ヤマハの市販モトクロッサーYZ250の初期型は1年限りのツインショック、74年からモノクロスサスに変更されるので希少なモデルです。
73年の僕は小学6年生でオートバイとは全く無縁の生活でしたのでオートバイという乗り物を百科図鑑でしか見たことがありませんでした。
最初に興味を持ったのは中学2年のころ、家で取っていた朝日新聞の広告欄で「月刊オートバイ」を見つけましたが本屋も無い田舎に住んでいたので、西条高校に通学していた兄に小遣い渡して町の本屋でオートバイ誌を買ってきてもらいました。最初に読んだ記事はエグリ・フレームの特集だったのを覚えています。
実際にオートバイに触れるのは高専に入学してから(1年生のころ中古のCB250Tが最初に買ったオートバイ)なので、73年ころの市販モトクロッサーと言われてもスペックは全くわかりません。
何故か70年代のモトクロッサーに詳しい人が、何も知らない僕にマフラー作りを頼むのですから
無い知恵を絞って製作に着手するのです。
しかも5台分、同じ形状のマフラーステーが
1台当たり3個使うので
15個作る必要があります。
ヤマハが手配したメーカーなら
金型を作って、10秒で1個作れるような形状ですが
低レベルな板金技術で15個8時間もかけて作っています。
これを先に作っておかないと
テールパイプやサイレンサーの位置決めが
決まらないことになりますので
マフラー本体フィッティング時に使います。
エキパイ口元ですが
製作前に準備しておくものがあります。
排気口に嵌める寸法は現品から寸法測定して図面描きますが
同時に純正のOリングも寸法測定に必要です。
ところが、支給いただいた当時物の新品が
ゴム硬化して組めません。
プラスチックのように硬くてリング溝に入らないのです。
50年経過したゴムですからね、新品を保存しても意味が無かったのですね。
既に純正廃番なので
供給可能な別機種の0リングを取り寄せ
代用することにしました。
問題はリング外径が違うので溝加工はやり直しということになります。
スペック、形状は支給いただいた当時物のパイプを基に贋作作りました。
マウントステーの位置やスプリングフックの形状など純正品に倣って可能なかぎり再現してあります。
シリンダーヘッドとタンクの間を通るパイプは
オーバル断面になりますので
成形の難易度が丸パイプよりは上ですね。
どんな性能であるかは知る由もありません。
たまたま、この車体を見た元ヤマハの契約ライダーだった人が仰ったことは「これ、速かったんだよねー」
キットパーツ時代から市販レーサーへ切り替わったころですから、その衝撃が忘れられないんでしょうね。
マフラーの取り付けは、純正のラバーマウント使うのですが
純正新品でストックされているわけは
アメリカのコレクターから倉庫ごと在庫品を買い取ったらしいので
ケチな収集家でないことが伺えます。
なんだか自分が知らない時代のマシンの一部だけですが、ここで得られた経験が貴重な感じがします。
お引き取りは長距離運搬になりますが
費用は依頼者様ご負担ということで
お願いしてあります。