奥でUターンして
前向きに排気しています。
部屋の後ろ側から3角形の部屋へ導くパイプを通って、
後方のサイレンサーへ向かう流れとなっています。
まだまだ完成は遠いです。